荒川文彦展2002年9月27日(金)〜10月6日(日) ギャラリ−萩(石川県加賀市)
「作家ではなく職人でありたい」。山中塗の未来を担う日本工芸会のホープ荒川文彦はその技を磨く腕に自信を深める。漆は地味な仕事だが日々研鑚から生まれた作品は深かくひとの心を打つ。 荒川は日本工芸会正会員で山中漆器伝統工芸士。日本伝統漆芸展に連続入選、地方展では2度石川県知事賞を受賞。今年は全国展で菓子盆「陽環(ようわ)」が東京都教育委員会賞を受賞、脚光を浴びた。40歳、漆文化の未来を担う。 展示の作品は溜塗深型椀や彩塗呑盆、銘々皿などいわゆる「まるもの」が多い。が、伝統の技が遺憾なく発揮され、色・艶・形とも極上の感がする。材質は木だけではなく牛皮などを使ったモダンな作品もあり、新しいカジュアル的なものにも挑戦している。現代の工芸士の苦心が作品に組み込まれている。 「材料は狂いがなく、長持ちする欅(けやき)を使っています。漆は生き物です。出来上がったものにはそれぞれ表情が違います。それをどう作っていくか、それが技なのです。この過程が一番緊張します」。荒川の姿勢はいつも職人である。 ギャラリ−萩 TEL:(0761)73-2714 |
〜豊かな四季・メルヘンの世界〜 開田風童 童画展2002年9月8日(日)〜9月29日(日) アートギャラリーミューゼいずみ(石川県金沢市)
一部をのぞいて、どの絵にも4、5歳ぐらいの男の子と女の子が自然の中に2人登場する。子どもたちは外連味のない可愛い表情で描かれていて、眼には子ども特有の少しわがままな意志の強さもこめられていて、それが開田の絵の魅力となっている。男の子のモデルは開田自身の次男で、事業に思い悩んでいたころ、当時4歳だった次男の燥(はしゃ)いで笑いころげる姿に、そんな悩みもふっ飛んでしまった。女の子は幼い開田の妹だ。 雅号の"風童"は、「風や自然の中に遊ぶ子どもをイメージし気取らずなるがままに」という意味でつけた。童画を通して「自然の大切さを子どもたちにわかってもらいたい。自然を大切にするということは、人の気持ちも大切にするということでもあるのですから」と。 母が唱い、兄弟がいて、友のいる。里山の自然の中でのこの風景は、開田と同世代以上の者にとって、まさに日本の故郷の風景なのだ。 開田風童は1950年福岡県太宰府市の生まれ。東京デザイナー学院を卒業後デザイナーとして活躍、童画を描きはじめたのは1988年からである。 アートギャラリーミューゼいずみ TEL:(076)242-2442 |
多田祐子展2002年9月13日(金)〜9月29日(日) ギャラリー点(石川県金沢市)
「絵画には詩もあり、音楽もあります。私の場合、色彩は詩であり、絵の構成は音楽です」と洋画家多田裕子は語る。エネルギシュで歓喜の画家、悦楽の創造者と評す人もいる。 多田は宮城県生まれ、ヨーロッパ遊学を経て20世紀世界芸術賞など数々の国際展に入賞。現在タイ国立シルパコーン大学客員教授。心象風景を自由に表現する洋画家で、ニューヨークやパリなど国際的に活躍している。絵画制作の一方、河名千絵のペンネームで3冊の詩集を出版するなど才色兼備の作家。 展示の近作52点のひとつ「カルカソンヌの青い月」は南フランスでの体験。青い空に照らし出された中秋の名月に手を差し伸べる造形化された女性、そのコンポジションは限りない創造を見る側に与えてくれる。 「雲の上では」は青い色をバックに左右上下に乱暴に描かれた線、一見して抽象画に見えるが、空間に分析的なイメージが豊かに展開されていて意外に写実の世界となって迫る。絵のなかに言葉があるからであろうか、詩人としてのポリシーが映る 「心に浮かぶものを絵という手段で表現するには、言葉とリズムが画面に出ていればいいのです」。絵は楽しく、が鑑賞の秘訣らしい。 ギャラリー点 TEL:(076)292-2140 |
「ふ」展2002年9月6日(金)〜9月30日(月) ギャラリ−INAX金沢(石川県金沢市)九谷焼作家の稲積優佳が陶芸の概念を超えた創造の世界を演出した。 寺院なのか、茶一色の土で幾何学的に格子に組んだ5層のタワー。内部には空間があり、そこに光が一灯見える。ただ静寂があるのみだ。まさに無言歌にじっと耳を傾けたような気分になる魔か不思議な幽玄の世界である。人間の誕生と死と再生を、このオブジェからこう読みとることができる。 「ふ」展とは「不」と「不」、「存在するのか、存在しないのか、を探ること。そして存在しないものを求めていくこと、つまり心の中に在るものを見つけだすことです」。自分の中にあると思える何かを探る、その行為が稲積の陶芸なのである。
稲積は石川県立九谷焼技術研修所修了。「さくら さら満開」展や一昨年には世界工芸コンぺテイション金沢で入賞。新しい九谷焼作家の誕生である。 ギャラリ−INAX金沢 TEL:(076)262-1701 |
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一創会北陸支部小作品展2002年9月18日(水)〜9月23日(月) 画廊プラザ樹(石川県金沢市)
平成14年7月、88歳で亡くなった洋画家平口幸枝の最後の作品を所属した一創会北陸支部作品展で展示している。今回は2点、最も得意とした花と蝶をモチーフに楽しい絵に仕上げている。「植物でも動物でも、とことん観察し一気に描き上げます」。生前の言葉である。 確かに観察時間が長く、その集中力は並大抵ではない。描く対象物を読み取る鑑賞眼は鋭く、女性ならではの繊細さもある。が、構図は大胆で、大きく描く。色彩も原色で明るい。出展の「花と舞」「コラージュ 花と蝶」はバックを曲線で描き、蝶が花の周りを飛ぶ姿は舞うがごとく、律動感をもって迫る。 晩年は腰痛に悩まされたが、不自由な体にもかかわらず制作に打ち込んだ。亡くなる1カ月前、一輪の花をいろいろな角度から一筆で描いている。その数はスケッチブック3冊に及んだという。「その描写にはすごみすら感じた」と仲間は言う。 平口は福井県敦賀市生まれ。東京の美術専門学校を卒業、一陽会特待賞受賞、一創会に移り石川県現代美術展最高賞などを受賞した。40代のころ日本画から洋画に転向。ご子息の建築家平口泰夫が11月に金沢市で念願の「親子展」を開く。建築美と絵画の競作だ。 同展では支部長の寺西武久ら17人が来年1月の東京本展につながる風景や人物、静物などバラエテーに富んだ作品を展示している。平口は石川県内女性画家の重鎮であり、死が惜しまれる。 画廊プラザ樹 TEL:(076)262-6276 |
有岡成員クラアフト展2002年9月13日(金)〜9月25日(水) グリーンアーツギャラリー(石川県金沢市)
「工芸をしていて木ほど奥深いものはないと思います。この道に入ったら抜けられません」。とことん木と漆にこだわる木工芸作家有岡成員の無我の精神がさわやかだ。 木のぬくもりが伝わってくる作品がギャラリーいっぱいに約120点。椅子にもなる花台や衝立になる机などは遊び心のある作品として、使う側を楽しませてくれる。木の樹皮を使った大皿や黒い柿の木の模様、栗の木目など自然の風合いを生かしたものは芸術作品の域に達しているといえよう。 作品は日常生活で使うものを重点に制作しているという。木肌が出ているお椀は優しい器となり、白いご飯は食欲をそそりそうだ。木の重さや硬さに合わせロクロを手加減して回すから、お年よりや小さい子供にも無理なく使える器になる。「使う人の身になってものづくりをしている」と語る。 有岡の出身地香川県は石川県と並んで漆芸の盛んなところ。材料に使う樹木は自分自身が山に出かけ丸太で手に入れ、工房で製材する。乾燥させた木を荒引きし屋内に保存して漆を塗り研磨していく。 一途に木と向き合う有岡は全工程を自分ひとりで行う。これが木工芸家の信条であろう。 グリーンアーツギャラリー TEL:(076)247-8072 |
古川歩 陶展 〜花と食の器〜2002年9月14日(土)〜9月20日(金) G-WING'Sギャラリー(石川県金沢市)
古川歩(あゆみ)は1969年富山県高岡市の生まれ。画家である父の古川通泰(みちやす)とともに、現在は富山県八尾町桐谷の廃校になった小学校をアトリエ(歩は校舎、通泰は講堂)にし、住んでいる。1996年、空間造形富山'96で優秀賞(作品 ボクハココニイマス)を受賞してからのことだ。 織部風の緑の色彩と、力感のある独特の造形が魅力的で、「釉薬は"うなぎ屋のタレ"みたいなもの、基本となるベースを造って、それに色、鉱物を足していく」。その"うなぎ屋のタレ"がミソで、植物の灰やら何やら、企業秘密も少々。
感心させられたのが、値段。作家ものとしては圧倒的に安い。ぐい呑みやカップなどは2,000円。さすがに"小さな赤くて丸いマーク"がたくさんついている。「作る数が多いですから」と謙遜するが、相変わらず時には無鉄砲とも思われる作家モノの値段に首をかしげることの多い中、いい意味で考えさせてくれる。他の作家たちも少しは見習ってほしいものだ。それが美術工芸界の活性化につながる、実は近道に思えて仕方がないからである。 生活に密着した約250点の"花と食の器"が展示されている。 G-WING'Sギャラリー TEL:(076)238-0788 |
玄の会小品展2002年9月6日(金)〜9月18日(水) ひろた美術画廊(石川県金沢市)
第64回一水会展の入賞・入選者で石川県内から山本勇(石川県小松市)が最高の一水会賞を受賞した。山本は石川県小松市在住の中堅・若手洋画家でつくる「玄の会」のメンバー。作品は半具象の人物画が多く、強烈なタッチで人間の内面を追及する。風景画はイメージが奥深く明るい色彩を好み、小品展でも「桜城址」「春爛漫」(6号)を出展している。 「玄の会」は地域文化の振興を目的に20年前結成された。いろいろな会派の作家が集まり所属する会派にこだわらず個性を競うもので見応えがある。同展には山本の他に五十嵐陽子(二紀会)、生地京子(同)、安田淳(一陽会)、西房浩二(光風会)、平林じゅんいち(創造美術)、大橋由美子(無所属)、本田徹太郎(同)、益田恭行(同)、鈴木治男(同)が出展している。 牛をテーマにしている平林の「日本海」は荒海の砂浜を掛け走る猛牛三頭、力強い構成に圧倒される。安田の「もうひとつの現実」はシリーズもの。平面に黒をバックに赤の角がもうひとつ世界を創造させる。今回は立体感を出し、赤と黒に白の色彩を出して未来を暗示する。 写実から半具象、抽象まで幅広く、メンバーの作家意欲は旺盛だ。山本の受賞はさらなる刺激になるだろう。 ひろた美術画廊 TEL(076)240-0007 |
関屋賢次洋画展2002年9月6日(金)〜9月12日(木) ひろた美術画廊(石川県金沢市)
神仏への信仰、祈りの絵画は、見る側を少なからず癒してくれる。関屋賢次はヒマヤラ、ネパール、チベットへと出かけて行き、山への信仰心を描き続けている。そのこだわりはただならぬものがある。 「神への捧げもの」(60号)はヒマラヤの山々を背景に、手前の静物はその地の信仰の重さと尊さを表現している。赤と黄色が鮮やかなシルクのテーブル掛け、赤ワインに一片のパン、祈りの鐘、動物のしゃれこうべ、くだもの、などのお供え物が描かれている。神への捧げものを関屋は克明に丁寧に描写することで「祈りと癒し」をわれわれに与えようとしている。 関屋は石川県金沢市出身。光風会の西房浩二に師事、平成13、14年に石川県現代美術展に入選。現在、石川県松任美術作家協会会員。繊維会社で長年勤務し、世界の色彩布地を見ており、その経験が絵に生かされている。「心に残る作品づくりを目指したい」という関屋に気負いがない。 ひろた美術画廊 TEL(076)240-0007 |
高道 宏 写真展 「そよ風のパリ」2002年9月10日(火)〜9月15日(日) 浅の川画廊(石川県金沢市)
1936年、富山県砺波市の生まれ、東京都八王子市在住。多い時は年に3回、3〜4週間パリを拠点に活動する。今回の個展は1991年〜2000年、20世紀最後の10年のパリの風景を撮影したもの。モノクロ半切43点の展示。 1956年。「それまでは絵描きになろう」と思っていた高道青年は、日本の画壇に疑問を持ち、アメリカの西海岸に渡り、独りヒッチハイクでニューヨーク近代美術館へと向かった。絵画を見て「日本ではやはり絵をやめたほうがいい」と思った時、「写真に出合った」。美術館のスタイケンが企画した『The family of man』(われら人間家族)がそれで、東京にもどり写真家・西山清に師事し、「基礎ができるまで発表はしない」と、1970年まで待った。 テーマは、心臓の手術をした1976年までが"風俗や暮らし"で、あとはずっと"風景"。1回の個展に5〜10年かかる寡作な作家だが、「ヨーロッパ人のようなアタマ(一徹な考え方)」だから、前の個展とテーマは変わっていない。ヨーロッパの個展では"日本の風景"、日本ではエッセイ感覚の"パリの風景"が被写体だ。時代を超えてきた"そよ風"、そんな適度な重さを感じさせる写真展だ。 浅の川画廊 TEL:(076)222-5043 |