花岡隆陶展 ―白と黒―

2002年10月10日(木)〜10月16日(水) 石川県金沢市(G-WING'Sギャラリー)

花岡隆(はなおかゆたか)、50歳
黒陶台皿(左)と黒陶石目高台皿
左から黒陶片口、粉引窯変片口、
黒陶片口、粉引窯変片口

花岡隆は器作家である。食の器、ときおり花の器、生活の中にある美術、これにこだわり続けている。「はじめたころ、皿や鉢、丼といった器づくりは職人の仕事というイメージがあったから、いわゆる芸術的な作品なども創ったりしたけど、日本は食に関して非常に多彩な国で、それに併せて進歩してきた器は日本が誇っていい文化と言うことに気付いた。そして今、一般の方々も気付いて、見直してもらっている」。

花岡の作品が雑誌にたびたび登場するのは、シンプルな白の"粉引き"や渋い黒の"黒陶"が、季節を超え、現代のお洒落な食の空間にすんなりとマッチするからだろう。「薀蓄の一つや二つも語らなければ許さんぞ」といった北大路魯山人の世界とも基本的には通じるのだが、堅苦しさはない。食材や花にやさしい愛情などを注いで、気の合う仲間と呑みながら食べながら、夜を通して語り合う、そんな按配だ。

花岡は小樽生まれの横浜育ち、20年前から静岡の修善寺を居とする。50歳。今がいちばん油の乗った"食べごろの時"。

これまで東京が中心で、関西方面・北陸ではじめての本格的な個展だ。  

G-WING'Sギャラリー TEL:(076)238-0771


法邑利博展

2002年10月6日(日)〜10月14日(月) グリーンアーツギャラリ−(石川県金沢市)

二紀会の法邑利博
幻想的な「鏡の中の私」
不思議なイメージの「対話」

陶板画に思索と試行を重ねた法邑利博が個展を開いている。同時に展示した水彩画も豊富な色彩感とリズム感に満ちている。「30年間勉強してきて今回はなにかいいもの、例を挙げれば九谷焼にはないもの、制作してみた」と語り、成果があったと自負する。

二紀会の同人で安田火災美術奨励賞、現代美術展最高賞などを受賞、いま円熟の作家である。幻想的な絵画と斬新な造形美が特徴だが、挑戦と試行を繰り返し画業に励む姿勢は人一倍強い。

展示は2年間に描き挙げた60点余り。夢の世界を披露した「鏡の中の私」(水彩=6号)は全体の構図や構想はなく、思いついたまま描いていくと言う。顔、花瓶、靴、ラッパ、スタンド、カバンを小さく、細かくいろいろなモチーフを画面いっぱいに展開していく。「すごくチグハグでしょう。しかし、それをいろんな色でまとめていきます。そうすると絵のドラマが出てくるのです」。

陶板もそうだ。「対話」(縦15センチ・横40センチ)は天使のような人物を色分けすることで会話が進行していることを表現している。この画家に一貫していることは鋭い感性とスケッチのうまさが活きていて完璧な画面を作り挙げている。

グリーンアーツギャラリ− TEL:(076)245-7222


今村幸治郎の世界展

2002年10月3日(木)〜10月15日(火) ギャラリ−ノア(石川県松任市)

夢の世界を描く今村幸治郎
夢の工場[submarine](サブマリーン)
ハートが降る「unburella」

これほど愉快で楽しい絵があるだろうか。眩しいほどの色彩で描かれた作品には夢がいっぱい詰まっている。「夢というのは浮遊の世界にいることではないでしょうか。ですから、私の作品はすべて上から見たものとして描いています」。こどものころの夢、若いころのロマンチックな夢、そんな懐かしい夢を踊っているように、浮いているように、魔法使いのように表現している。

今村幸治郎は特異な作家だ。武蔵野美術大学油絵学科を卒業。が、油は金も掛かるし後始末が面倒だとデザイナーに転向、色エンピツでの画作で独自の世界を創った。リトグラフの画集やグッズは海外でもファンが多い。

今村は500本という驚くほどの数の色エンピツで夢の世界を描く。「unburella」(アンブレラ=雨傘)という作品、空からハートの雨粒と赤い傘が降ってくる様を描いている。つまり愛が、恋がどんどん迫ってくるという一種の心象風景を描いたものだ。

「submarine」(サブマリーン)という題名がつけられた作品は飛行物体に見立てたくじらのオブジェで、腹の中にはレコード、ラッパ、潜望鏡、起重機、ボートなどが細かく描かれている。こどものころの夢が海中を散歩しているかのようだ。

どの作品にも古い車シェトロンが走っている。空想の世界、SFの世界懐古の世界は大人でも楽しめる。その世界がここにある。今村は語る。「不器用だし、面倒だし、性格的に画家に向いてないかもしれないが、何事でも集中力があるので、こんな絵を描くことができたのでしょう」と。

ギャラリ−ノア TEL:(076)276-4486


加茂幸子個展

2002年10月4日(金)〜10月14日(月) 美術サロンゆたか(石川県金沢市)

「おうちへ帰ろう」の羊飼いの少年
と加茂幸子
「友達になって」(表)
「友達になって」(裏)

テラコッタ粘土で制作こどもたちの表情が可愛いらしい。彫刻の概念を超えた展示の塑像は物語性があって童話の世界に導かれているように感じる。男の子と女の子の追っかけっこ、羊飼いの少年、大きな魚と会話をする男の子、どれもぬくもりのある作品に仕上がっている。

加茂幸子は埼玉大大学院で美術教育を専攻、絵の先生を目指したが卒業論文が彫刻、中国は唐の時代によく見られる唐三彩に魅せられ塑像の世界に入る。素焼きの粘土に彩色したテラコッタの彫刻を研究、この分野でよく知られる昭和会展などで活躍している。

「友達になって」での追っかけっこのこどもを見ると、表はスカートの少女が男の子を手招きしている姿、男の子がその少女を追うが、裏側を見ると一匹の犬が男の子を引っ張っている。ほほえましい光景だ。

「これからも子どもの情景をモチーフにしたい」と言う加茂は30歳、夢膨らむ世界をこれからも創造したいと情熱を燃やす。

美術サロンゆたか TEL:(076)232-1341


若島孝雄漆芸展

2002年10月8日(火)〜10月14日(月) 金澤画廊(石川県金沢市)

塗師・若島孝雄
「笹絵喰籠(ささえじきろう)」
(乾漆 麻布)
「松蒔絵煮物椀
(まつまきえにものわん)」
(ケヤキ)、
「縁黄漆水蒔絵盆
(ふちきうるしすいまきえぼん)」
(縁アテ曲物)

「安かろう、悪かろうは産地を潰す一番の近道」、輪島塗器全体のことも考えなくてはならない立場の若島は、フーッとため息をつく。全国の塗りの産地が手間と費用のかかる"ウルシ"を使用しなくなって、衰退の道を歩んでいる。だが、輪島は"ウルシ"にこだわり続けてきた、間違ってはいない、しかし「(塗りに携わる人の)3分の1が居なくなった、若いのから」。指物師が居なくなると箱物が造れない、曲師が居なくなると曲物が造れない。伝統工芸界全体のピンチでもある。これまで持ったことのない危機意識が芽生えた。「現代人のこれからの生活様式にマッチしたものを造らないといけない」。

熟練の技術者が何度もなんども丁寧にていねいに塗り込んだ漆器=JAPAN。美しき芸術。『笹絵喰籠』は菓子を入れる器で、麻布を使用した乾漆仕上げ。喰籠は古来よりあるものだが、意匠、デザインには新しい感覚が織りこまれている。また、『水蒔絵盆』の縁には黄漆をあしらい、新と旧との融和を求めた。

1935年、若島孝雄は塗師の家に生まれ、塗師になった。1978年、全国漆器展最高賞"農林大臣賞"を受賞。1986年"日本工芸会正会員"の認定を受けた。そんな重鎮が、「今でも、漆にはかぶれますよ」と笑った。

金澤画廊 TEL:(076)262-7227


ART SCENE 2002 vol.2 加賀谷武展

2002年10月5日(土)〜10月14日(月)  ギャラリー那珂(石川県金沢市)

加賀谷武とギャラリー那珂(なか)
のオーナー中川尋子
「空間生態・KANAZAWA1」2002
「空間生態・KANAZAWA2」2002

「下手なことを質問すると、とんでもないことに」、そんな作品と作家の風貌。とはいうものの、作品を正面からじっと見ても、斜めから穿って観ても、はっきりいってよく解らない。とその時、ジョン・ケージ(アメリカの20世紀を代表する作曲家)のある作品のことが頭をよぎる。舞台の中央に1台のグランドピアノ、椅子に掛けたピアニストは4分33秒、なんの音も発しない、1952年に初演され『4分33秒』と名づけられた、あまりに有名なあの作品(出来事?)のことが。

インスタレーション。美術界において、観客の考え方をも巻きこんで概念芸術としての空間を演出する美術作品、意識の魁(さきがけ)になったのが『4分33秒』だったのではないのだろうか。加賀谷の作品は、まさにインスタレーションなのである。別のいい方をすれば"四次元アート"なのである。

「何十項目のことを考えて創る連続性の中の空間の表現、しかし購入した方は自分の空間の中で自由に飾ってくれればいい。何本か床に置いたって構わない」。マチエールには微妙なやさしさ、あたたかさといったものもさりげなく存在する。

加賀谷は1932年、富山県小矢部市生まれ。金沢美術工芸大学で金工を専攻、彫刻に興味が移り、インスタレーション作家となる。62年より東京在住。

ギャラリー那珂 TEL:(076)260-4115


四季・山本勇 油彩画展

2002年10月4日(金)〜10月16日(水) ひろた美術画廊(石川県金沢市)

薫風(白山) F50
新雪 SM
緑風 SM

つい先日いい報せが届いた。第64回一水会展で、『遠い旅』が"一水会賞"を受賞した、というものだ。この4月に「迷ったけど、3人の子どもも独り立ちしたし」永年勤めた大手機械メーカーを希望退職し、念願の絵画教室を11月にスタートさせる、そんな矢先のことだった。山本は、1947年福井県に生まれ、石川県小松市育ちの55歳、「とても弾みになります」と素直に喜ぶ。

美術大学の受験に失敗し就職したが、諦めきれず20歳の時、小松市在住の画家・松村秀夫の門を叩く。うまく仕事と両立させ、30歳を過ぎたころから現代美術展や一水会展で徐々に頭角を現してきた。絵のテーマは5年ごとに変えた。今年は"母"の4年目。前の5年が"自画像"、職場の同僚を通して企業戦士を描いた。その前は、まだ小さかった子どもたちを中心に"家族"を描いていた。次のテーマは「楽しく苦しみ決めます」。

独特のタッチは筆を使わずにペインティングナイフで描くことから生まれる。制作時間の8割は描く前の思索(これがアート、と山本は言う)に充てる。

今回はギャラリーのしゃれた企画展で「心に残る身近な風景をスケッチした」絵が並ぶ。

ひろた美術画廊 TEL:(076)240-0007


内藤幸子展

2002年10月1日(火)〜10月13日(日) メロメロポッチ(石川県金沢市)

元気で多才な71歳、 内藤幸子(さちこ)
外国風景
(水彩、スペイン北部の田舎風景)
静物(油彩、F80)

1931年、神戸市の生まれ、71歳。40年前から金沢市在住、「雨ばかりだし、言葉は分からないし、はじめは落ち込んだけど、住めば都、今では金沢人より金沢が好き」。大の登山好きで、若いころはニコンFを持って山の花や景色を追った。「わたしは今ここで死ぬんだ」そんな経験が2、3度、スキーも朝飯前だったが、少々辛くなって絵を本格的に描き始めた。今ではもっぱらキャンパスを持っての山歩き。一方、両親がピアノをやっていた関係で子どものころからカンツォーネを習い、シャンソンもものにする。お茶も好きで楽の茶碗も焼く(今回8点展示した)。庭ではサツマイモなどを栽培し、ワインも巨峰で造ってしまう。毎週金曜日のマージャンも欠かさない。なんとまあ、多才というか多趣味というか、「今が、とても楽しいの」と屈託なく笑う。

ベルサイユ市の名誉市民で、フランスシャンティー城の現代芸術遺産にも認定され、海外芸術交流協会イタリア本部最高賞も受賞した。いわゆる絵の会派には属さない。

「たとえばこのコップにしても、じっと凝視めていると、コミュニケーションが生まれてきます。花もそうなんですよ、じっとしてお願い、そう言うとしてくれる。わたしが描くのはそういったもの」

10月6日(日)7PM。内藤自身のシャンソンとカンツォーネのライブを同会場で行なう。

メロメロポッチ TEL:(076)234-5556


戸出雅彦展

2002年10月2日(水)〜10月15日(火) ギャラリー点(石川県金沢市)

戸出雅彦
絵皿6
樹から7

絵皿や絵壷などの焼きもの28点とオブジェとしての陶立体7点が展示されているのだが、その焼ものすべてに四足のケモノが描かれている。オオカミのようでもありキツネのようでもあり、「自由にとらえてください。もとはイヌ、子どものころ飼っていたヤツ、けっこう怖いのもいた。うーん、イヌであり、恐怖心であり、‥‥自分自身でもあるのですが」

戸出は1964年、金沢市の東山の上絵師の家に生まれた。「こういうことをしたくて」金沢美術工芸大学(工芸・陶磁)に進み、三重県の焼物問屋でデザインをやり、1988年金沢市の卯辰山工芸工房の助手(現在専門員)になった。1999年、第6回陶芸ビエンナーレ鯉江良二賞を受賞。

産地の違う5種類の土をいろいろ配合を変えて焼いている。釉薬は九谷5彩に白、トルコ青、金、銀を使う。同じ釉薬であっても土によって仕上がりの色味はとうぜん違ってくる。「テスト、実験が作品」だ。陶立体は、樹に練った赤土の一片を何枚も貼り重ね、乾燥させ樹を取り、釉薬で色を着け焼いた。「自然に、創りたかった。今度は卯辰山の粘土を焼いてみます」

ギャラリー点 TEL:(076)292-2140


北陸創造展

2002年9月27日(金)〜10月6日(日) 加賀アートギャラリ−(石川県加賀市)

北陸創造美術会陶芸部の作品群
山崎甚太郎の「赤絵魚文角皿」
福島武山の「赤絵壷・薫風」

北陸創造展に出展した「赤絵魚文角皿」の山崎甚太郎は、自作について「魚だけを描いたのでは駄目なんです。まだまだ描き足らんのです。岩や藻も、それがうまく描けんのです。要は未熟なんですわ」と語るが、その言葉に裏はない。確かに白無地に5、6匹の魚がバランスよく描かれてはいるが余白が十分に生かされていない。そこが欠点だという。

九谷焼の重鎮で出展者の福島武山の「赤絵壷・薫風」は赤を流れるように渦巻き状に描いて一点の空白もない。反って白い部分が目立ち全体を引き締めている。武山の赤絵は濃い赤と薄い赤を描き分けて、その濃淡の華麗さが特徴である。

山崎は武山のようにその道で食べていく作家ではない。が、九谷に打ち込む姿勢は人一倍強い。赤絵は正確に細かく描くという根気のいる仕事である。今回の作品は美しく出来上がっているが、本人は納得しない。その心構えがいい。

今回は北陸創造美術会の陶芸部と日本画部、洋画部の合同展で、陶芸部の九谷五彩を用いた鮮やかな作品が目立った。陶芸はどの分野、会派でも「苦心」がいる仕事だ、と山崎は語る。

加賀アートギャラリ− TEL:(0761)72-8787


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