
諸見里安繹、剛展2002年6月28日(金)〜7月9日(火) 工房SAKAI(石川県野々市町)
あごが外れそうな大きく開いた口、ギョロリとむいた目、恐い顔。だが、魔よけにしてはなにか愛らしくユーモラスなところがある。沖縄のシーサー(方言で獅子のこと)が石川県で初めて野々市町にお目見えしている。展示しているのは諸見里安繹(もろみざとやすつぐ)剛(つよし)父子。諸見里安繹は67歳、この道の重鎮である。 魔よけには動物がよく登場するが、それはライオンだったり猛犬だったりする。そんな動物が家や神社仏閣を守るわけだから当然恐ろしい顔で鎮座する。習俗の起源はシルクロードで中国から沖縄に伝わったとされる。沖縄の町では民家の屋根の上にシーサーを見かける。赤がわらの破片を漆喰で固めたものが多いそうだ。アパートや鉄筋のビルでも門柱などに置いてある。 見れば見るほど味があっておもしろく飽きない。シーサーの顔つきは確かに愛嬌がある。彫りが深く眉毛も濃く髪も黒い。この顔は、はて?よく見ると沖縄の男なのだ。 諸見里さんは「魔よけだけでなく幸せも招くのです」とやさしい顔つきで語ってくれた。なるほどあの大きな口は福を吸い込むためのものでもあるのか、と納得する。 工房SAKAI TEL:(076)248-0338 |
中野雄次個展2002年6月26日(水)〜7月7日(日) さとやまクラフト横安江(石川県金沢市)
若い作家の作品には独創的な作品と伝統を頑なに守っていこうという作品とがある。どちらにしても芸術という観点からすれば優れたものであれば良いわけだ。だが、新しい分野となればあまり規制という窮屈なものにとらわれることはない。
中野雄次の吹きガラスは自由でありのままの作品なので拍手を送ってしまう。この展覧会、夏向きのガラス製品がずらりと並んで涼しげだ。花器や皿、グラスなど30点が展示されており、特にオブジェの作品は人気がある。 中野は埼玉県出身で26歳。新鋭のガラス工芸作家である。倉敷芸術科学大学を卒業。工芸王国金沢に移住したのは3年前だ。現在は金沢市の牧山ガラス工房で勉強している。いまは楽しい作品作りに専念しているという。 大学の卒業制作であるという「3連リング型ランプ」は、ほのかな純白のガラスをデフォルメしたものでシンプルなデザインがかえって新鮮さを醸し出している。一方、青い色彩の鉢は涼しさを出して好感の持てる作品となっている。 さとやまクラフト横安江 TEL:(076)234-9101 |
MINNA(みんな展)TEN42002年6月29日(土)〜7月6日(土)芸術村アートギャラリー(石川県金沢市)
広い会場と5、6段の階段をフルに使って100点ほどの作品が無造作に展示してある。水彩画、油絵、写真、こどもたちの工作とお絵描き、パラソルとベンチと多種多 様で雑然と並べられているが、それぞれ「生きている」というイメージで見えてくるから不思議だ。
金城短期大学美術学科を卒業した人たちで行っているMINNA(みんな展)TEN4は、制作に参加し鑑賞し、話し合う、そんな「みんなの展覧会」となっている。そこには気取りはなく、楽しさがある。だから作品が「生きている」のであろう。 「いこいの森」というミニチュアの公園がある。ケアセンターのお年寄りと一緒に作ったそうだ。みどりがある道、庭に木の端くれの家、刺し子やおじゃみもベンチに置いて、夢と癒しの空間を演出している。 美術の学校を卒業した人といえば、作家の道へ進んだり、先生になって活躍している。しかし、その道に到達するまでに人生経験や社会体験が必要となってくる。卒業した若いグループの人たちが、いろいろな人と接し、教えていくことが絵画の勉強に もなる。ことしで4回目、テーマは「緑」。続けてほしいと思う。 芸術村アートギャラリー TEL:(076)265-8300 |
北陸二科展2002年6月29日(土)〜7月4日(木) 石川県立美術館(石川県金沢市)
北陸二科展で独創的作品が注目を集めている。130号の作品が分割され、3分の2に人物、3分の1は静物、その大作が来場者の目を引き付けた。 二科会の評議員山岸光代の「晴れた日」。人物画の女性は一輪の花を持って座っている。静物画は花の鉢植えである。この2枚の絵の組み合わせで穏やかな晴れた日のひと時を表現している。画面は緊張感もあって絵に力がある秀作だ。
会員の粕谷正一の「パンドラ」「EVEN」も二科の美の精神を受け継いでいる作品だ。昨年のアメリカで起きた同時テロをテーマにしている。粕谷は衝撃的な事件としてのみでとらえず、虚しさをキャンバスいっぱいに展開したと言う。米旗を大きく描き、混在した構図は作者の意図が充分伝わってくる。 北陸二科、自由で個性あふれる創作姿勢で知られる。金沢展は43回目、絵画部門で3県の会員ら45人が9月の本展に向けて47点を出展している。デザイン、彫刻部門では金沢市内の別会場で24点が出品され注目を集めた。この展覧会は新人らの新鮮な競作の場ともなっている。 石川県立美術館 TEL:(076)231-7580 |
石像石仏展2002年6月20日(木)〜7月15日(月) まちかどギャラリー蔵(富山県庄川町)
仏が乗り移っているのではないか、と思えるほど見る人の心を引きつける石像仏に出会った。富山県庄川町で開かれている石像石仏展がそれ。製作者は同町の石工・水本一太郎で、職人の域を超えた芸術性の高い作品に関心が集まっている。 会場は街起こしでギャラリーに改造した「蔵」。白い壁に展示された作品は壮厳さを放つ。文殊菩薩や不動明王、大黒さまなど35点が並べられている。ほかに石像用の金屋石、黒御影石の原石もあり、ブロンズのような輝きを放っている。
水本は数少ない手造り石工職人のひとり。76歳とは思えないほどエネルギッシュだ。どの作品にも純粋な信仰心が反映しているからだろうか、刻まれた石仏は力があり、美しくもある。 「石仏と向かい合っていると、故郷を思い元気が出てくるから不思議です」と来場者で中年の男性が観音像と対話する姿は慈父のようにも見える。石仏が人を引きつけるのは、温和でやさしい表情に心が癒されるからだそうだ。 この町はかつて金屋石を産出して石川県の金沢城石管や用水に使われた。この展覧会には石川県など近県からも愛好者や研究者らが多く訪れている。 まちかどギャラリー蔵 TEL:(0763)-82-7087 |
一水会加賀展2002年6月20日(木)〜6月30日(火) 加賀アートギャラリー(石川県加賀市)
写実性の濃い作品で知られる一水会会員による加賀展が開かれ、大作60号が75点展示されている。地方で1会派だけでこれだけの作品が一堂に出品されることは珍しい。「美術王国石川」を示すものであり、地方の美術愛好家にとってもいい機会だ。 加賀展は3回目だが、今回は女流作家35人が充実した作品を出展している。辻原久美子の「夢中」は人物画だが色彩が鮮明だ。モデルの女性の体温まで見る側に伝わってきて親近感を覚える。瀬戸美智子の「冬の休日」は描写力、構成力ともしっかりしていて風景画のお手本を見ているようだ。 重鎮の作品では端名清の地中海シリーズ「サントリーニ風景」、寅若繁の農民シリーズ「ひとやすみ」は完璧性で群を抜いており円熟の筆使いを見せている。 富田裕夫の「チューリッヒの裏通り」はヨーロッパ街角シリーズのひとつで、通りから見る町の描写は富田のお手のもの。ビルの線描写や色合いは独特のタッチで深みがある。き帳面な絵で知られフアンが多い。 一水会石川支部は県内では100余人の同人で会派では一番大きい。公募展なども確実にこなし実力のほどを示している。しかし最近は高齢化しマンネリ化も否めない。これからは中堅作家も含め自由に活動することが望まれる。 加賀アートギャラリー TEL:(0761)72-8787 |
はなむすび3人展2002年6月20日(木)〜7月2日(火) G−WINGSギャラリー(石川県金沢市)
「はなむすび 花と陶器とガラスの万華鏡」展で革新的な生け花作家中川幸夫が出展 しているが、刺激の強い作品群に圧倒され足がすくむほどだ。今回は共同制作の形をとって陶芸の三輪和彦、ガラスの高橋禎彦が加わっている。花を通じて3人を結び合わせるのが狙いだが、互いにより強い個性を出しており作家根性を感じた。 生け花は萩の焼き物やガラスを花材として取り込み造形美を出している。例えばガラスの器に観葉植物(メディニラ・マグニフィカ)を生け込んでいるが、真紅の花びらが映えて芸術性に満ちている。会場には和紙で囲んだ茶室を設け、花と器の出会いを演出している。 中川は香川県生まれで83歳。作品集「華」が世界で最も美しい本の国際コンクールに入賞。かつて千本のカーネーションで花の色素を和紙に滲ませた作品で生け花界を驚愕させた。常に究極の美を花に追い求め、その創造性は止まることはない。 先ごろも新潟県の信濃川河川敷で、20万本のチューリップの花びら120万枚をヘリコプターから撒いて人々を酔わせた。いまでは「追っかけマン」がいるほどの超人気作家だ。 輪は山口県出身で4年前、中川と「ばけるほのお」展を開き好評だった。高橋は東京の生まれで、“ワールド グラス ナウ”で優賞。2人とも現代を担う作家たちである。 G−WINGSギャラリー TEL:(076)238-0788 |
西山英二・ヨーロッパスケッチ展2002年6月19日(水)〜7月1日(月) ギャラリー・アミーゴ(石川県小松市)
洋画家西山英二のヨーロッパスケッチは色を楽しんでいる、といった展覧会である。今回はフランス、イタリア、スペイン、トルコなどの街角を描いた40点が展示されており、さながらヨーロッパ旅行をしているような気分になる。 西山の絵画は楽しい。色彩は絵の生命でもあるが、「空は青とは限らない」とし自由に配色していく。だから色はリズムカルだ。作品の全体は動いているようで、爽快に展開する。チェコ・プラハの街角を描いた作品は黄色系の暖色がある種の親近感を覚える。 風景の構図と色彩の兼ね合いが見所のひとつでもある。パリにある教会を描いた独特のリズムは、線を極力押えたからだという。確かに流れるような色使いは、そこから生まれたのであろう。「軽めだがおしゃれな感じにみえませんか」と自作を評してくれた。 西山は加賀市出身で一創会会員。1980年以来同会連続入選し、石川県美術文化協会など主な県内美術会の委員を務めている。外国の風景を主に静物、人物と多彩である。今回はすべて新作で円熟した作品群となった。 ギャラリー・アミーゴ TEL:(0761)24-2552 |
浮田正樹展2002年6月16日(日)〜6月30日(日) ギャラリー点(石川県金沢市)
絵の前に来て、これは何んだろうか、と思ってしまう。どこかコンピューターグラフィックスを思い起こさせる。次に何を語り、訴えているのだろうか、と考えてしまう。洋画家浮田正樹の個展は見る側にとって、あまりにも刺激的だ。 浮田は一陽会会員、石川県美術協会会員。津幡町在住で津幡美術友好会会長も務める。7年前、日本海美術展に入賞し社会性のある作品で注目された。3年ぶり4度目の個展で、今回もメッセージ性の強い作品18点が出展された 作品の前半は「足るを知る」と題し、錆びた茶色と澱んだ青の物体は車のマフラーだ。あふれる自動車を象徴している。20世紀のバブル社会を描いたという。後半の新作ライフラインは円筒から供給される水や電気、油、ガスといったものに依存し、自然破壊や環境汚染を招いている現代社会に警鐘をならしている。ここに描かれているのは21世紀における再生である。 魔法にかけられたような気分にさせられてしまう。作家の制作意図はともあれ、あれこれ頭の中で想像していると楽しささえ沸いてくる。 ギャラリー点 TEL:(076)292-2140 |
yumeji+music 夢二と音楽2002年6月15日〜9月29日 金沢湯涌夢二館(石川県金沢市湯涌町)
大正6年の秋、夢二は最愛の恋人彦乃と息子不二彦と供に、金沢市の奥座敷、湯涌温泉に20日間ばかり逗留した。夢二34歳、彦乃22歳。翌年彦乃は病に倒れ、まもなく親元で25年の短い生涯を終える。夢二は「彼女は25で、私は37で死んだのです」そう語るほどに彦乃の死を悼んだ。夢二にとって湯涌は生涯最良の日々を過ごした場所なのだ。 「湯涌なる 山ふところの 小春日に 眼閉ぢ死なむと きみの いふなり」(夢二) 「金沢湯涌夢二館」は、旅、女性、聖書をキーワードに2000年にオープンした。ほぼ3ヶ月サイクルで企画展を行なっている。今回は9回目。
夢二は実に多才なアーティストで、絵ばかりではなく、文章にも長け、デザイナーとしても有能であった。楽譜のデザインも多く手がけていて、「宵待草」の作詞でも有名だ。そんな夢二の音楽との関わりを作品とともに探ろうというのが今回の企画のねらい。 もともと夢二が描く女性の絵には、大正時代の哀愁をおびたメロディが流れている。がしかし、音楽をテーマにした作品には明るく微笑ましいものも多い。期間中の土・日・祭日には往時の蓄音機が懐かしい音を奏でている。 金沢湯涌夢二館 TEL:(076)235-1112 |