アートドキュメント2002年森の精3人展

2002年7月2日(火)〜8月18日(日) 金津創作の森(福井県金津町)

藤田昭子「じょう座」
青木野枝「寒天」
辻けい「金津―円」

女性造形家3人による陶土、廃材、鉄の素材をもとに制作した現代アート。森を活用した造型展で、屋内外のあちこちに展示された35点は森の精気か。「この土地と森に住む精に捧げるもの」、広大な森と共鳴して見る者を圧倒する。

藤田昭子(陶の彫刻家、68歳、横浜国大学芸部卒、神奈川県在住)は「じょう座」を出品。 幅5メートル、奥行き3メートルの広さに作品と大地をつなぐ宇宙的野焼き。火により祈りを込めて精霊を静ませるもの。呪術の雰囲気もあって、近くに寄ると足がすくむ。

青木野枝(鉄の彫刻家、43歳、武蔵野美大造形研究科終了、東京都在住)の「寒天」は、鉄を切断したリングで天空と結ぼうという造形。空気の流れを感じさせ、浮上しているかのように軽く柔軟さを表現している。見るものによって解釈は違うが、寒天のイメージで捉えれば面白い。鉄は硬く重いという概念を否定するものという。

辻けい(フィールドワーク、49歳、多摩美大美術研究科終了、神奈川県在住)の「金津―円」は、ため池の水際に、表面をバーナーで炭化させ縦5分の4を地中に埋め込んだ280本の丸太で構成。この作品には、池に流れる水の浄化作用もあるそうで、森の活性化を訴え、環境アートとして提案している。

いずれの作品も「火・水・鉄で過去―現在―未来を結ぶ行為」。現物の前に立つだけで森の精を受け、この雄大な人工アートを理解できる。

金津創作の森 TEL:(0776)73-7800


中西真三展

2002年7月27日(土)〜8月2日(金) G-WING'Sギャラリー(石川県金沢市)

笑う中西真三
左から「ひらひらII」「ひらひらI」
「ひらりひらり」
ざわざわV

3年前から和紙を使うようになった。和紙のマチエールに惚れた、というのも能登の輪島市に1軒だけの産地があって、製作者の遠見さんを知ってのこと。中西は1953年、少し離れるが同じ能登の穴水町に生まれ、同町に工房を持つ。例えば、写真の『ひらりひらり』『ひらひらI・II』の和紙には、藁(ワラ)を入れて漉くように頼んだ。

使用する絵具は水性で、重厚な色彩の作品もあるが、ほとんどはパステル調の明るく軽いタッチのもので、観る者を清々しい気持ちにさせる。形態は、和紙に描いてそのまま作品としたもの、アクリルで覆い光の反射を面白味として活かしたもの、額に入った従来のスタイルのものがあり、大きさもF50ぐらいからハガキサイズまでと、多様だ。

若いころは具象画を描いていたが、今は「形のあるものに興味がなくなった」。で、テーマというかモデルは自然の月、川、森。「能登に吹く風を味つけに」作品のタイトルはその風の音や、山や川が発する音だったりする。「日々、ing、だから将来はどうなるか分かりません」、と笑った。

G-WING'Sギャラリー TEL:(076)238-5505


中佐藤滋+Kana展

2002年7月26日(金)〜8月4日(日) 美術サロン・ゆたか(石川県金沢市)

作家中佐藤滋と作品
「7人の男」は考える
見る側の心に話しかけるよう

絵は平面上の美しさだけではなく、物語性をプラスすると、見る側の心にこうも力強く働きかけるものなのかとつくづく思ってしまう、そんな展覧会がある。

現代美術と現代詩の異業種? 一見調和しているようだが、合い交えず互いに「自己主張」している。デフォルメされた人物画、詩は短いフレーズで情緒的だ。絵も詩も人の心に話しかけ訴えている。画家・中佐藤滋と詩人Kanaのコラボレーションである。

30点の絵と詩が一定の間隔を保って展示されている。中佐藤(東京生まれ、日本美術家連盟会員)の絵は色彩を極力抑えユーモアでシニカルな人物画。詩人Kanaは23歳、機知に富んだコトバで綴る詩は知覚に響く。ユニークなこの展覧会、中佐藤が編集し制作した画集・詩集「7つの月」の誕生を記念したもの。

展示の絵と詩を見てみよう。7枚が一連となって物語的になっている。7人の男の顔を描いている絵もある。フロに入ったり、お茶を飲んだりしている一人の男の生活を7枚の絵で表現しているものもある。本の題名の「7」にこだわった連作誌画である。

作品のひとつ「家路」の詩である。

 再期に選んだ現実は 綺麗な程冷たく感情の無い世界 裸足で闇を歩み 
 鈍い感触が沁み込む 真実も偽る誘いに嵌った影がまた今宵もひとり。

「7」はラッキーセブン。「7つの月」の中に心の癒しと和みを発見できるかも知れない。

美術サロン・ゆたか TEL:(076)232-1341


ユトリロ展

2002年6月15日〜8月4日 富山県立近代美術館(富山県富山市)

美術館のまわりには
緑がいっぱいだ
会場入り口
空間の中心に休憩スペースが

モーリス・ユトリロ(1983〜1955)は、パリの街・モンマルトルの風景を終生描き続けた。常人の軌を超越した色彩と筆致で描かれた絵は、まるで自身の病んだ心の内がそのままキャンパスに飛び出してきたようで、たしかに輝かしいほど白く、しかしいつも暗く、どこか意を決したようにときおり赤く、やがて全体は異常に重々しい。

アル中治療のあとの「モンマニーの時代」(〜1908)。静謐な雰囲気の中に圧倒的な量感を描く「印象派風の時代」(1908〜1914)。うしろ向きに中年の人物が小さく入り、淋しげな外灯に火のともった、あまりに有名な「白の時代」。色が増えはじめた「豊饒な緑の時代」(1917〜1920)。そして「克明なリアリスムの時代」を経て、明るく画面が輝いた「色彩の時代」(1922〜1955)へと、画家ユトリロの50年は推移する。

そんな時代を回顧する『ユトリロ展』は、日本初公開の作品も含め、油彩、水彩、約80点が展示される。著作権の関係で作品そのものを紹介できないのは残念だが、美術愛好家のみならず一般の方々にも、絶対のおすすめ展だ。

富山近代美術館 TEL:(076)421-7111


ガラス展「引力」

2002年7月5日(金)〜7月30日(火) INAXスペース金沢(石川県金沢市)

「ふんわり」のイメージ、
これも引力か
「表現」とはこのことであろうか。
芸術は引力なのだろうか。

「引力」をテーマにガラスのオブジェをしているという。これは何だろう思う。床に円盤の形をした皿のようなものが5、6枚無作為に、さりげなく置いてある。作者に言わせれば、置いてあるのではなく、空間に浮遊しているのだという。岡本太郎ではないが芸術は表現だ。

それが芸術の世界における引力なのだろうか。「思想の重点は、地球の引力を作品に利用し、作品に曲がったり歪んだり、垂れたり、引っぱられたりする、そんなことなのです」と意図はしっかりしている。

展示してあるガラスのオブジェの色彩は、というと、シンプルの一言だ。白、赤、黄色、無駄な色彩がない。これが引力を起こすなのだろうか。「ふ」と「引力」を連動させて「ふにゃふにゃ」「ふんわり」といったイメージだそうだが、実は空間に浮遊しているかのようにオブジェが生きてくる。つまり「引力」なのだろう。

展示しているのは大田真人、五十嵐真帆。1993年(平成3年)に多摩美大卒、1995年(平成5年)金沢卯辰山工芸工房研修後、金沢おしが原工房で制作活動をしている。このギャラリーは年間テーマが「表現」だそうだが、2人の主張はこの作品が物語っている。

INAXスペース金沢 TEL:(076)262-1701


食を楽しむうつわ展

2002年7月20日(土)〜8月4日(日) ギャラリー小堀(石川県鶴来町)

作家の森山邦応
粉引の花入れととっくり
新鮮な感覚の作品群

「食を楽しむ」というのは、家族の団欒であったり、いい雰囲気もあるが、食事の際の「器」となると思うようにはならないものだ。が、この展覧会に心地よい器があった。「日常の生活で気に入った器をちょっとプラスして気分を変えていただければ」と当の作家は控えめだが。

持ちやすく安定したカップ、花入れ、食いのみ、とっくりなど、ずらり100点余り。どの作品も素朴だが、かえって新鮮なのが魅力であり不思議な感覚に襲われる。そこに作家の根性と無視の精神があるからだろう。

展示しているのは松根窯の森山邦応。父博応を継いで陶芸の道へ。自然灰釉、焼き締め、高麗、粉引、刷毛目の作風には独特のものがある。その特徴を生かしているのが「土」である。

だから作り手の思いは、とことん「土」にこだわる。石川県小松市若杉山の土であったり、同能美郡辰口(たつのくち)の土であったりする。すべて自分で探し、堀るという懲りようだ。だから器は素朴に見えるが、じっと見ていると力があることが分かる。

森山は金沢市の郊外、土子原の山間で制作に励む。20畳の部屋に1坪の大きな囲炉裏(いろり)。3年越しの灰が几帳面にしき締めてある。陶芸作家の匂いを感じる。「四季を通じて創造の場として最高です。無の世界から一歩一歩作っています」。

森山は一期一会の心を宝としている。訪れるもよし、聞くもよし。陶芸の本筋が解る。

ギャラリー小堀 TEL:(0761)93-1180


水友会洋画展

2002年7月19日(金)〜7月31日(水) ひろた美術画廊(石川県金沢市)

江守マリ子の「花をたずさえ」
松下久信の「ボタン」
田中俊夫んの「デコボンのある置物」

格調のある展覧会で定評の水友会洋画展。27回目というから歴史はある。安定した絵画を鑑賞することは、美術愛好家にとっては救いだ。かといって花鳥風月の風景画や人物、静物をこれでもか、これでもかと見せつけられると止まる足も足早になる。だが、この会の作品はどれも絵に力があり、モチーフに思い入れが深いから見とれてしまう。

江守マリ子は一水会の会員で円熟の女性作家。南米の女性を画面(S50)いっぱいに描いた「花をたずさえ」が強烈な個性を発揮している。場面は農家であろうか、女性は三つ編み、きちんと手を組んでいる。バックに農作業をしている人がいる。見る側に絵画の存在感を感じる瞬間がそこにあった。それが「絵」というものであろう。

松下久信(会員)の「白いボタン」(F6)は、鮮やかの一言に尽きる。白いボタン、その色彩は優しく強く迫る。色に深みがあるのだ。風景画を得意とする松下が静物をこれほど見事に描きたというのは、絵に対する執念のようなものだろう。

田中俊夫(会友)の「デコボンのある置物」(F60)はコップや花器、くだものなどさり気なく描いているが、その配列と色彩がいい。落ち着いたダーク色の置物一つ一つが何か訴えているかのように見える。そのなかで黄色のデコボンが一際光る。これは絵の美学、ものを直視している。

出品者(一水会所属作家)は江守、松下、田中のほか荒木幸子、江守マリ子、北清志、松村雄二郎、高木利一、政木良一、松浦欽子。

ひろた美術画廊 TEL:(076)240-0007


女性3人作陶展

2002年7月20日(土)〜7月26日(金) カフェゼルコバ(石川県鶴来町)

瑞々しい感覚の作品群
自然と調和する野外オブジェ
柔らかなタッチの花器も

人間の生活で欠かすことのできないひとつに「自然との共生」がある。それは水であり、土や木、緑、風などであろう。創作の場でもこれらとの「共生」は必須条件だ。

木が多く、緑が深く、時には小鳥が飛び交う所にはあまり出会わないものだ。その空間にオブジェがあれば、人は独創世界を爽快に体験することができる。そんな「場」が白山下に位置する手取川渓谷の一角にあった。自然との調和、とりわけ「木々との調和」を謳った作陶展は原初的感覚に喚起される。

展示したのは井波洋子、北崎幸子、花川次代。3人は金沢の陶芸家中村博光が主宰する「一閑」で修業しており、今回が初めての合同展。

野外に展示された野焼きのオブジェは雰囲気とマッチし存在感をアピールしている。縄文土器を連想するもの、カボチャ形の大鉢、素朴だが作者の独自の世界が伝わってくる。室内には焼き締めの花器や小鉢なども展示されており、瑞々しい女性の感覚が溢れた作品群で、見る側を楽しませてくれる。

カフェゼルコバ TEL:(07619)3-0788


日高裕子のメルヘンパーテー展

2002年7月19日(金)〜7月28日(日) グリーンアーツギャラリー(石川県金沢市)

メルヘンの世界を演出する日高裕子
見ているだけで楽しくなりますよ
温かみのある作品群

まさにメルヘンの世界。焼き物パーテイーである。壁や床はチョコレート、屋根はビスケットの形をした「お菓子の家」。これが焼き物と聞いて驚く。果物や菓子を描いた小皿、マグカップなどカラフルで温かみのある作品は200点。プリンやロールケーキの形をした小物入れなどずらり並び楽しい限り。

陶芸家日高裕子の作品展「メルヘンパーテー2」。技法はこうだ。土の色を応用し、連想する色彩をデザインしてはめ込んでいく。表裏に自在に表現ができ、カラフルで愉快な焼き物の世界が出現する。しかも個々の作品は不自然に見えないのが何とも不思議だ。

日高は金沢美大商業デザイン科を卒業し、遊工房で陶芸を始めた、と聞けば作品は理解できる。金沢市工芸協会会員で、多くの入選や賞を得ており、この世界ではベテランの作家。

「毎日の生活のなかで、使いやすく夢のある食器を作りたいのです。私なりのメルヘンを焼き物で表現しました」とは、日高のメッセージ。伝統やルールにとらわれない制作姿勢を貫くという。

グリーンアーツギャラリー TEL:(076)245-7222


松本昌子人形展

2002年7月17日(水)〜7月22日(月) 金澤画廊(石川県金沢市)

顔の表情には辻村ジュサブローの人形と通じるものがあるが、構図はまったく違う。過激で先鋭的だ。しかし、全体にある種の暖かさや優しさを感じるのも事実で、包みこめるくらいのサイズの人形に逆に包みこまれてしまっているかのようだ。

高さはどの人形も40cmぐらい。服の着方は純和風とも見えるが、無国籍といおうかプリミティブなカオリもすこしあって、時空を遡ったような(ひょっとして未来かもしれない)、大陸と交易をしはじめたころなのかしら、時代背景は。

松本昌子は1955年、富山県魚津市の生まれ。1980年にウインドーコーディネーターのかたわら陶芸人形やアクセサリーの制作を始める。1984年、のちにご主人となるザイールのミュージシャン、P・B・モフラン氏に招かれてケニアのナイロビに滞在、その時に現地の日本人の奥さんたち人形作りを教え、作品の方向が固まった。日本、アジア、アフリカ、ヨーロッパ。すべての要素を自分なりに消化してうち捨てたものから、オリジナルが生まれた。

縛られる概念、規則など何もないのだ。だから、どの人形にもタイトルはない。

金澤画廊 TEL:(076)262‐7227


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