
日本芸術院会員 大樋長左衛門の世界2002年4月25日(木)〜5月19日(日) 石川県立美術館(石川県金沢市)
1999年12月、日本芸術院会員に推挙されたのを機に、石川県立美術館が企画した。2年以上の期間を要して収集しただけの事はあり、十代・大樋長左衛門のほぼ全容が浮き彫りになっている。展示総数は265。2つの展示室を使用、個人展としては異例のこと。 幼少より、自然の中で鳥や動物に囲まれて遊んだ。東京美術学校(現東京芸術大学)時代は「学校の横に動物園があったから動物をよく見ていた」。作品の多くには、鳥や魚や動物が刻まれるが、「彼らは頭がいい。実に上手く自然と溶け合っている」。 大樋焼は、茶道と共に歩んできた。茶碗、水指、香合、花器と、手法も形もいわゆる伝統の世界を守ってきたわけだ。「大学時代はまさに戦時中で、大変苦労をした。が、あらゆる事柄を見ることが出来たともいえる」。やがて戦後を迎え、「新しいスタートラインに立った。地球的な視座で模索したモノを形にしてみたい、と思った」。そして、大樋三彩、白釉、碧釉など独自の手法を生み出し、さまざまな形の試みがなされ、陶壁も手がけた。 昭和2年生まれ、齢などまったく感じさせない、年に2〜300点の制作ペースだ。 石川県立美術館 TEL:(076)231-7580 |
幹掌のCGアート展 心象風景2002年5月1日(水)〜5月7日(火) 大和ギャラリィ―KOHRIN(石川県金沢市)
幹掌(みき・しょう)さんは戦中の1944年、富山市生まれ。「人は生きている限り、苦しみや悲しみを背負っていると思います。私が生まれてまもなく、父は病死、家は空襲で焼き出され、全てを失いました」。優しく美しい作品の根底にひそむ静謐で鋭利な刃物のような鋭さの秘密は、このあたりにあるのかもしれない。現在、外資系企業に勤めるサラリーマンで、二人のお子さんは成人して巣立ち、大学時代の大恋愛の末結婚した愛妻と幸せに二人、金沢市内に住む。個展は2000年から毎年1回、今回は3度目、Windows PowerPointのキャンパスに描いた作品31点の展示。 「下絵は描きません。そのときの自分の感覚そのものを画面に塗りつけていく。何度も何度も消したり足したりしながら、そうやって出来あがる」。試行錯誤の繰り返し、苦しくも楽しそうな作業、CGならではの手順だ。 作品にはそれぞれ一編の詩が添えられている。その一部を紹介する。"――自然の生命の神秘は、人の心の底に眠っている希望を共鳴させる。ありあまるほどの美しさは、言葉よりずっと親密に存在する。"
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―美術工芸に見る―春の彩り2002年3月2日(土)〜5月26日(日) 金沢市立中村記念美術館(石川県金沢市)
金沢市立中村記念美術館は、主に茶道具と金沢の伝統工芸を展示する美術館。広大な日本庭園の中には「梅庵」と「耕雲庵」の2つの茶室があり、「展示をご覧になった後は、庭を眺めながら抹茶を楽しんでください。そして古都金沢の伝統文化に触れてみてください」、と館長。 今回の展示はいわゆる春季展で、桜、梅、牡丹などの花を主題に、「春の彩り」と銘打ち、室町から昭和までの、掛軸、盤、鉢、書や硯箱など47点が展示されている。同時に開催されている「茶道美術名品展T」では、棗(なつめ)や釜など34点が展示される。 写真の『吉野山蒔絵文台・硯箱』は江戸前期の作。硯箱の蓋表は、高蒔絵(たかまきえ)、研出(とぎだし)蒔絵、付描(つけがき)、切金(きりかね)など多彩な蒔絵技法を駆使し、梨子地(なしじ)を背景に、桜に山水を表す豪華なもの。『玉堂柱石図』は1818年(江戸、文政元年)、山本梅逸(ばいいつ)の作で、玉は玉蘭の意味で白モクレンを表し、堂はカイドウを表す。
写真1:吉野山蒔絵文台・硯箱(よしのやままきえぶんだい・すずりばこ)文台・幅64、奥行35.3、高13.8 硯箱・幅23.7、奥行25.4、高5.4
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利家とまつの生きた時代 戦い・暮らし・女たち2002年4月20日(土)〜6月2日(日) 石川県立歴史博物館
NHKの大河ドラマ『利家とまつ』が大好評を博している。地元金沢の博物館としてはこれにあやからない手はないのだが、この企画展が一朝一夕に出来たものではない、ということは展示場に一歩足を踏み入れただけで分かる。織田信長画像などお馴染みの展示品が幾つもあり、学芸員の方々の並々ならぬ意欲が伝わってくる。 戦国・動乱の時代を生きた利家とまつ。舞台は尾張から加賀・金沢まで。テーマは、「世界史との出合い」「戦いと城」「戦国の女たち」「都市の賑わいと茶の湯」「百姓・商人・職人」の5章からなり、総展示数は187。
写真の、『前田利家画像』は利家の代表的な肖像画で、亡くなる1599(慶長4)年前後の作と言われている。『天正長大判』は豊臣氏の大判で、現存貨幣としては世界最大のもの。『黒綸子地地紙草花模様絞縫箔・白練緯地葡萄菱繋模様辻ケ花染小袖屏風』は実際の小袖裂を、昭和初期に「誰が袖屏風」(たがそでびょうぶ)に倣い屏風仕立てとしたもの。『大井戸茶碗 銘有楽』は大井戸茶碗の中でも五指に入るもので、信長の弟、有楽斎が所持したことから命名された。 なお、高校生以下の入場は無料。 写真1:前田利家画像 16世紀 縦48.5、横36.4 石川県立博物館 TEL:(076)262‐3236
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指江昌克 Ego-logy2002年4月24日(水)〜4月29日(月) ギャラリーアルトラ(石川県金沢市)
金沢生まれの金沢育ち。2000年金沢美術工芸大学大学院を卒業。01年、熊谷守一大賞展佳作。キリっと、いかにも芸術家といった風貌で、市内の私立高校の美術講師、28歳。 ギャラリーに足を踏み入れた刹那、圧倒された。異空間を描いた100号前後の絵画たちが、それら自身何かを訴える生き物のように迫ってくる。『天空の城ラピュタ』の中にいるような、心地よさ。 98年ごろから、重力から離れる、といった考え方を作品に取り入れ出した。建物なら、「こうでなくてはいけない、というのではなく、現実と同じでは面白くないから」。生活の証しが描かれるが、「インカの天空の都市、隔離された都市での繁栄、地球そのものが箱庭。絵の中に住んでいるのは、ヒトかどうかは問題ではない」 「たとえば小石一つにも、記憶ではなく記録が、残っている。それを読み取るのが知的生命体」。星、地球、といったイメージを作品に織りこんで、描いて、指江さんは記録をしていく。 ギャラリーアルトラ TEL(076)231-6698
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能面二人展 作田愼一・岡本敬一2002年4月17日(水)〜4月22日(月) ギャラリーアルトラ(石川県金沢市)
金沢には、加賀宝生流の能の舞があり、歴史的にも、現代においても日本の中で重要な位置を占めている。ところが、能面造りとなると目立った動きはなかった。 後藤祐自(ごとう・ゆうじ)さんが「祐門会」(金沢市)を興し、能面造りを指導し始めたのは10年前のこと。作田愼一さん(53)は、その時入門して、弟子第1号となった。2年後、作田さんは金沢市内の文化センターで指導することになり、岡本敬一(73)さんが生徒第1号になった。今回の「二人展」は作田さんの制作活動10周年の記念でもある。 能面は、基本の形が60面あり、派生して180面ほどになる。使用する木はヒノキかヒバ。1面制作するのに、彫りはもちろん、塗りを数十回重ねたりと工程が多く、約6ヶ月掛かる。これまでに制作したことのある面ならば、同時制作も可能で、年に、作田さんは6、7面、岡本さんは7、8面のペースだ。しかし、「生きているうちにすべての面を造るのは、とうてい無理です」と、2人は笑う。 作田さんは、お気に入りの「『翁』や『童子』など10面、岡本さんは、やはりお気に入りの『邯鄲男(かんたんおとこ)』や『小面』など13面を出展した。 |
大杉雅之 写真作品展2002年4月10日(水)〜4月21日(日) メロメロポッチ(石川県金沢市)
メロメロポッチは、金沢市の台所・近江町市場の中にある。生ジュースが人気の喫茶店。30uほどのユーティリティスペースがあり、ギャラリーに、ライブハウスに、時にはプラネタリュームに変身する。若いエネルギーがみなぎり、月曜の定休日以外は必ずといっていい位に何かが行われている。 今回は、金沢市在住の大杉雅之さん(26)の写真展。世界各国を一人でまわり、人びとの暮らしぶりや風景など、数多く撮影した中から約80点を展示している。すべてコンパクトカメラなどで撮影した作品で、旅の楽しさや気軽さを前面に打ち出した。チベットでは、ぬかるみにはまったバスを乗客らが押している。中国では、大河の風景が実に悠々としている。今はなきニューヨークの貿易センタービルは誇らしげに胸を張っているようである。 |
長島 伸夫 ねこ作品展2002年4月10日(水)〜4月16日(火) 名鉄丸越美術サロン(石川県金沢市)
背伸びする猫。足をなめる猫。両足を広げて寝そべる猫。さまざまのねこの姿態を表現したテラコッタや陶板画、油絵―と、猫尽くしの作品約百点を飾る。ユーモラスな猫の作品に、ギャラリーを訪れた人たちも思わず顔をほころばせる。 猫のテラコッタは、新制作展に出品していた1955年ごろから本格的に始める。自宅の愛猫の姿をデッサンし、その絵を参考に、リアルに表現してみたり、喜怒哀楽を覗かせるようにデフォルメしたり、さまざまに表現する。「ねこ」の種類も多い。これまでに約3千点を制作し、東京展では猫好きの俳優加藤剛も買い求めたそうだ。 1923年、金沢生まれ。金沢美術工芸専門学校(現金沢美術工芸大)の一期生。陶磁科卒業。名古屋の製陶会社のデザイナーとして勤めるかたわら、陶芸に専念。イタリア・ファエンツァ国際陶芸展で受賞するなど、猫の作品で新境地を開く。名古屋市瑞穂区白砂町在住。 |
第58回現代美術展2002年4月5日(金)〜4月17日(水) 石川県立美術館(石川県金沢市)
戦後間もない1945年10月に、石川県の現代美術展は始まった。以後毎年1回開催され、今回が58回目。運営の主体は石川県美術文化協会で、協会が出品を委嘱した作家の作品と一般公募から入賞・入選を果たした986点の作品が、7つの会場に分かれて展示されている。 所属会派を超えた日本画・洋画・彫刻・工芸・書・写真の6部門の作品群は、全国で開催される地域美術展の中でもトップクラスとの評価を得ている「美術王国石川」のものだけあって、さすがに力作・秀作が多く揃った。ただ、出展者に気の毒に思われたのは、展示空間に余裕がなかったこと。特に書と洋画は、出展数は他の部門より多かったのだが、2段重ねの展示もあり、残念であった。 委嘱出品の部での最高賞、美術文化大賞を受けたのは、竹内仁志の日本画「冬の自画像」。白を基調にしながらも、複雑な色調で作者の心象風景を表現している。一般出品の部での最高賞、美術文化特別賞を受けたのは、寺西友紀子の「ある日曜日の夜」。やはり白を基調にした日本画で、作者の個性を感じさせる秀作といえよう。 |
真砂 美塾 選抜展2002年4月6日(土)〜4月14日(日) 美術サロンゆたか(石川県金沢市)
現代写実画の作家集団「真砂美塾」(辻真砂・塾長=大阪府茨木市)に所属する14人の作品。塾の運営方針について、辻が「プロフェッショナルとして最も純度の高い技術と孤高の精神を磨くため、試行錯誤しながら修業を行なう道場」と、「月刊美術」(2001年4月号)に書いているが、平板な写生の域を超え、清澄で緊張感の漂う作品も少なくない。 辻の「桜葉」(F6号)は、黄色い毛糸のジャケットを着た少女が、じっと何かを見つめる半身像を描く。ジャケットの温かそうな質感と、少女の澄んだ目、少し光った鼻、愛らしい口元を克明に描き、初々しい命をあますことなく捉えている。 中司満夫の「夕露」(M8号)は、古い洋館と、その前に今は使われていない荷車を描く。建物と荷車の間に木陰らしい影と、遠くに木々を描き、澄みきった大気を感じさせるような優品。 辻は1951年、大阪生まれ。浅井忠が院長として梅原龍三郎、安井曽太郎ら多彩な画家を育てた関西美術院(京都市左京区岡崎)に学ぶ。現在、理事。89年、真砂美塾を創設。大阪、兵庫、滋賀など関西在住の20数人が修業中という。 |