
サム・フランシス展 ―出光コレクションによる―2002年8月10日(土)〜9月16日(月・振) 富山県立近代美術館(富山県富山市)
精神と肉体、思惟と感覚の生と死とのぶつかり合い。その飛沫が見る側にも飛びかかってくる。錯乱を促す日本間の群青壁のような青、乾いて血糊となって尚鮮やかさを残す赤、「どっちだ」叫びが聴こえそうな黄、地の底から這い上がって来たに違いない黒、そして「何がここにあるんだ」哲学的に責めたてる白。どの色にも決して自由は無い。が、押しつけもない。だから、暗さ重さは無く、明日への躍動すら感じさせる。 サム・フランシス(1923‐1994)は20世紀を代表する現代美術の作家で、アメリカのカリフォルニアに生まれた。大学では植物学、心理学、医学を学んだが、兵役中のパイロット訓練中に事故に遭遇、療養中に絵を描きはじめた。第2次大戦後、パリに渡り画家としてデビュー。その後はカリフォルニアに住み、パリ、ニューヨーク、東京などを舞台に活躍した。1950年に初来日し、アンフォルメル運動(1950年代、ヨーロッパに興った抽象表現主義の一動向。否定形絵画)を紹介、日本の文化人とも多くの交流を持った。 中でも、良き友人でもあり長きにわたって制作活動を支えてきた出光左三のコレクションは世界一といわれ、今回の個展は出光コレクションからのみ選ばれ構成された。これは、生前のサム・フランシス自身が望んでいたことでもあり、海外からも注目されている。展覧会は富山県立近代美術館をかわきりに全国を巡回する。 富山県立近代美術館 TEL:(076)421-7111 |
北川順一絵画展2002年8月22日(木)〜8月27日(火) ギャラリー・ノア(石川県金沢市)
F20のキャンバスに描かれた渦のなかを数匹の蝶が舞う。渦は過去・現在・未来を表わすタイムトンネル、蝶は命の源泉、北川順一の世界が展開する。 一つの作品に油彩、岩絵具、水墨を同時に使い混然一体となった夢や幻想を見る側に与えてくれる。「キャンバスは舞台、絵に物語性つまりドラマがあって色彩はオーケストラの音楽のようにリズムがなければいけない」と主張する。北川のテーマは花と蝶、それは人類繁栄の象徴であると言う。 「花の幻想」の空は水墨を使い、緑輝く川は油彩である。水面を蝶が飛んでいるように見える。あるいは水面は刺繍をした着物の帯のようにも。「蝶」と題する作品は女性が2人、蝶の羽のように対峙し祈っている姿は華麗だ。 北川は福井県三国町にアトリエを持ち、主にフランスや中国を舞台に活躍。サロン・ド・パリ展市民賞、カンヌ国際芸術展銀賞など外国での受賞が多い。水墨画から日本画、洋画もこなす異色作家で日本文化振興会特別会員、新日本美術院理事。 ギャラリーノア TEL:(076)276-4486 |
「土門拳」写真展2002年7月27日(日)〜8月25日(日) 加賀アートギャラリー(石川県加賀市)
蛇の目傘を回すいたずらっ子、オチンチンを出している腕白っ子、近藤勇と鞍馬天狗を演じて自慢の子供たち。いじわるそうな眼、あざ笑うような顔つき、人間の本質を表現したものであろうか。これほど子供たちの生々しい姿を活写した写真はそう多くはない。リアリズムの写真家土門拳(1990年死去)の生涯をかけた作品をみることができる。 作家の石川達三は「人間の壁」で「子供はいじわるで、エゴイストだ。人間の本質というのは子供に一番よく表れる」と書いている。子供はかわいくて、無邪気で純真だというイメージが濃い。が、土門は子供の、つまりレンズを通して人間の真の姿を表現した。 土門には代表作「古寺巡礼」や三島由紀夫、梅原龍三郎など文学者、画家らの表情をとらえた「風貌」のほか「職人の手」「文楽」「女優と文化財」などがある。昭和30年代には加賀市を訪れ、「古窯遍歴」のなかで「九谷窯址出土の陶片」として収めている。石川県で初の展示。 土門の出身地山形県酒田市に記念館があるが、「写実の神様」を見る絶好の機会であろう。 加賀アートギャラリー TEL:(0761)72-8787 |
「紅染月 赤・朱・緋の器たち」展2002年8月1日(金)〜8月25日(日) 九谷焼美術館(石川県加賀市)
華やかな赤の競演をしている器展が好評だ。出展はご当地の陶芸作家21人で、晩夏の赤をモチーフにした作品。「紅染月」とは8月の異称、それにちなんで制作したという。九谷焼の魅力は限られた色彩で絵画的美しさにある。この展覧会では充分にそれが発揮されている。 伊豆蔵幸治の「赤絵隅切魚文角皿」(観山釜)がいい。皿の真ん中に描かれた赤の魚が青のバックで鮮やかに浮かび上がっている。色彩の兼ね合いの妙が見所だ。「作品は魂が宿っているものばかりで、そこには自分の体臭がある」という本人に芸術家としての気取りはない。石川県山代の出身、一水会陶芸部で修業、平成4年に最高賞のNHK会長賞を受賞、日本新工芸家連盟会員。 山本芳岳は「赤地金襴手染入龍鳳文菓子鉢」。「絵画的な主題を装飾的な文様と組み合わせ、色絵としての効果を追求してきた」と語る山本の作品は格調高い雰囲気が漂う。石川県加賀市の出身、九谷焼赤絵細描画で活躍。日本工芸会石川支部会員。 ちなみに9月は「色取月」(彩りの器たち)、10月は「秋燈月」(土と灯のぬくもり)、11月は「霜見月」(酒の膳しつらえ)、12月は「暮新月」(干支尽くし)。月々のテーマに沿ったどんな作品が見られるか、楽しみのひとつだ。 九谷焼美術館 TEL:(0761)72-7466 |
有楽会3人展2002年8月8日(木)〜8月20日(火) ギャラリーもろみ蔵(石川県金沢市)
ちょっと乙な小ものたち、を制作したのは20代の3人。多田幸史、新岡敬子、井上雅子は石川県立九谷焼技術研修所を今年4月そろって修了。修業の成果を発表する初のグループ展。 「雑貨展、アクセサリー展、という人もいますが、小さな芸術展と呼んでください」と多田は代弁する。その小さな芸術のどれをとっても、きちんとした繊細な仕事をしている。多田の作品は色彩が豊富だし、個々にすばらしい感性が見受けられる。 多田にはその素地がある。父親の鉄男は金沢美術工芸大学デザイン科を卒業、現在石川県クラフトデザイン副理事長。母親の利子は武蔵野美術短期大陶芸コースを卒業後、九谷焼技術研修所を修了。陶房「鉄」を開いている。多田はその環境で育った。 井上の器は土もの。「らくだの灯」は、からだは黒で首から上は金色だ。鮮やかなコントラスを描いていている。新岡の作品は絵付けがきれいだ。新鮮な色合いが新人らしさを醸し出していて好感が持てる。今後が期待の若者たちである。 ギャラリーもろみ蔵 TEL:(076)267-0121 |
笹川順子油絵展2002年8月14日(水)〜8月20日(火) 香林坊大和アートサロン(石川県金沢市)
笹川順子は文化功労者の高光一也に師事した。1985(昭和60年)の個展で高光が祝辞を述べている。「笹川さんも自分のスタイルが出来て、その自分の世界を楽しんでいるようですね」。17年後の今回の個展も楽しんで描いた新作は34点。高光のあと光風会理事の円地信二に学んだ。現在、日展会友で光風会会員、石川県美術文化協会会員。 画風は色彩が豊かで穏やかな筆致。一番好きなモチーフはと尋ねると「何でも好き。これからもいろんなもの描いてみたい」。つまり風景あり静物あり人物ありで、バラにつばきの花、人形、果物、動物とバラエティに富んでいる。 「伊万里鉢の白鳳」(6号)が印象的だ。器の内側に一条の青い線と朱色の細かい模様。鉢の中には薄いピンクの桃が2個、外にはみ出た1個は鮮やかな赤でこの絵の存在感を訴えている。 笹川はいつも微笑みを絶やさない。「私、根が明るいんです。暗いのは嫌いよ」。これからも楽しい絵の世界を見せてくれることを期待したい。 香林坊大和アートサロン TEL:(076)220-1111 |
生誕80年記念 絵の詩人 谷内六郎の世界2002年8月8日(木)〜8月20日(火) 香林坊大和8階ホール(石川県金沢市)
詩的でメルヘンティックな画風で知られる画家、谷内六郎の画業をふりかえる。谷内の絵は『週刊新潮』の表紙画があまりにも有名だが、初期の水彩画をはじめ、詩画作品、晩年の油彩画など本展では約250点を紹介する。 谷内には喘息の持病があった。この病に生涯を通じて悩まされるわけだが、一方、病弱な少年を画家として育しみ、成功させたのもこの病であったといえる。 谷内は1921年(大正10)、東京の恵比寿に9人兄弟の6男として生まれた。少年時代から絵が好きで、漫画やカットを新聞や雑誌に投稿、入選を重ねていた。1995年(昭和30)「行ってしまった子」で第1回文芸春秋漫画賞を受賞し、デヴュー。翌年の『週刊新潮』の創刊と同時に表紙絵を担当、59歳の時に急性心不全で亡くなるまで、25年間続いた。
幼い日の夢やふるさとを描き、独自の優しさでわたしたちの心を確実につかんできた谷内の作品群は、失いかけた日本人の詩情とは何かを、語っている。 香林坊大和 TEL:(076)220-1111 |
イスラム陶芸展2002年8月1日(木)〜8月13日(火) 九谷美陶園(石川県加賀市)
イスラム陶芸と九谷焼、どちらも伝統工芸である。イスラムは「三彩」、九谷は「五彩」、その両方が融合して鮮やかな美を競演している。 作家アリシェル・ラヒーモルはウヅベキスタン共和国出身。27歳、6代続く陶芸家。国際交流基金により加賀市山代温泉で九谷焼の技術を学んでいる。東京、京都など主要都市の大学ではイスラム文化の講義も行っている。父親が5年前に来日し九谷焼を修業したのが縁で、今回は初の個展。 イスラム陶芸の特徴は器の形より装飾の美しさにある。絵付け、彫り、型押し、レリーフは濃厚。色彩は「ペルシャ三彩」と呼ばれ黄・緑・青が主流だが、ペルシャ紋様の絵柄を描いた磁器の大皿に九谷の赤・紫が加わり、色彩の妙が出ている。 「融合文化」という言葉がぴったりの展覧会だ。日本とウズベキスタンとの交流史の1ページとも言える。 九谷美陶園 TEL:(0761)76-0227 |
こま絵展2002年8月1日(金)〜8月13日(火) ギャラリー千代堂(石川県松任市)
はがきより小さい絵。水彩画や水墨画もある。正方形もあれば長方形、横長の絵もある。題材はサクランボ、なすび、夏山風景などなど、身近で親しみやすく堅苦しくない。額縁は出品の19点とも黒1色で統一し風格を表現している。彫刻家が描いた「絵」。軟弱な作品と批判を受けるのは覚悟、と謙遜気味だ。が、見入っていると酷暑を忘れさせる。 作者の山瀬晋吾は石川県内浦町出身で彫刻家。金沢大学附属中高校教師、富山大学教授を経て昨年退役。日展会員、日本彫刻会会員。「こま絵」は中学教諭時代に生徒の卒業文集のカット絵を担当したのがきっかけ。個展は25年ぶり。 「小間絵」「駒絵」とも一般的には聞きなれない言葉だが、新聞や小冊子などの印刷物に書かれた小型の「さし絵」「カット」のこと。絵画の大きさを表す「号」の基本単位ははがき1枚の大きさを1号といい、最小のものは「サムホール」と呼ばれている。「こま絵」は「サムホール」とは違って、7センチ4方を基準にいろいろな形を変えたのが特徴。 同展では、富山県井波町の授産施設「マーシ園」の入居者が作った植え込み鉢を写生した絵はがきも展示即売(5枚1組・1000円)されている。売上金は同園に寄付される。 ギャラリー千代堂 TEL:(076)275-0305 |