
鹿猫工房展2002年7月10日(水)〜7月21日(日) さとやまクラフト・横安江(石川県金沢市)
染めの黒田ヒトマロ、陶芸の増井洋子はご夫婦。気の合った素敵なパートナーである。野球でいえば、ピッチャーとキャッチャーといったところであろう。そのふたりがピッタリはまった展覧会をした。名付けて「鹿猫工房展」、布と土の和みが漂っている。 鹿猫は中国の古典文学に登場する架空の動物。胴体が鹿、頭は猫で、この動物が現れると時が止まり、縁起のいいことが起こるという。ふたりの工房は金沢市内を流れる犀川の上流、金沢市辰巳町の山間にある。 黒田が出品しているのは、のれんと座布団、ランチョンマット。自分で染め縫うという作業をこなしただけに、手づくりの良さが伝わってくる。暖色の自然な風合いが現代的な感覚とマッチして、さわやかな和洋の世界を展開している。 増田は得意の古代器だ。この皿の器は神仏を祭る際に使う高台をイメージしたもの。表面のつぶ状の線は長石と半磁器を混ぜ合わせて出来たもので不思議な風合いを出している。硬質なので日用として気軽に使えるのが特徴。主婦としての感覚から創造した一種のテクニックであろう。 工房の名のように、よいことが起こっているようだ。すばらしい展覧会が証明している。 さとやまクラフト・横安江 TEL:(076)234-9101 |
流雲 4R展2002年7月12日(金)〜7月21日(日) 美術サロンゆたか(石川県金沢市)
「やけに迫力がある。不気味な感動だ」。横4.5m、縦1.7mの画面いっぱいに竜巻を生む雲の表情をダイナミックに描いた作品に思わず立ち止まり、唸ってしまう。 作者の佐藤俊介は「竜巻は普通、海やその近くで起きるが、私が見たのは街の真ん中。ビル群から空に向かって立ち上る竜巻はものすごかった」という。その光景を描いたのが「竜を生む雲」である。白い雲は貝を粉にして作った糊紛という日本画特有の絵の具である。どす黒い雲は嵐の前兆を表現している。公害に悩む街の末路と解釈しても過言ではない。そんな鬼気迫る絵だ。 「流雲」は若手作家3人によるコラボレーションで今回は4回目。佐藤は金沢市生まれで金沢美術工芸大学卒。日本画で現代美術展美術文化大賞。陶芸の小野内俊夫は愛知県出身で石川県九谷焼技術研修所を卒業し松本佐一師事。香田昌恵は金沢生まれで石川県立工業高校工芸科から卯辰山工芸工坊房へ。 小野内は「竜骨」を展示している。海に流れてくる古木から恐竜をイメージした、という。細く伸びた骨は、まさに恐竜のミニチュア版だが、激しく躍動している。香田は芽や葉をモチーフにした連作オブジェ「グリーン・パワー」。花瓶の横側に4、5本の触手、これが芽のようだ。植物が光と水で栄養を蓄え生長してほしい、という気持ちを表現しいているという。花瓶は植物の胴体であろうか、何かの力が働いている 美術サロンゆたか TEL:(076)232-1341 |
高崎高嗣展2002年7月12日(金)〜7月18日(木) ひろた美術画廊(石川県金沢市)
清楚で美しく、人物画の格調を整えた女性像を見ると、思わず心が和む。そんな気分にさせてくれる100号の大作、あまりないことだ。その作品「夏の実り」は高崎が所属する一水会本展で木下孝則奨励賞を受けた。 高崎高嗣は言う「全精神をぶつけた作品。緊張感の連続でした」。制作に挑んだ情熱の所産であろう。バックは暖色のベージュ、細かい花模様の赤いワンピース。収穫した緑色のぶどうが新鮮に映り印象的だ。右手に持つ大きな麦わら帽子は、いま野から帰ってきたことを表現している。バランスのとれた構成、人物像の確かさを持っている。 「オータム(秋)の装い」は黒のドレスをまとい、胸にエメラルドのペンダント、クラシックな雰囲気を醸しだしている。確固たる写実の精神を発揮した作品だ。公募展の多くは女性像である。この2点も高崎の作家根性を発揮した秀作といえる。
高崎は石川県富来町の出身。日展参与の大津鎮雄に師事、日展に8回連続入選。一水会会友、日本美術家連盟会員で42歳、気鋭の作家。3年前から金沢で個展を開催している。今回は日展と現代美術展へ出品した大作のほか、富来町やフランス・ロワール地方を描いた風景画の小品など20点が展示された。 ひろた美術画廊 TEL:(076)240-0007 |
湊七雄個展〜静寂〜2002年7月10日(水)〜7月22日(月) ギャラリーアルトラ(石川県金沢市)
1972年三重県の生まれ。1998年金沢美術工芸大学油絵科卒業(在学中スウェーデン国立ヴァーランド芸術学院に短期留学)。2000年ベルギー・ゲント王立アカデミー大学院版画科修了。グランド・ディスティンクションを受賞。在学中より活発な発表活動を日本、ベルギー、スウェーデンにて行ない、ベルギーでは詩画集を2冊出版。現在ゲント市在住。 「大学のころは人物が中心でしたが、最近は目に見えないもの、神秘的なものへの憧れがあって、それに具体的な形をつけてやりたいと。たとえばF1、あのスピードの中で、自分の中に時間が止まる、そんな静寂を」。個展のテーマはこうして生まれた。すべてゲントで描いたもので、ほとんどが今年にはいってからの作品だ。 油彩を中心に中小20余の作品が並ぶ。版画も修めただけあって、構図などに独特の感覚がうかがえ、シャープな"静寂"が漂う。会場全体も一つの作品と考え、音楽も吟味、ベルギーやアメリカの作家の現代音楽を流す。ゲントでは作曲家とのコラボレーションも行なった。 ギャラリーアルトラ TEL:(076)231‐8082 |
二紀展金沢展2002年7月7日(日)〜7月15日 石川県立美術館(石川県金沢市)
二紀会は2年に1度巡回展を開いているが、今回のテーマは「21世紀への視座/1000の形象」。1000の作家が意をあらたに新世紀の形象を探っていこうというもの。 金沢展では絵画と彫刻を合わせて130点が出品され、色彩豊な幻想的な絵画と斬新な造形美の彫刻が激しく躍動して感動を覚える。重鎮のほか地元作家の意慾作や昨年死亡した吉田冨士夫前北陸支部長の遺作も展示されている。今回は地元作家で注目されている二人の作品を紹介したい。 岡本正一は「黒い風船」(130F)の力作を出展。モチーフは家族。造形的な表現としてであり、家族の絆といった具体的なものはない。母親らしき女性、その子どもの眼差しは向き合っておらず、そこには孤独があるだけだ。「家族とは何だろうか、といったことは描きたくない。これも人間模様として捉えてください」と言う。岡本は二紀の同人になって14年目、「家族」のテーマを追い求めている。 小林利幸の「コノテーションー暗示的機能」(100P)は奨励賞を獲得。新人らしく新鮮で伸びやかな作品を出してきた。21世紀、新時代の人類の未来をイメージしている。グレー一色で統一し構図の取り方も申し分ない。強い緊張感がみなぎっている。小林は金沢美大卒で31歳、期待の作家である。 ギャラリー・グレコ TEL:(0761)22-8866 |
G4〜FOUR SCOP〜ガラス4人展2002年7月3日(水)〜7月15日(月) ギャラリー・グレコ(石川県小松市)
華麗で楽しいガラスの万華鏡である。若手作家4人がカップなどの日用品や奇抜で独創的な作品を出展している。 奥野いづみ、川部朋子、水上竜太、加倉井秀昭は北陸の工房で活躍している仲間。一人ひとり個性があり、一堂に展示するのに時間がかかったらしい。が、60数点も展示をできたことに誇りを感じているという。 加倉井の作品「ボトル」に注目した。のっぺらなこけし人形のようなオブジェ。単純だが奥深い。赤と黒、青と黒の2色で表現している。赤は真昼、青は朝と夕、黒は夜である。オブジェは人だ。1日の生活を色彩が物語っている。余分なものを一切そぎ取ることで、より鮮明なイマジネーションを見る側に与えているのである。 造形美あふれる作品から日用の美もあっていい気分にさせてくれる展覧会である。 ギャラリー・グレコ TEL:(0761)22-8866 |
のんべいが選ぶ酒の器展2002年7月5日(金)〜7月14日(日) G-WING'Sギャラリー(石川県金沢市)
のんべいが選ぶ!いったいだれが選んだのだろうか。11人の作家が参加している。篠原敬、岩田圭介、角田武、野村瑞穂、矢尾板克則(以上陶芸)、小口宗之、片根美和子、上村眞紀子、凛華(以上ガラス)、黒田昌吾(漆)、関根正文(錫)。 篠原敬が代弁する。「いろんなことを感じなければ生きていけない。見ようと思えばみえてくる。聴こうと思えばきこえてくる。そのあとに(作品として)出していきたい」。ほんとうに喜ばれて使われるものを模索する。本を読み旅に出るのはそのためのエネルギー源。 篠原の珠洲焼のぐい呑みは口当たりが微妙な具合でいかにものんべい思いの作品。岩田の白磁酒器3点セットは大ぶりでたっぷりとたのもしい。上村のガラス作品はあでやかさをさりげなくあしらって涼感を演出。黒田は高岡漆器の作家で片口やタンブラーなど朱や溜の塗りが冴える。関根の錫の酒器は内に漆を塗った作品もあり金属の冷たさを和らげる。 客の口もとも緩みがち、やはりのんべいにみえる。そしてさらに11人の作家も企画者もみんなのんべいとのことでした。 G−WINGSギャラリー TEL:(076)238-0788 |
山本宏幸 日本画展2002年7月2日(火)〜7月14日(日) 浅野川画廊(石川県金沢市)
日本画というと、「色がついているのですね」という方がまだいらっしゃるくらいイメージは限りなくモノクロームに近く、そこまでいかなくても『日展』に代表されるように描かれるものは花鳥風月や人物が主で、淡くて物静かで控えめというのが一般的な印象だ。 その点、山本宏幸の日本画はちがう。金や銀や銅の箔、朱や青や黄色に緑の岩絵具を駆使して(ここまではまさに日本画の技法だが)鮮やかに描き出す。しかもサンマや筍、富士山にバーボンウィスキーと描くものはなんでもありだ。絵のサイズも極端な横長があり縦長がある。いわゆる何号という企画では収まらない。 住宅様式が変わり生活空間も変わってきているのだから、日本画の様式も変わらなくてはいけないというのが山本の持論だ。吹き抜けの玄関に飾る絵は縦長がいいのである。父が木工所を営んでいたこともあって額も自分で造る。「額も絵の一部と考えます」 「個展の開催中は必ず会場にいます」。直に客の声を聞きたいからだ。だから積極的に声を掛けもする。1965年金沢市生まれ。1991年金沢美術工芸大学大学院日本画修了。 |
高光一雅作陶展2002年6月28日(金)〜7月10日(火) ひろた美術画廊(石川県金沢市)
高光一雅は陶芸家高光一生の長男。石川県立九谷焼研修所を出て高光工房で修行をしてきた。日展は31歳の時、初出品で入選。以来、連続5回入選。その間、石川県現代美術展や日本新工芸展で活躍している。36歳、気鋭の陶芸家。 今回が7回目の個展。「夏の訪れとともに」をテーマに60点を展示し、器の底にガラスを置いて涼感を出し爽快に展開している。 花器、かけ花、カップなどは青、グリーン系の色合いを使い、高光の独創世界を演出、「金銀の色彩を利用して、新しい試みだがグリーンを大胆に使ってみた」と意欲作を語る。 その作品「器」は、トリコマット方式。器の内側にグリーンの釉薬を一面に塗り明るく仕上げている。この手法は流れやすく、ムラになるがそれを高光は克服した。グリーンの色彩が生きていて、見応えがある。 ひろた美術画廊 TEL:(076)240-0007 |
ルオー展2002年6月28日(金)〜7月7日(日) 美術サロンゆたか(石川県金沢市)
久しぶりにルオー展が金沢市で見られる。ルオーは富山県立近代美術館の常設展で鑑賞できるが、石川県ではその機会はあまりない。今回は銅版画だが15点が展示されている。同展では、ほかにロランサンやガージンスキーも展示してあり重厚な展覧会となっている。 ルオーは魂のあり方を追求する宗教画家として知られる。宗教を制作手段として、自ら「キリスト教の画家」と呼んでいる。が、作品の多くは創作力で描いたもので、現実的な観察はしない。 道化師やピエロ、裁判官、宗教的なモチーフで制作したのが1920年から1930年代である。そのころの作品が展示の「顔に皺(しわ)を刻まぬ者はいよう」は代表的な作品で、自画像のような絵に乗り出して見る思いになるだろう。 それにしても、見応えのある展覧会が金沢市内中心街の画廊で見ることができるのはファンには有難いことだ。しかも商店街の中心にあり、若者たちも訪れているのには驚く。中心街の空洞化が叫ばれているおり、ギャラリーの存在は街の活性化に大いに役立つ。もちろんいい企画展があってのことだが。街並みの人出は文化を醸し出すものなのだ。 美術サロンゆたか TEL:(076)232-1341 |