第33回日展金沢展

2002年5月25日〜6月16日 石川県立美術館(石川県金沢市)

奥田元宋「山湖清韻」
円地信二「ある群像」
武腰一憲「花器・回帰」

やはり日展はすごいと思う。心も体も圧倒される。大作がずらりと並び、大家の力作の前に立ちすくむ。展示の数も日本一か。日本画、洋画、彫刻、工芸美術、書の5部門で423点が出展されている。

今回、石川県の入選者数は125人。これも立派。人口百万人当たりの日展入選者数は石川県が全国1位である(「石川100の指標」平成10年〜12年の合計を基に調査)。調査によると石川は325人、2位京都197人、3位富山190人となっている。

作品の中で目を引いたのは日本画の最高峰である奥田元宋さんである。今回の作品は「山湖清韻」。場所は群馬県妙義山山中の湖、独特の幽玄美を持つ"赤"が画面いっぱいに浮かび上がっている。空から湖水に射し込む一条の光、感動に満ちた光景である。やはり"元宋の赤"はすごいのである。

奥田さんは1912年(明治45年)生まれ、6月で卒寿を迎える。1984年(昭和59年)」に文化勲章を受章。銀閣寺の襖絵を完成させたのは1996年(平成8年)。四季の自然の風情が生き生きと描かれている。奥田さんの絵にはドラマチックで文学的ともいえるものがある。それは今回の作品にも見られる。

石川県内の作家ではベテランの円地信二さんや新進作家の武腰一憲さんの意慾作を出展している。ファンの一人「ゆっくり鑑賞していたら一日がかりです。でもすばらしい、2年後(石川での日展開催は隔年)が楽しみ」とか。

石川県立美術館 TEL:(076)231-7580


日常と非日常V展

2002年5月24日〜5月31日 INAXスぺース金沢(石川県金沢市)

粕谷姫中さん
作品
作品

ユニークなデザイン展が金沢で開かれている。生活デザイナーで知られる粕谷姫中さんの展覧会である。粕谷さんは在日韓国人で、武蔵野美術短大生活デザイン科を卒業、イタリヤ家具メーカーなどに勤務した。「日常と非日常」シリーズは今年で10周年目の個展となる。

最も美しいものは日常の中にある、と詠んだのは詩人ホイットマンだが、日常のあたりまえのモノやコトに特別な感動を覚える瞬間は非日常的なようでいて常にその可能性を秘めた表裏一体のものである、と粕谷さんはいう。

照明器具をデザインして日常の快適性を求めたというのが今回のテーマ。九谷焼のデザインにもその共通性があるという粕谷さんは、石川県の人たちにも見てほしいと意慾作を展示した。

建材のハニカムボードをデザインした照明は硬い壁から飛び出してくるようで、自在に踊るレリーフとなっている。また、メッシュのステンレスと金属の網をシェードしたランプは柔らかく透ける布のように光と影を編んでいる。まさに日常の美と非日常の表裏一体を演出している。

INAXスペース金沢 TEL:(076)262-1701


2002年宇宙の旅 手作りプラネタリウムと立体映像

2002年5月21日(火)〜6月2日(日) メロメロポッチ(石川県金沢市近江町市場内)

手製の土星模型と"ヒゲキタ"さん
メロメロポッチのアッコちゃんと
"ヒゲキタ"さん
ドームは2種、今回は小さい方

北村満さんは髭を生やしている。だから"ヒゲキタ"さん、とみんなは呼び、北村さんの工房の名前にもなってしまった。神奈川大学では経済学(まったく似合わない)を専攻。43歳、5年前に会社を辞めて独立。自然に関する豊富な知識をベースに、器用な手先とアイデアとで、常に何かを創り出している。自然素材を使っての工作教室は、子どもにも若い母親にも大人気だ。

今回はご自慢の手作りプラネタリウムの展覧会? 星ぼしの輝く宇宙空間に飛び立った自分自身が宇宙船や恐竜などの飛行物体に遭遇するというヴァーチャルリアリティ展、とでもいいましょうか。ちょっと大げさかな、ま、そんな試み。見終えた女子高校生の二人組は「面白かった、食べられるかと思った」。

プラネタリウムの心臓部は、直径25センチぐらいの黒い球に星の照度にあわせて穴をあけただけのもの(中には電球が入る)。といっても2000個の穴を正確にあけるなんて普通の人はしない。ドームは黒(外側=印刷に使うフィルムが入っていたもので透過性が低い)と白(内側のスクリーン=ごみ袋)のビニール製。仕組みは高価なプラネタリウムと同じだ。

圧巻は立体映像。よくある左右が赤と青の色メガネを掛けて、というものだが、赤と青の光源が中央にあり、そこを"ヒゲキタ"さん手製の飛行物体が往き来する。すると見える物体の影が自分に向かったり離れたり。近づくに連れデフォルメされ巨大化する。仕組みを聞くと、よく分からないといった人もいるが、科学的でアイデアに溢れている。感心しました。

メロメロポッチ TEL:(076)234‐5556


クラフト june bride (六月の花嫁)

2002年5月15日(水)〜6月16日(日) さとやまクラフト・横安江(石川県金沢市)

斬新なデザインの引き出ものの数々
関心を集めた「たてじまピッチャー」
色彩が豊かな箸の逸品

さとやまクラフト・横安江は平成10年に里山工房交流連絡会の工芸作家ら46人のアンテナショップとして発足した。企画展は年4回開催しており、年々充実した展覧会となっている。また、その活動は金沢市の横安江町商店街の活性化にも寄与している。

今回は新生活を迎えようとする若者へのメッセージとした新しい企画である。いま開催している『百万石博』にちなんで「利家とまつ」のような幸せな家庭を築こうとする人たちに豊かなライフスタイルを提案している。

今回の作品は[陶磁][ガラス][金工][漆][染][表具][和紙]の7部門で作家26人が出展している。それぞれの部門で意欲作が見られた。

多くの作品から目を引いたのはガラス工芸の「たてじまピッチャー」だ。作者の渡辺継さんは34歳、新進気鋭の作家で、この道10年。「日常使えるものを制作しています。そして長く使えるものを目指しています」と言う。作品はすがすがしい透明感に力強い縦線が3・4本、清潔感が漂ったピッチャーである。

さとやまクラフト・横安江 TEL:(076)234-9101


春季展 春の華やぎ・百万石の工芸と源氏物語

2002年3月2日(土)〜5月28日(火) 金沢市立安江金箔工芸館(石川県金沢市)

「貝合わせ・花によせて」
高3.8 径48.0
「家紋蒔絵具」 高34.0 径35.0

「源氏物語蒔絵鏡台」
高37.9 径45.5

金箔工芸館は金箔打ちたて師だった安江孝明氏(故人)が私財を投じ1900年(昭和49年)に建設、工芸品や金箔の製造道具などを展示公開した。その後、金沢市に寄贈され現在に至り、県外からの見学者も年々増えている。

同館では春季展(3月〜5月)夏季展(6月〜8月)秋季展(9月〜11月)冬季展(12月〜2月)として特別展を開催している。いま展示されている百万石の工芸は『百万石博』にちなんだもので、加賀文化の精華がみられる。

会場では貴重な資料が約30点展示されている。展示のなかで「貝合わせ・花によせて」の貝に描かれた源氏物語の人物絵は鮮明で美しい。貝合わせは平安時代の遊び道具で夫婦の仲むつまじさを表す縁起ものだった。「源氏物語蒔絵鏡台」は鏡を乗せる台で、なかには化粧などを入れる手箱が収められたというから合理的な道具だ。

源氏物語の絵巻を彷彿させる貝殻に施された文様、また漆の術(わざ)を駆使した調度品、それらは加賀工芸の真髄であり、まさに逸品ぞろいである。

金沢市立安江金箔工芸館 TEL:(076)233-1502


山本平さん 山本平油彩展

2002年5月15日(水)〜5月27日(月) 画廊プラザ樹(石川県金沢市)

自作を語る山本平さん
「能登金剛」 高59.0 径48.0
「帰路」 高37.9 径45.5

多くの絵画愛好家に親しまれている画廊プラザ樹は今年開廊18年を迎えた。店主の東良勝さんは「地元の多くの絵描きさんに囲まれ、優れた展覧会を開くことできてよかった」と感慨深げだ。その18周年を記念して企画されたのが山本平さんの油彩展。

山本さんは東京生まれで、戦前に両親の故郷である石川県富来町へ疎開、金沢美大を卒業し同県羽咋市の中学で美術教師となった。1964年(昭和39年)に渡仏し今はパリに在住、サロン・ディヴェール会員で風景画家として活躍している。

渡仏して38年、金沢とパリを行き来し石川県内でも年に2回個展を開いている。今回は20回目の個展で風景10点を中心に35点を展示している。会場には小舟が滞留しているセーヌ川やパリ郊外の古城などを描いた作品のほか、能登金剛など地元の風景を題材にした作品も展示され関心を集めた。

印象的だった作品のうち、「帰路」はパリ郊外シュヴルーズにある12世紀の古城と教会を描いており、牧場を背景に風土性を強調している。絵の全体は空気が詰まっているようで密度が高い。「能登金剛」は雲の流れ、海の波、丘の上にある雑木林がリズミカルに動く様子が鮮やかな色彩で克明に描写されている。この絵は光と色の交響楽だ。

画廊プラザ樹 TEL:(076)262-6276


高嶋敏昭・辺本良治・花木清のARTする!ステンドグラス展 『光と風を感じながら』

2002年5月15日(水)〜5月21日(火) G‐WING'Sギャラリー(石川県金沢市)

高嶋敏昭「ホーキングランI」
高200 幅70
辺本良治「ラハルサークルシリーズ」
高40 径25
花木清「オブジェランプ」
高50 幅25

福井、石川、富山の北陸3県で活躍するステンドグラスの作家は多いが、辺本(なべもと)さんの呼びかけで各県の代表3人のコラボレーションが実現した。ステンドグラスの分野では初めての試みだそうだ。

ステンドグラスといえば、近年建築作品の現場によく登場するようになってきた。よりアートな感覚が求められるようになってきたからだ。おのずとステントグラスの作家たちは、他の分野の作家たちに比べて、経済的には恵まれてきているといえよう。

「だからってわけではないですが、アーティストという観点では、北陸の作家たちの力量はまだまだだと思います。そんな中でも、福井の高嶋さんはここ10年くらいテーマは固まってきていて、中央でも知られている人。富山の花木さんはたいへん器用な人で“和”ものがいい、仕事もきれいです。私のテーマは植物、そのエネルギーとムーヴメント。私たちも50歳。これを機に、もうワンステップアップして、という気持ちもあった」。辺本さんの眼が鋭く光った。

高嶋敏昭さんは1952年福井市生まれ。1982年ステントグラス工房設立。1992年第6回公募ステントグラス美術展優秀賞(名古屋)など。

辺本良治さんは1951年金沢市生まれ。1978年大津元彦(奈良)に師事。1995年第4回Kajima彫刻コンクール入賞など。

花木清さんは1955年富山県出身。1998年第3回森のシンフォニー2GRASWORKS展入賞など。


国立カイロ博物館所蔵 古代エジプト文明展

2002年4月28日(日)〜5月19日(日) 石川県立美術館(石川県金沢市)

古代文明の遺産と対話する来場者
アクエンアテン王の立像の上部
高60.6 径50.0
化粧用スプーン
高5.7 径30.3

この展覧会は古代文明の遺産とエジプト美術との対話である。厳選された国立カイロ・エジプト博物館所蔵の75点。3つの展示品室には精巧な彫刻、えり飾りや腕輪など華麗な純金の装飾品が並ぶ。

「エジプト文化」の研究で知られ、この展覧会を監修した吉村作治早大教授が3年がかりで約20万点のなかから選んだもの。紀元前3500年の先王朝時代から末期王朝と各時代別に陳列されているが、展示品の大半は日本初公開だ。

人類の四大文明のひとつに数えられるエジプト文明は世界の財産でもある。この頃の日本は縄文時代だが、古代エジプトではすでに高度な文明を築いていたといえる。展覧会は美術史上一級の価値を持つもので、世界史の第一歩を直に見ることができる。

作品のひとつ「アクエンアテン王の立像」は古代美術の神髄をみることができる。王は多神教から一身崇拝への宗教改革を断行したといわれ、作品には強い意志と個性がみなぎっている。足が止まったのは「化粧用スプーン」という作品だ。その斬新だが精巧なデザインには目をひくものがある。新王国第18王朝時代、すでに化粧道具が作られていたことを物語るものだが、見ていると化粧をするクレオパトラを想像する。

石川県立美術館 TEL:(076)231-7580


マルチタレント弁吉、書画の世界

2002年4月13日(土)〜6月30日(日) 石川県金沢港大野からくり記念館(石川県金沢市)

書額 『竹』 江戸後期
亀蒔絵盆 江戸後期
神楽道中図 江戸後期

からくり記念館は、江戸時代に花咲いた玩具技術"からくり"を展示のテーマにした、ユニークな博物館だ。江戸の末期に加賀の大野(現石川県大野町)に在住したからくり師・大野弁吉に因んだもので、弁吉の作品を中心にからくり人形から写真術、エレキテルにいたるまで、子どもから大人まで楽しめる展示になっている。

江戸はとても平和な時代で、武士も庶民も現代のわれわれが考える以上に遊び、生活を楽しんでいたらしい。“からくり”はそんな遊びの中で生まれた玩具だが、時代の最先端の科学技術が活かされ、加えて職人の創意工夫、美への飽くなき追求など日本特有のエッセンスが加わり、庶民文化といわれるまでに隆盛した。

今回の特別展は、個人所有者の協力を得て実現したもので、展示点数は10数点と少ないが、未公開のものばかり貴重な作品がそろい、あらためて弁吉の多芸さに驚く。

併設の子どもからくり体験棟では、昔懐かしい玩具や木製玩具などで、遊び体験ができる。

石川県金沢港大野からくり記念館 TEL:(076)266‐1311


書と青磁・白磁 坂野雄一・藤井憲之

2002年5月7日(火)〜5月12日(日) 遊くらふとギャラリー(石川県金沢市)

笑う坂野さん(右)と藤井さん
坂野さんの『馬耳東風』(天地左右約40)
藤井さんの角皿(左右25〜30)

坂野さんは1929年、金沢生まれ。金沢在住。「書は今でも遊びや」とのっけから笑う。書道の協会などには一切属さず唯我独尊、風貌からしていかにも一匹狼。『遊くらふと』の主人を筆頭にファンも多い。TV番組や本の題字もよく頼まれ、金沢市の町標(まちしるべ)の文字も手がけた。「最近は悪口ばかり書いている」、父の作品を指さし娘さんも笑った。

藤井さんは1955年、大阪生まれ。瀬戸市在住。武蔵野美術大学工芸工業デザイン科を卒業後、同大学の陶磁研究室に勤務、87年独立。「時代に合ったオリジナルなものを作る。それがデザインをするということ」。生活空間に優しく溶け込む器をと、青磁・白磁を選んだ。釉薬は毎年新しいものを開発、土はむろん瀬戸の土。日本のクラフト展に数多く入選している。

坂野さんと藤井さんは今回が初対面。作品もそうだが、二人の気も合う様子。「『遊くらふと』は真四角ではなく、窓や押入れも歪んでいて、床もわずかに傾いている。それが却って人々の心を和ませる」。ひいては「これが金沢の文化ではないか」と、坂野さん。

遊くらふと TEL:(076)244‐0015


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