田部健次金工展

2002年9月5日(木)〜9月10日(火) ギャラリーノア(石川県松任市)

ろうそく立てにも変身するチェアー
高級感を醸し出す香炉
萩焼きとの組み合わせが妙のオブジェ

とことん銅にこだわる金工展に出会った。「銅は丈夫で長持ちし、使っていると手ずれを生じ雅味が出てきます」と田部健次は説明する。銅の花瓶で生け花をすると花が長持ちするという。銅には殺菌力があり、その作用で水が浄化されるからである。田部はその利点を心得ていた。

田部の特徴は伝統の技を生かした日常使用できる作品が多く、皿や茶道具、鍛金や七宝など、すべて一枚の銅版から打ち上げた手絞りものであることだ。アート性があるユニークなオブジェがいくつかある。ロウソク立てと花器の両方に使える飾りものにもなる、いう「一石三鳥」のアイデア商品は田部のこだわりが生きている。陶芸と組み合わせたオブジェでは銀彩銅の香炉とミニ屏風は象嵌(ぞうがん)が高級感を出している。

田部は広島市在住で日展会友、現代工芸美術家協会会員。トンネル坑口壁面や橋梁親柱などのモニュメント、レリーフを制作している異色の金工作家。今回も多彩な作品が並び、金工作家の遊び空間も楽しむことができる。

ギャラリーノア TEL(076)276-4486


原 雅幸個展

2002年9月6日(金)〜9月16日(月) 美術サロンゆたか(石川県金沢市)

「オーストハウスのある風景」SM
「Orturdの道」SM
「Hadlow Stairの道」3P

一言でいえば、繊細で緻密な風景画、ということになるが、とてもそれだけでは済まされない。絵を見れば一目瞭然、凛とした感銘が素直にやってくる。いろいろな才能があるが、凡人が努力しても如何ともしがたい種類のモノが確かに存在する。それは、才能のある者がなお最大の努力をしてこそのみ得るものであろう。

原雅幸は1956年、大阪府の生まれ。幼児期から絵画教室に通い、小学生ですでに油彩に慣れ、絵画の手技に習熟していった。大学(多摩美術大学)の卒業制作は、フェルメールのデルフト風景並みの完璧さで、専門家たちを驚かせる。卒業の年から個展が開かれ続け、ニューヨークのハマーギャラリーでも2度開催(1986,1988)、ハマー自身の肖像画も依頼された。これは、世界的アーティストと証明されたことを意味している。

村瀬雅夫(美術評論家・福井県立美術館館長)は「原雅幸はかつて"自分を鎖国した"と語り、"もう何でも描ける気がする"とも語った。その作品を前にすると、もはや誰の目にも森羅万象を自在に現出させる画家が、日本に誕生していることは明らかだった」とまで書いた。そして1998年、「日本には描くものがない」と渡英、現在ロンドン郊外の田園風景の中に活きいきと身をおいている。

美術サロンゆたか TEL:(076)232-1341


岡田まりゑ個展 ―出会うとき―

2002年9月4日(水)〜9月16日(月) ギャラリーアルトラ(石川県金沢市)

会場の岡田まりゑ
「灰色の穴にツモル」
銅版画・一版多色刷、コラージュ
「それぞれに」
銅板・和紙・鉛筆

人と人とのコミュニケーションはなかなかパーフェクトにいくものではない。「違和感や空虚なモノが必ず存在しているでしょ。作品をとおして、あくまで間接的なモノとしてですが、コミュニケーションのアイダを埋めたいと。それでも埋められない空虚感が残っても、絶望はしません」。作品のテーマについて、こう語る。

一見してやさしい色調の作品が並んでいるのだが、たとえば『灰色の穴にツモル』には、よく見ると決してやさしくないテーマが与えられていることに気づく。東京の青海のゴミ問題をテーマにしているのだ。たまたまその問題にかかわっていた友人がいた。そしてその友人を事故で失った。「どの作品も、社会性という点で、テーマはあります。でも、絵が直接的なことを語るのは好きではありません。ダイレクトに出ないように注意しています」

1956年横浜市の生まれ。武蔵野美術大学では油絵を専攻していたが、版画の授業があって「不器用なので(修得に)時間がかかり、版画をやることになってしまった」。国内の個展は東京を中心に多数、海外はヨーロッパを主に展覧会に多く出品、クルージ国立美術館(ルーマニア)などのパブリックコレクションにも受賞作が選ばれている。金沢市での個展は初めてで、銅板とドローイングが展示される。

ギャラリーアルトラ TEL:(076)231-6698


佐藤信泰展

2002年9月1日(日)〜9月11日(水) グリーンアーツギャラリー(石川県金沢市)

佐藤信泰と作品群
飛行機をイメージしたガラスのオブジェ
幻想的な青白磁の花器

ガラス職人40年の技を生かした磁器、オブジェは無私の精神があふれていてさわやかだ。佐藤信泰は千葉県出身で65歳。大手ガラス製造会社に勤務、1989年から4年間日本クラフト協会理事長を務めた。金沢での個展は初めて。

会場では四季の花を淡い色彩で描いた絵も並び、レパートリーの豊富さを感じさせる。「経験や体験のなかでのイメージです。それにしても創作するというのは骨を削るようなものです」と語るが、まだまだ意慾旺盛なところをみせた。

飛行機をイメージした翼が透明のオブジェはガラスの特性を活かし見た目にも涼しげ。初めて挑戦したという青白磁の花器はシンプルではあるが、青の色彩がグラデーションを呈して幻想的だ。

佐藤の長女が陶芸家戸出雅彦に嫁いでいるのが金沢での縁。芸術一家と言っても過言ではなかろう。ガラス工芸や陶芸の世界もますますグローバル化しているようである。

グリーンアーツギャラリー TEL:(076)245-7222


岡部俊彦「結晶世界」展

2002年8月22日(木)〜9月8日(日) INFORMギャラリー(石川県金沢市)

オブジェ群は祭壇となり密封された
人工的生命体から精神体となり
結晶化していく。

静かな異空間、曼荼羅の世界か、SFか、あるいは科学実験室か。コンピューターで描いた架空の生物を写した色とりどりのシート、家庭で日常掃き出されるゴミ、採取された昆虫がミニ試験管、または何百個もあろうか薬のビンなかに封じ込まれ、雑然と(作者に言わせると計算されて)並べられている。

造形美術に新しい波を起こしている岡部俊彦の個展「密封された精神体 幻想世界」。金沢での開催は3回目。日本のアートの世界では見られなかったある種のエネルギーを感じることができる。岡部は富山県井波町出身、筑波大学デザイン専攻綜合造形コースを修了、現在は砺波市在住で中学校教諭。

「試験管の物質はいわば人工的な生命体で過去の記憶です。電気仕掛けで光線が放され次第に精神体となり結晶化し未来へと進んでいく。それがこの祭壇の上にあります」と熱弁だ。まさに一見、化学実験のようなオブジェ群は儀式的、呪術的、祝祭的である。芸術かパフォーマンスか、その詮索は無用のようだ。静かに結晶世界に身を沈めることで精神に不思議なパワーが涌いてくる。

INFORMギャラリー TEL:(076)221-1722


SUMAKO 安井寿磨子展

2002年9月4日(水)〜9月10日(火) G-WING'Sギャラリー(石川県金沢市)

「雪ひら」の横に立つ安井寿磨子
「赤い実あそぶ」
「揺れる道」

大阪を中心に全国で多くの個展を開いているが、金沢のG-WING'Sギャラリーでは3回目。「祖父が富山県の出身なのですが、もしわたしが金沢に育ったとするなら、細かい仕事が好きですから、蒔絵か友禅の方に進んでいたかもしれません」、大阪生まれ(1959)の大阪育ち、大学(大阪芸術大学美術学科)も大阪だから基本的には大阪を出たことはないのだけれど、「金沢は好きですよ」と社交辞令も忘れない。

この世界で独り立ちしていくのは実にたいへんなこと。学窓の同期(7人ほど)で現在も続けて活躍しているのは安井だけだ。それには理由が当然ある。精緻であるが優しさとあたたかさをも合わせもつ独自のタッチが支持されているのはもちろんのことだが、「若い時はつかみどころがない、とよくいわれました」そんな性格・雰囲気がうまくリンクして、いい意味で説得力を増していったのかもしれない。手彩色(エッチングに色づけをする)にパステルを初めて用い、色彩に凛々しくも淡い拡がりを与えた。10年ほど前に確立させた技法だ。描くテーマも変遷してきた。「最近は植物。人物の描き方も変わってきました」。今回のテーマは"秋のけはい"。36点の好感の持てるタイトルが与えられた作品が並ぶ。

また、安井は装画作家としても有名で、村上龍、藤本儀一、中島みゆきなど多数の本の装画を手がけている。自身の画集も『鰭の痕跡(ひれのアト)』など3冊が刊行されている。

G-WING'Sギャラリー TEL:(076)238-0788


DOCUMENT 小野忠弘 ―美は危機を内蔵する―

2002年9月1日(日)〜11月24日(日) ガレリア GALLERIA art gallery(石川県河内村)

会場風景
ホネイロの砂漠
(970×1300 1997年)

美術評論家の針生一郎が1957年の美術手帳132号に『現代作家小論 小野忠弘』を書いている。一部を抜粋要約する。「こういう作品を生み出す人間は、現実のアクチュアルな問題にいつも鋭敏な眼をむけている、たくましい批評精神の持ち主にちがいない。こういう作家が、地方に根を下ろしていることがわたしをおどろかす。視野の狭さ、思想の低俗さ、習俗との妥協、派閥的なあらそい、地方名士としての権威、かかわらず中央画壇へのコンプレックス―そういうものが地方在住作家の芸術をすっかり錆つかせてしまっているが、小野忠弘の仕事にはそんなものがみじんもない。のみならず、どんな外国美術にもまったくコンプレックスなしに対決できる点で、この作家ほど頑強な個性はそうざらにはない」。日本よりヨーロッパで早くに評価を得た。

ラ・ファム
(419×319 1980年)
エロスと泪
(410×319)

小野忠弘は1913年青森県弘前市に生まれた。東京美術学校彫刻科を卒業後、1942年福井県立三国中学校(現三国高校)に図画担当教諭として赴任、定年後は福井大学工学部の非常勤講師を勤め、2001年8月に他界(享年88歳)するまで福井県三国町に住んだ。

小野とガレリアのオーナー村上弥生との出合いも面白い。1993年に小野の絵をはじめて見た村上は何度も手紙を書くが取り合ってもらえず、あげく生まれてはじめての詩を書いてやっと面会がかない、画廊と作家の付き合いが始まった。そしてここに『孤高の前衛芸術家 小野忠弘 追悼展』が企画されるにいたった。

ガレリア GALLERIA art gallery TEL:(0761)93-0403


川村嘉久「最後のアトリエ」展

2002年8月28日(水)〜9月2日(月) ギャラリーアルトラ(石川県金沢市)

制作中の川村嘉久(2002年7月)
スペインの踊り(2002年、F15)
昇子転生(2002年、F3)

この9月に92歳になる。石川県津幡町の出身、在住で、「耳がちょっと遠くて背が少し曲がっただけ。体はいたって元気」。今回の個展にはF3〜6の小品を中心に35点の作品が展示されているが、ほとんどがこの4月以降に描かれたもので、健筆さを実証している。

子どものころから絵は好きで際立って上手だった。20歳で京都へ染めの下絵の修業に出る。30歳を過ぎて昭和18年、たまたま応募した京都市美術展に入選、話題になる。その後召集され、金沢の第9師団に入隊、敗戦。郷里に戻り自宅の2階から「ボーッと馬が通るのを眺めていた」。で、「絵でも描くか」。絵の具もままならないころではあったが、14色の油絵の具と紙があった。その時描いた『昼下がり』と『静物』の2点が現美に入選。4回目には無鑑査になり、「絵だけでやっていこう」と決意。「食えないころはカンバンを描いたりもした」が、なんとかやってきた。副題に「最後のアトリエ展」とあるが、ほんのジョークであろう。

「下ぶくれの女がいい」「女は太ってないといけない」。川村の描く人形たちは確かにふくよかではあるが、表情や目のかがやきは鋭く、独自のファンタジックな世界を醸し出している。

ギャラリーアルトラ TEL:(076)231-6698


清水錬徳遺作展

2002年8月22日(木)〜9月3日(火) ギャラリー・千代堂(石川県松任市)

清水錬徳の作品群
「冨士」
「八ケ岳新雪」

力強い筆勢と色彩、一見荒っぽく見えるが、風土に根を下ろした迫力と情熱を伺うことができる。清水錬徳は独立フォービズム正統派の画家。その成果をいかんなく発揮し高く評価された遺作が展示されている。

清水錬徳は石川県小松市の生まれ。33歳でフランスに渡り修業。戦後、独立美術協会会員、1995年死去。晩年も現場写生を貫き山岳風景を描き続けた。作風はヨーロッパ色だけでなく日本の精神性をプラスしたのが特色。

山岳や花に見る写実の迫力は技術だけではなく自然との共鳴が裏付けとなっている。「八ケ岳新雪」は鋭く切り立った岩肌を大胆に白を使うことで自然の激しさを活写している。「冨士」は濃い茶色で岩肌を塗りつぶし、点在する青を描くことでバランスをとっている。

清水の作風は中川一政の筆致と比較される。が、中川と違うのは写実を超えた技法があるからだ。それはヨーロッパ的描線と水墨画の情緒的な要素を取り入れているからである。

ギャラリー千代堂 TEL:(076)275-0305


石川一陽会展

2002年8月16日(土)〜8月29日(金) ひろた美術画廊(石川県金沢市)

会場風景
大場吉美「丘の上の人」
大場吉美「ヨコタワル」

絵画は決して平面だけではなく、立体感をも備わっているとつくづく思うことがあるが、それを実体験した展覧会に出会った。それは空間のなかでオブジェが静かに生動し、時には激しく躍動し、見る側の視覚に鋭く働きかける。石川一陽会代表大場吉美の作品が応えてくれた。

この会派は具象から抽象まで多彩な表現形式で美を追求している。今回の会員展でも自由な創作が多く出展された。大場の作品「丘の上の人」「ヨコタワル」は、人体を個体として表現し、いろいろなイメージを喚起させる仕掛けをしている。このオブジェは考える人であったり、オナニーをしている人であったりする。

和泉洸「スペイン・ゴルドバ たそがれ」

安田淳の「もうひとつの現実」は赤と黒がタテに幾何学的な図形で構成されたもので、人類の歴史を表現していると言う。

和泉洸の「スペイン・ゴルドバ たそがれ」は林立する木々の間から漏れる灯火、池の水面を飛び交う渡り鳥、落ち着いた色彩で情況を描いてみせる。出展者は他に入口ふじ子、浮田正樹、酒井幸雄、州崎幸七、竹田明男、中本邦夫、野中未知子、判三教ら。9月19日からの東京都美術館で開かれる18回本展に向けた意欲作に研さんを深めていく。美術王国石川の腕の見せ所である。

ひろた美術画廊 TEL:(076)240-0007


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