秋ごよみ―漆と金箔工芸2001年9月1日(土)〜11月28日 金沢市立安江金箔工芸館(石川県金沢市)
仏壇、仏像から屏風、織物、漆器、絵画、人形など、金箔(きんぱく)を使った各種、各時代の美術工芸を飾った珍しい展覧会。 まず、豪華けんらんとした金屏風(びょうぶ)は、江戸時代初期の「金地著色洛中洛外図屏風」(6曲1双・伝岩佐勝重)。東山、八坂神社を背景にした祇園祭と、金閣寺、保津川を背景にし、二条城に入る公家の行列とを1対に描いている。 このほか、加賀象嵌(ぞうがん)技術を駆使した花生けや沈金技法の故・前大峰氏(人間国宝)、加賀蒔絵(まきえ)の大場松魚氏(同)の作品。中国・明代の「金糸染糸刺繍四天王旗」は、四天王の画像を金糸で縫い込んだ逸品で、大変珍しい。 工芸館は箔打ちの名人といわれた故・安江孝明氏が開設した博物館で、昭和60年、金沢市に寄贈された。製箔技術は奈良時代、中国から日本に伝わり、金沢では江戸初期以来、主要産業として発展。現在、金沢箔は全国生産量の100%近くを占める。 |
坂口國男展2001年11月1日(木)〜11月11日(日) ギャラリーアルトラ(石川県金沢市)
展覧会のタイトルを「花譜彩風」とし、花をモチーフにした作品を中心に油彩画30点。 小品から130号の大作まで、どれも鮮烈な色彩を塗り重ね、マチエールによる幻想的で魅力に満ち溢れた絵画世界を表現している。 たとえば、100センチ四方の画布に描いた近作「花」は、花瓶に挿したアネモネのような花とバイオリンを組み合わせた作品。白や黄色い花が、背景の色彩から涌き出るように描き、豊饒の美を味わせてくれる。 1938年、東京生まれ。東京芸大大学院修了。70年から5年間、フランス政府給費生として洋画の制作に専念。本展には、この時代のシュールレアリスム的な作品2点を飾る。金沢美術工芸大教授。無所属。 |
伊豆蔵幸治・色絵磁器展2001年11月1日(木)〜11月6日(火) 九谷焼諸江屋・ギャラリー片町(石川県金沢市)
伝統陶芸の九谷焼の本場、石川県加賀市山代温泉の生まれ。49歳。陶芸家の父親から大樋焼、同県無形文化財保持者の吉田荘八氏から色絵の技法を学ぶ。 出品したのは、飾り皿、鉢、壷、花器、陶板画、日常食器類。その大半は花鳥草木を描いた色絵磁器で、日本画のように華やかである。 たとえば、「色絵野葡萄柄長文『扁壷』」。横長の四角い壷に、2羽のエナガが野ブドウをついばむ姿を丁寧に描いている。「色絵薊野図『飾皿』」は、アザミ、ユリ、ホタルブクロの草花を描き、色鮮やかで、楽しい作品。 「色絵の鳥は、庭に来るメジロやエナガなどを写生したのを元に描きます」と写生を基本にする。妻芳子さんも陶芸家で、一水会所属。「ときどき厳しい批評をもらいますね」と笑う。 |
第63回一水会金沢展2001年10月30日(火)〜11月3日(日) 北陸放送会館MROホール(石川県金沢市)
今秋、東京・上野の森の都美術館で展示された作品のうち、中央の基本作品54点、受賞作品13点、地元石川県作家らの73点の合計140点が飾られた。 文部科学大臣奨励賞、一水会優賞に次ぐ会員佳作賞(4人)には、地元の土田佳代子、松下久信の作品が入賞した。土田の「アトリエのデコイ」は、デコイ(鳥の置物)や古時計、巻貝の殻などの背後に、キャンバスや板切れのような平面を重ね、重層的で奥行きの深い映像を表現している。 松下の「初冬の冬」は雄大な風景を描く。3層、4層に重なる丘の上に整然と連なる林、前景の真ん中を通る野道などを克明に描き、澄んだ初冬の空気を感じさせる優品である。 一水会は昭和11年、有島生馬、石井柏亭、木下孝則、硲伊之助、安井曾太郎、小山敬三らが結成。12年から戦時中の19、20年を除き、公募展を毎年開催。絵画のほか、陶芸部もある。 |
三輪孝一 新作油絵展2001年10月24日(水)〜10月29日(月) ギャラリーアルトラ(石川県金沢市)
25年前から描き続ける「桜島」シリーズ。130号の大作を中心に30点。昭和2年生まれとは思えないようなエネルギッシュな作品群に圧倒されそうである。 ほとんどの絵は、朝焼けの桜島を描く。大作「炎」は、灼熱の真っ赤な山、炎に染まる空、紅葉が始まる木々、青くうねる海などをデフォルメし、鮮烈な色彩で描く。 同じように、桜島を赤々と描いた「焔」(12号)は、ふもとの山並みや海を行き交う船、町並みを軽快な筆致で描き、好評を浴びた。桜島を青く描いた「日昇」も捨てがたい味わいがある。 京都出身。金沢市在住。金沢美専(現在の金沢美工大)の第1期卒業生。同期に、鴨居玲、村田省蔵、寺井重三らがいる。日本美術家連盟、現代美術家協会両会員。 |
宮脇春美 パステル画展2001年10月24日(水)〜10月29日(月) 画廊プラザ樹(石川県金沢市)
柔らかで、温かな色調のパステルの特色をよく生かし、ていねいに描いた作品が並ぶ。抽象的な大作3点を含め24点。 大作の「春の響」シリーズは、50、60、80号の大きさ。桜の花を画面の中央部分に写実的に描き、暗色の周囲にも桜を点々と、漁り火のように見せ、幻想の世界を表現する。夜の海に浮かぶ島に、桜が満開という光景をイメージして描いたという。 このほか、新緑の林や、夕焼けに染まる丘、山を背景した湖などを描き、写実的な作品もあるが、どれも心象風景という。空や海などの広い部分は柔らかな色を重ね、前景の木々などの堅いパステルで描いている。 10年前から年2回(富山、金沢)で個展を開いており、年間約60枚を制作。大きな白紙にパステルで描くには、色材料とともに、かなり体力も必要だが、近く百号の制作にかかる予定という。 昭和28年、富山県生まれ。同県高岡市美術館で13年前、画家高坂卓至氏(長野)のパステル画に感動し、独学で描き始めた。富山県展や花の美術展(兵庫県)、ZERO展(大阪府)などに入選。 |
小山佐敏新作展2001年10月20日(土)〜10月28日(日) 美術サロンゆたか(石川県金沢市)
第5回「小磯良平大賞」の受賞者、小山の「生命都市シリーズ2001−丘の向う」をまとめて展示した、見ごたえのある作品展。このギャラリーは金沢市では珍しく、中央で活躍する現代美術作家を紹介している。 作品は、高層ビルを描いた都市風景だが、建築物を隙間なくびっしりと波打つように描く。評論家富山秀男氏は「地震をイメージさせて不気味だったが、しかしその整然とした表現と緩急の変化にリズム感があって心惹かれた」「何より統一した色彩表現が快かった」(小磯良平大賞展・図録)と高く評価している。 小山は1953年、熊本県天草生まれ。日本国際美術館賞など受賞。都市シリーズを描いたきっかけは、熊本から上京したとき、ビルが埋める東京の光景に驚嘆し、以後、絵のモチーフにしたという。 村上龍の愛読者はその作品「コインロッカー・ベイビーズ」の表紙を飾った小山の作品を覚えているかもしれない。 |
霊峰 白山展2001年10月19日(金)〜10月31日(水) ひろた美術画廊(石川県金沢市)
富士山、立山と並ぶ日本の三名山のひとつ、白山を描いた絵画展。白山を日夜仰ぐ石川県の在住、もしくは出身の11作家による日本画、油彩、水彩画25点。霊峰と呼ばれる信仰の山にふさわしく、どれも純白の雪をいただく姿を、すがすがしく描いている。 洋画団体光風会の評議員・円地信二(日展会員)の「白山」は、木場潟を手前にした白山を、まるで息づくように表現。同じ光風会評議員松本昇の「白山」は、前景に青い帯のような潟を置き、人々の楽しげな姿を添えた和やかな風景画。 光風会会員井田重雄は白山に「150回以上登った」という大の白山好き。高い山から眺めた風景で、雪の白山に、強烈な紅葉の赤を対比させた鮮やかな作品を飾る。 一水会所属の株田由雄「早春の白山」、山口清人「白山」は共に、早春の爽やかな空気を感じさせる優品。紅一点は日本画家中江悦子(京都)。ふるさとの松任市から眺めた、やや尖った「白山」。早春の初々しさに満ちた気持の良い作品にまとめている。 |
山本宏幸日本画展2001年10月18日(木)〜10月30日(火) ギャラリーノア(石川県松任市)
日本画だが、伝統の花鳥画にこだわらない。 画紙の形や大きさも自在に描き,楽しい作品展だ。 たとえば、「四季」。縦68.1センチ、横15.8センチの細長い形。絵は、下部の桜から緑の木々、紅葉、冬木と、日本の四季の風景を1枚に描いているところが面白い。 題材もさまざま。風景や静物だけでなく、洋酒びんまで描く。箔の生産では国内一の地元金沢にふさわしく、加工した箔も画材として巧みに使っている。富士山の絵の背景には金、銀箔などを使い、豪華な雰囲気を表現している。 本展で30点飾ったうち、比較的大きいのは「扉/DOOR」(80号)。金沢市内を走る観光バスをモチーフに描く。車体を彩る加賀友禅の模様や、形の違う窓ガラスに映る冬木立を描き、優美な装飾的作品に仕上げている。 65年、金沢市生まれ。金沢美術工芸大学大学院(日本画)修了。西山英雄、山本知克らに師事。 |
坂本市郎 作陶展2001年10月18日(木)〜10月28日(日) 九谷焼諸江屋・ギャラリー片町(石川県金沢市)
能登半島の先端で、平安末期から室町時代に生産された古窯「珠洲焼」の再興に取り組む作家の作品展。高温で堅く焼き締めた黒灰色の珠洲焼の魅力は近年高まり、現地の石川県珠洲市では4つの窯元などで約10人が制作に打ちこんでいる。 本展の作品は約百点。素朴で、土の持つ温かみを感じさせるのは、「叩き壷」。焼成でひび割れを防ぐため、板で叩いて成形する古窯独特の叩き目を残し、味わい深い作品といえる。 古窯の大半は壷など生活用品だが、坂本はおしゃれな香炉も手がける。たとえば、蓋の部分に木の葉を形取る穴を散らして森を表現し、身の部分の縁にフクロウの置物を止まらせるなど、楽しい作品に仕立てている。このほか、「双耳花入」などの花生けや皿、徳利、酒器など日常雑器も多数展示した。
珠洲焼の復興を手がけたのは、坂本の父、好二さん。製瓦業だった技術を生かし、昭和57年から研究を重ね、63年に独立。坂本は昭和35年生まれ。大学卒業後、東京で編集プロダクションに勤務していたが、30歳のとき、帰郷。父親と一緒に制作している。「おやじの作品にはかないませんわ」と笑う。 |