角偉三郎・稲場美和子二人展

2002年10月23日(水)〜11月2日(土) G-WING'Sギャラリー(石川県金沢市)

オープニングパーティで談笑する
角と稲場
角の合鹿椀に稲場が装花した
角の『壁板』

「この空間を自由に使ってください」、ギャラリーのオーナー中西憲治が2人の御大に申し出た。角偉三郎の母は"とき"といった。亡くなった時、角は詠んだ。「母 とき放たれて 何処まで行ったやら」。その話を聞いた稲場美和子は「それもらってもいい?」。今回の2人展のテーマはこうして決まった。

解き放たれた角は、新しい試みに挑んだ。漆を塗るのではなく"叩く"のだ。「手でつかんで、叩くことで漆の表情を表現したい。私にとって初めてのカタチ」。例えば『壁板』、「これは曲げものを造るときに捨てられる材料なのですが、あらためて真正面を向いて見るととても刺激的、たくさんの言葉を持っている。よし、そう思って漆とつなげた。長方形の壁の空間を少し歪めたい、そういう表現をした。塗ると技術が働く、材料に従ったわけです」。

「叩きつけられた漆を見て、できる限りの力で受け止めたい」。解き放たれた稲場は、応えた。「美女と野獣のコンビよ」、ケラケラ笑いながら。

角は、英国ヴィクトリア・アルバート王立工芸美術館が作品を所蔵(1986)するなど、個展や企画展をヨーロッパや日本各地で行い、稲場は、ステージやレセプションの装花――カーメン・マックレイ公演(1989、札幌)、日本文化週間(1993)、ゲラン社「チェリーブロッサム」(2001、パリ)など――で活躍している。

G-WING'Sギャラリー TEL:(076)238-0788


嵐直勝個展

2002年10月18日(金)〜10月30日(水) ひろた美術画廊(石川県金沢市)

光風会の嵐直勝
裸婦「今を想う」
古い街角の「青い空」

洋画家で光風会の嵐直勝は様々な試みを行っている。そのひとつとして混合技法で試行した「青い空」(6号)はイタリアのヴェネチュアの街角を描き、伸び伸びとした作品に出来上がっている。水彩画のようだが質感と立体感がある。油彩かと思うと色がどぎつくない。アクリルも加え穏やかな色合いを出している。

「秘密はガーゼです。壁に絵筆を走らせるように描くのです。水彩では軽いし油彩は重い。その中間的な色合いを出すためにガーゼを使ったわけです」。明快な答えである。30年のキャリア、模索の歩みがこの作品に表現されたといってよい。

嵐は松任市在住。ここ数年は東京・銀座、新宿で裸婦の大作(100号)を発表し現展などで受賞している。今回は裸婦の小品のほか、フランスのシャルトルやパリ、イタリアのヴェネチュア、フィレンツなど古い街並みの風景も展示した。

裸婦「今を想う」はシルクスクリーン。しっかりデッサンされた裸婦、その影のようにもうひとりの裸婦が浮き上がって薄く描かれ、みずみずしい叙情性を画面に漂わせている。

「生意気な言い方かもしれないが、少し芸術性が抜けた感じのものを描いていきたい。絵に説明のいらない具体的なもの、ということでしょうか」。画風に楽しさが加わってきたようである。

ひろた美術画廊 TEL:(076)240-0007


駒井千華個展

2002年10月19日(土)〜10月27日(日) 美術サロンゆたか(石川県金沢市)

たなごころ 6P 油彩
回想 6F 油彩
鍵盤 5M 油彩

個展を開くたび、「変わったら変わったといわれ、変わらなかったら変わらないといわれる」、画家はそういった宿命を持っている。「いかにして自分の精神を強く持つか」が問われるわけだ。美術サロンゆたかのマネージャー渡辺は続ける。1997年に富山市で開かれた個展を初めて見て「不思議な魅力、ほっとするもの」を感じた。前回の金沢での個展は98年に同ギャラリーで開いたのだが、4年たって「育成させてあげたい作家」は、自分の個性・特徴は変えず、いい具合に進化していた。

『たなごころ』というタイトルがついた作品には、見る者をドキリとさせる何かがある。「数年前にメキシコを旅行したときに、みつけた人形です。だれかの手によって作られた世界中に1つしかないものなのですよ。天使なのですが、いろんなことを感じさせてくれる。それらの意味を一つひとつみつけながら、描いたものです」。今回の展示は5M〜6Fと比較的小さな油彩の作品に、色を付けたデッサンが数点加わった。しばらく見ていると、たしかに"やすらぎ"のようなものが伝わってくる。

駒井千華は1970年金沢市に生まれ、96年に金沢美術工芸大学大学院を修了。修了制作は金沢市が買い上げた。金沢と富山で個展、2000年・01年、第4回・5回燦星会。

美術サロンゆたか TEL:(076)232-1341


越前やきもの展

2002年10月18日(金)〜10月23日(水) グリーンアーツギャラリー(石川県金沢市)

作家の北島重光
5年にひとつという作品「春風文花生」
3層の「花器」

越前焼の復興を目指し、手掘りの土を使った「やきもの展」。作家の北島重光は、ゆかりの地福井県鶉村(うずらむら)波寄の出身。力強く心温まる作品群、なによりも生動感があふれており、焼き物に人生をかけている作家根性に好感がもてる。

越前焼は壷や鉢もの、酒器など生活雑器が主。古くは5世紀ごろの須恵器にはじまり6大古窯として栄えてきた。北島の作品はその伝統を受け継いでいる。高校で美術教師を勤め、7年前に退職し焼き物に専念した。教師時代に油絵から転身、美的感覚に優れたものが見える。

花器2点に注目した。ビードロといわれるガラス状の光を放つ作品は「しっかりと焼き締めてあります。このような器は5年にひとつしか出来ません」と、自信のほどを語る。

もう1点は耳が3つある器、3層になっているのが斬新だ。これもガラス状に焼き締めており、その風合いは「雅」の言葉が合う出来栄えだ。やきものにこだわった練達の技であろう。

グリーンアーツギャラリー TEL:(076)245-7222


絵画二人展

2002年10月17日(木)〜10月22日(火) ギャラリーノア(石川県松任市)

画家を目指す二人
大梧淳子の「童歌」
本多隆之の「稲」

青い寒冷色で描かれた150号の大作「童歌」はまさに妖怪の世界。「ゲゲゲの鬼太郎」の漫画家水木しげるの世界を思い起こさせる。深い山道を和服の女性が一人、背を向けて歩く光景は怪しい雰囲気を醸し出している。作家も女性。私の自画像みたいなものです、いう大梧淳子・21歳。

「生まれが今庄(福井県)の山村で、伝説や昔話の多い土地。こどものころよく聞かされた話をイメージして絵にしました」。色合いは未完成なところがあるが、細部にわたってデッサンに変化があり絵画の本質を心得ている。

本多隆之の「稲」(F6)は月夜に輝いている1本の稲穂を描いている。バックは無数の光線、金箔を散りばめて絵にインパクトを加えている。真夜中に見た稲穂の生命力に心が打たれたという本多は24歳。「絵に迷いがあった時、この光景が私に力を与えてくれた」と語る。

意欲を燃やす若い二人のテーマは「色彩に対する心の表現」。画家として前進するためのプログラムを歩んでいる。ともに金城短期大学美術学科油絵コースを卒業。円地信二、林可耕らに師事、絵画作法をしっかり学んだ。

ギャラリーノア TEL:(076)276-4486


篠原猛史 pour water over the sky

2002年10月10日(木)〜10月27日(日) インフォームギャラリー(石川県金沢市)

pour water over the sky vol.002、
vol.001、vol.5
pour water over the sky vol.06
pour water over the sky vol.3

篠原は1951年京都の生まれ。日本が学生運動に揺れていたころ大阪芸大に入り1973年に卒業した。運動に関わったわけではないが、同時代を生きた者として何かが芽生え、刻まれたことは否めないだろう。一方70年代のアートシーンといえば、コンセプチュアル・アート(概念芸術)が出現したくらいで、現代美術の倦怠期にあたる。1980〜81年アメリカに留学していた折、いわゆる"環境破壊"を目の当たりにした。大げさにいえば、そのとき篠原は己の目指すアートの方向を決めたのかもしれない。

1993年に発行された画集『消えた森』には、作品に混ざって篠原自身のパフォーマンス風景がアートとしていくつか収められている。枯れ枝や落ち葉を集め、よその場所ヘ行って勢いよく飛び散らす。そぐわない思い出なんか吹き飛ばし、どこかに還してやろうとしているのか。それにしてもどこへ?

活動の拠点をベルギーから京都に移して、主に東京と名古屋で個展を行なっている。金沢は今回が初めて。今年創られた新作が16点、「pour water over the sky」、少し皮肉った題のつけられた作品群だ。現代アートとしては理解しやすい作品なのかもしれないが、理解するのではなく、感じるといった態度の方が正解なのだろう。

なお、篠原の作品は、大英帝国博物館はじめ世界の錚々たる美術館のパブリック・コレクションにもなっている。

インフォームギャラリー TEL:(076)221-1722


中村五月 個展

2002年10月16日(水)〜10月24日(木) ギャラリーアルトラ(石川県金沢市)

「おおらかで優しい」(友人)中村五月
dialogo3 油彩 テンペラ
I'evoluzione 油彩 テンペラ

――私が描く人物像は「私」であり、「私」はものを見る上での、そして判断する上での基準である。絵の中の「私」が観る人に対して、何をどう物語るかは分からない。しかし、「私」の表情、体、その形は限りなく自身の素に近いものとして象徴化し、表現している。絵の中に登場する白く丸い物体、口から吐く煙は「思想」「意志」「会話」「言葉」の象徴‥‥――(中村による"作品について"より)

金沢生まれの金沢育ち、30歳。1998年長野オリンピック国際美術展入選。1999年金沢美大修士課程修了。2000年イタリア国立ローマ美術学校絵画科入学。2001年第8回コンクール"MAURIZIO MALCHESE"(ローマ)、02年同コンクール8年間最終選抜展に選抜。02年6月スロヴェニアで初の個展。この秋同美術学校修了、金沢へ戻り、今個展。

留学に際して、滞在費も含め費用はすべてアルバイトで貯めた。肉体労働もやった、「日給5000円もらってすぐ4000円は貯金」、こんな具合。たいへんな酒好きで友と2、3日ぶっ続けで呑むこともある。「人間が好き、独りじゃ生きていけない、何か繋がりをもってないと、‥‥淋しがり屋」。絵のイメージは描く前に決める、時間もかかる。が、絵を描き出せば早い「もちろん、いっさい呑みません」。気風もいいが、自分を飾らない生き方がいい。

会場を訪れた金沢美大の大先輩女史に「思いあがりよ、気持ち悪い、戦争を思い出すわ」、などといわれてもどこ吹く風。いつか「絵の中に人物(自分)がいなくなっているかも」。

ギャラリーアルトラ TEL:(076)231-8082


松永安正 油絵・水彩画展

2002年10月15日(火)〜10月27日(日) ギャラリー浅の川画廊(石川県金沢市)

ベサルーの橋 F10 油彩
サラマンカのカテドラル F6 油彩
バル(Bar)の風景 F3 油彩

油絵30点、水彩10点、F3〜F10の作品が並ぶ。ギャラリーに足を踏み入れた刹那、なにか心地のよいモノに包まれた。なんなのだろう。

松永は1951年福岡県に生まれた。71年武蔵野美術短期大学を卒業。結婚後78年から85年までスペインに留学、バレンシア経由でバルセロナに滞在した。器用な方ではない、じっくり腰を落ち着けて取り組むタイプ、スペインのリズムが肌に合っていた。で、7年間、34歳になっていた。「スペインでの生活やあたたかいその人間性を日本で表現・発表したい。それ以上いたら日本に帰れなくなるし」、と日本に戻ったが、無論スペインの風土がたやすく異邦人を同邦人として解けこますはずはない、日本人であることも日本から拒否されたらコトだ、という側面もあった。

時は日本のバブルが弾けたあたり、画家にとって受難の時代に向かっていくのだが「いろんな意味で、その方がよかった」。ここ10年くらいは1年のうち、2ヶ月ほどスペインへ取材に出かけ、水彩は現地で描き、油彩は東京の国立のアトリエで仕上げ、5回ぐらいの個展を日本各地で開く。やっと「この方向でいいな」、自分の絵が見えてきた。

そんなゆったりとしたリズムが絵に表れている。心地のよいモノの正体はこれだったのだ。

ギャラリー浅の川画廊 TEL:(076)222-5043


逸見亜古銅版画展

2002年10月11日(金)〜10月21日(月) ギャラリーK2(石川県金沢市)

作家の逸見亜古
「この花咲くや嬉し」
「春を迎えに行こう」

特殊な技術を要した銅版画は実に手間隙が掛かるものだということがこの展覧会を見てよく分かる。「すごく細かい、すばらしい」という訪れた若い女性から感嘆の声があがる、この作品が優れていることの証明だ。

逸見亜古は39歳、初めは京都の大学で染織を勉強してきた。が、その染織を捨ての銅版画修業、17年間、研究を重ねて自分の道を開いた。

銅版は木版のように削らず腐食させる。その技法はシュガーアクアチントといい日本では珍しい。砂糖や薬品を湿らせた筆で銅版を押さえて凹凸をつける。それを何回も繰り返すが、ひとつの図柄に10数回の作業が必要な時もある。そしてさらに磨いていくという根気のいる仕事だ。

色はセピア系でピンクやグリーン、赤、茶など自分で作るという。すべて手作業である。だから作品は緻密な線と点で描かれており一種の画技といっていいだろう。「春を迎えに行こう」「この花咲くや嬉し」と名付けられた作品はメルヘンの世界。細かい模様と線が銅版画の特色を出している。

「インテリアではない、少し芸術性のある作品と思い製作しています」

ギャラリーK2 TEL:(076)243-0017


西眞紀子油彩画展

2002年10月11日(金)〜10月20日(日) ギャラリー新神田(石川県金沢市)

北陸二科同人の西眞紀子
「うつりゆく刻 99-1」
北國賞受賞の「夏夢」

北陸二科同人の西眞紀子が心象風景のなかに女性像を鮮烈に表現した。作家のナイーブな感性であろうか、詩情すら感じさせる。11年ぶりの個展で力作15点が年代ごとに展示されている。「この10年間、非常に苦しい時がありました。今、この展覧会を見ていただいて私という女の成長を見てほしい」と語る。

7年前の作品「うつりゆく刻 99-1」は落ち着いた青色系の色彩を基調に、大輪の花と水晶や月に囲まれた女性が描かれ、上半身から下半身にかけたしなやかな体の線は乙女の祈りを表わす。何より絵に気品が満ちている。

今年、北國賞を受賞した「夏夢」は暖色系である。曲がった両腕、成熟した顔、自立した女性だ。絵にさらに厚みが出て個展の見所ともなっている。「植物や月などオブジェ化したものを描いているが、私の場合は作品を励ますためのものであり、人物に安定感を与えるためです」。色彩の変化で作者の絵の成長が伺われる。

西は金沢美術工芸大学美術学科で油絵を専攻、二科展初入選は30年前になる。その間、石川県現代美術展では北國賞を6回受賞している。

ギャラリー新神田 TEL:(076)292-0862


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