中西恵「悠々染展」

2002年11月11日(月)〜11月21日(木) ギャラリーゼルコバ(石川県鶴来町)

「訪問者 リス」(部分)
「月のしづく」(部分)
「月のひかりがやってくる」(部分)

「友禅染絵」が日本の美の極致に迫る。作家中西恵の技が冴え、作品に加賀友禅のエネルギーと美の芳香を感じた。構図が絵画的だが、その点を「友禅着物などの柄はパターン化した花鳥風月が多い。伝統のなかに新しいリアリズムを取り入れました」と説明する。

その世界が作品「月のひかりがやってくる」で表現されている。画面に散りばめられた小さい魚。バックの青色が光源のように明るい。中央のオウム貝が印象的で図柄が熟成している。対象物を色彩と光で構成しようとする中西の視線には緊張感が漂っている。

ハイライトは「訪問者 リス」。舞台は石川県山代にある「ゆのくにの森・友禅館。庭に通じる部屋の障子を開けて誰かが訪れてきた。その誰かをリスに置き換えたのがこの絵のミソ。障子を両端に大きく描き、庭との遠近をとりながら小さい動物を配置することで物語性を出している。

加賀友禅には模様と色彩の渋み、豪華さ、美しさがあり芸術的な香りがする。中西の世界は絵画、物語的で独創性も備わっている。友禅染絵20年、これからが正念場。金沢美大で染色を学び、友禅作家毎田健治に師事。基礎があり、画面の構成が上手い作家である。友禅リアリズムの世界がさらに弾む。

ギャラリーゼルコバ:(0761)93-0788


岡重利陶展

2002年11月15日(金)〜11月20日(水) グリーンアーツギャラリ−(石川県金沢市)

貫入が見事な大皿
清楚な花器
岡重利

「青磁の世界に入り25年が経つ。が、ほんとうの満足感が沸いてこない」と語る陶芸家の岡重利。が、今度の展覧会では芸術的な貫入の作品はお見事という言葉が当てはまる。陶歴をみると実力のほどが証明出来よう。

東京都出身、金沢美大工芸デザイン科を卒業し金沢市内で築窯。1993年日本陶芸展入選以来、数々の展覧会で入賞。個展は金沢を中心に東京、京都、大阪など全国で展開、好評を得ている。現在、金沢市工芸協会評議員。

「白磁に挑戦したい。この貫入は非常に難しい。青磁は人目を引き付けやすい。白は無地なので、いかに目立つ貫入ができるか、ということです」。貫入は釉薬を流して1270度で焼き上げる。貫入はできるが、いかに芸術的、幾何学的に美しいかであるという。

展示の作品はバラエティーに富んでおり見応えがある。白磁も清冽な美しさで捨てがたいが、やはり会場での横綱格は皿や茶碗などの青磁である。形と肌の兼ね合いが妙で透明感のある質感があり、岡独自の貫入が冴えている。今回は花器の出展もあり古流松柳会の生け花が彩りを添え華やかさを演出している。

グリーンアーツギャラリ− TEL:(076)245-7222


一水会大作展

2002年11月15日(金)〜11月20日(水) ギャラリ−新神田(石川県金沢市)

構図がいい「売店」
梅本益男の「潮の午後」
作品を前に東野英一

一水会の男達が開いた展覧会で大作2点が目を引いた。会派に所属していると、なかなか自分の制作パターンから抜け出せないものらしいが、今回は男たちの意慾作を見て前に進もうとする姿勢が伺える。

東野英一の売店(150号)は韓国でソウル市街の道端で出会ったものだが、人物の構図がおもしろい。この店の主人であろうか、椅子に後ろ向きに座っている姿がユーモラスである。右側に立っている男はじっと店の方角を見ている。

東野は同会に所属して18年。15回入選して念願の会友に推挙された。「長年、船小屋や古い小船など漁港の風景をテーマにして描いてきた。この辺で少し冒険をしてみたいという気持ちから2、3年前にテーマの違った絵を描いてきた」と心機一転を志す。

梅本益男「潮の午後」(150号)は錨と大きめのランプがひとつ。画面の三分の二を占めるバックは多彩な色を使って描いている。大きな空間が鮮烈な印象を覚えるのは、削ったり、塗り手繰ったりする高度なテクニックからであろう。単純なモチーフながら、見る側のイメージを豊にする筆力は相当なものである。

ギャラリ−新神田 TEL:(076)292-0862


長谷川奈津 陶展

2002年11月14日(水)〜11月23日(土)  G-WING'Sギャラリー(石川県金沢市)

力強さと優しさのある「鉢」 
ケヤキの灰釉、土は伊賀
鉄釉(左、土は常滑)と
灰釉(土は伊賀)の「片口」
ギャラリー企画の"クリスマスプレゼント"
の前に立つ長谷川奈津

長谷川奈津は35歳。粉ひき、灰釉、鉄釉の日常使いの器で、今もっとも注目されている若手陶芸家の一人だ。東京都出身で、小さいころ橋本誠(明神焼、栃木県今市市)に焼物を教わった。で、1994年東京芸術大学大学院陶芸専攻を修了。その後「2年で独立」という条件で青木亮(粉ひき、神奈川県津久井郡)に師事した。そして2年半後の1997年、津久井群藤野町に念願の築窯を果たした。「自分の仕事場ができたことがとてもうれしかった」、5年前のことだ。

「大学の時は電動ロクロ、青木さんの所は蹴ロクロ。まったくできなかった。思うようにいかない、必死でした。はじめて蹴ロクロでつくったものを『だいじにとっておきなさい』と青木さんにいわれた。今あらためてそれを見てみて、いいんですね、自分らしいところがよくでている」。優しく笑っているが、刹那目が険しくなった。まだまだやることはいっぱいある、ということなのか。

李朝や唐津の古いものに憧れてこの世界に進んだ。「優れたものたちが共通して持っている"構え"というか"姿勢""精神"のような、本質に近づいていきたい」、そう考え続けている。

「先日"子どもの器展"をさせていただいたんです。初めて使う自分のめし碗、日常使いのめし碗を大事に、という企画。ああ、そういうことをやりたい、そう思いました。大事に使ってもらう器です。湯のみにしようが何にしようがいいんです」。これからがますます楽しみな作家だ。

G-WING'Sギャラリー TEL:(076)238-0771


二人展 GROUND 0/平口幸枝×平口泰夫

2002年11月11日(月)〜11月17日(日) 香林坊ハーバー(石川県金沢市)  

平口幸枝「椿の中の乙女」
1999 第21回一創展
油彩 F100
平口泰夫の住宅作品ブース
右には母の作品が並ぶ
「2002年グッドデザイン賞」を受賞した
平口泰夫 提案作品が並ぶブースの前で

会場の香林坊ハーバーはつい数ヶ月前まで映画館であった。いい具合に客席のあったフロアは傾斜がなく平坦で、天井は高く、展示会場として一味違う面白さを醸している。さらに立地は繁華街の中心部、人の出入りも頻繁だ。

平口泰夫は1948年生まれの建築家。母の平口幸枝は一創会の重鎮であったが2002年7月に88歳で逝去された(展覧会訪問のバックナンバー17=最下段=「一創会北陸支部小作品展」に平口幸枝を詳しく紹介)。「2002年グッドデザイン賞」を"むさしクロスピア"(金沢市)で受賞したこともあって、母を悼んで平口泰夫が二人展を企画した。

「依頼者と建築家の関係は、スポンサーとアーティストの関係ではなく、アクターもしくはアクトレスであり、依頼者はリーディングアクターで建築家はバイプレーヤーという関係のコラボレーション」、そう平口泰夫はコンセプトを語る。もちろんリーディングアクターを生かすも殺すもバイプレーヤーにかかってはいるのだが、「うまくいったときの喜びは、だからひとしお」、いつもそうありたいと心がける。

建築は自分の敷地の中で行なうのだが、公共の道路などに接しているわけで、環境を考慮しなくてはいけない。「だから面白いのですが、決して学生時代に思っていたほどカッコいいものじゃありません」、おだやかに自信ありげに笑った。


すみ和晴 うるしWORKS展

2002年11月10日(日)〜11月24日(日) ギャラリー点(石川県金沢市)

「つつみ皿」
「なごり雪」
「おぼけ」(漆を貯める桶だった)の前で
胡座のすみ和晴

器は「使っていただかないと意味がない」のである。塗の器はもともとそういうものであり、ごく一部蒔絵などを施した芸術的な作品もあったが、それは "お殿さま"のような方々のために創られたものであって、一般の人たちが日常的に使うものは丈夫で長持ちのする、さらに修理のきく、ごくごくシンプルな食器だったのだ。そういった本来の精神に立ち帰ろう、現代的な洒落た感覚も織り込んで、という訳でできあがったのが"すみ和晴のうるしWARKS"たちなのだ。

広島県呉市の生まれ。中之島美術学院美術本科(油絵)を終了したあと、油絵では「食っていけない」と、奥さんの実家のある石川県輪島市の蒔絵師・村木文三郎に師事した。25年間輪島に住み研鑚を重ね、1996年奈良県五條市に工房を開設した。輪島在住の1985年に初めての個展を行い、数々のクラフト展に入選し、94年に日本クラフト展優秀賞を受賞した。

布が作品の必ずどこかに出てきている。椀の外側全部であったり、皿の中央を包み込んであったりと出方はさまざま、それが特徴であり大きな魅力になっている。もちろん布は漆で塗り固めてあるから手触りもころあいがよく、指紋も付きにくい。「むき椀」「おざぶ」「アイスプレート」とネーミングも面白いが、形はもっと面白い。価格も良心的。そして、実はこれが一番大事なことなのだが、使い勝手がとても良さそうなのである。

ギャラリー点 TEL:(076)292-2140


澤崎俊治作陶展

2002年11月8日(金)〜11月15日(金) ギャラリーシャンブル(石川県松任市)

使いやすい茶器
茶系の器も
安定感のある花器

光沢のある器。展示された志野焼が味わい深い。どっしりと安定感があり、持ってみると軽く、肌触りもいい。四位伝谷釜・伊須流岐(いするぎ)焼、と厳めしいが作風は素朴である。

伊須流岐は石川県鹿島町の国指定史跡石動山(せきどうさん)にある神社の名前。この地で最近、前田利家によって焼失した大宮坊が復元された。澤崎はその山頂に窯を構える。西に日本海、東に白山、立山が一望でき制作に環境抜群である。

食卓でいつも活躍できる器を主に作り続けている。「器は飾るものだけではないと思う。まして皿やカップとなれば実用的でなければ・・」。が、作家根性は根深い。「手は抜きません。美術品として鑑賞できるものも目指しています」と。60歳の作家は意欲的だ。

石動山の土は鉄分を含み赤みを帯びている。固い土なので厚くして少しずつ削っていく。1300度ぐらいの温度で焼き上げるため空洞ができる。軽量なのはそのため。志野焼は庶民の器として愛されてきた。飽きがこないうえ使い易い。食材との相性がよいからであろう、展示の作品が物語る。

土の力に魅せられ築窯して40年、能登半島を代表する人気陶芸家。創造美術会会員、七尾美術作家協会常任理事。

ギャラリーシャンブル TEL:(076)275-0935


高木 哲 個展

2002年11月7日(木)〜11月24日(日) インフォームギャラリー(石川県金沢市)

ほんとうに心動かされることなんて、
そんなにない 水彩・紙 30×42
call of nature‐okinawa call of nature‐hibiya
デジタルプリント 103×251 2002
call of nature‐ikebukuro
デジタルプリント
201×137 2002

インフォームギャラリーでは今回が3回目の個展。前回はちょうど1年前で、テーマは"call of nature ほんとうに心動かされることなんて、そんなにない"であった。その延長線上にあるのが今回のテーマ"人生は経験の積み重ね、だが些細なことはすぐ忘れてしまう、一方生きているかぎり、忘れられないこともある"である。

英文のコメントを撮り込んだデジタルプリントを中心に、水彩の絵と、日記を綴ったカラフルな冊子集といったラインナップ。読みこみ、考えこみ、作家の意図するところをおぼろげながらでも汲み取った上、見る者それぞれがそれぞれの解釈と理解を示せばいい、いや理解なんて示さなくてもいい、そんな作品群だ。

一般社会に流される情報やイメージに、高木は独り言のような言葉を嵌め込んだ作品群で、「さ、早くマスコミュニケーションからパーソナルコミュニケ−ションへ変わろう」、そういっているのだろうか?

高木哲は1967年東京生まれ。金沢美術工芸大学彫刻科(1994年卒業)、東京芸術大学美術研究科(1996年修了)を経て、現在、現代美術センターCCA北九州に在籍している。

インフォームギャラリー TEL:(076)221-1722


鉄を楽しく 廣瀬慎個展

2002年11月1日(金)〜11月13日(水) グリーンアーツギャラリー(石川県金沢市)

工芸品の「すき焼き鍋」
鉄が生きている「花器」
粋なデザインの「明かり」

鉄が生きている、そんな表現がピッタリの花器が目を引く。酒かんは注ぎ口が斬新で温かさを感じる。鉄には冷たく、硬いというイメージがある。が、鉄は優しいものだということがこの展覧会で思った。一品一品に個性がある'鉄の工芸品'が並ぶ。作家は廣瀬慎、本場の岩手県にある工房からの出展だ。

鉄は日本の経済を支え、また日常の生活でも重要な役割を担ってきた。だからこそ大切に受け継がれてきた。「鉄は錆びる。それは生きている証拠、息をしているから錆が出てくるのです。昔の人は大事に扱って長持ちしてきたのです」。

「土であれ、鉄であれ、食器は生活の一部です。鍋を囲んでみんなで突付くという言葉がありますが、それは主に家族という単位で使われてきました。今はレトルトやコンビニで買い一人で食事、さびしいですね」。暮らしのなかの一部を担う作品を目指しています、と語る。使いやすく安定した形のすき焼き鍋や鉄瓶、皿などシンプルで実用性抜群の造形である。鉄とは思えない「明かり」のオブジェは粋で暖かさを呼ぶ心遣いを感じる。

廣瀬はこの道40年、筋金入りの鉄のデザイナー。日本クラフトデザイン協会理事で国際デザインフェア特賞、Gマークロングライフデザイン賞を受賞している。

グリーンアーツギャラリー TEL:(076)247-8072


西房浩二個展

2002年11月1日(金)〜11月14日(木) ひろた美術画廊(石川県金沢市)

特選の「KUTNA HORA」
西房浩二
「巡礼の朝」
「川を流れる」

西房浩二は10月末、第34回日展洋画部門特選で初受賞した。42歳の挑戦だった。入選回数は8回、最短距離ではありませんかと問うと、「なかなか頂ける賞ではないのですが、運と作品の出来合いがうまくかみ合ったのです」と謙遜。受賞作は「KUTNA HORA」、舞台は東欧チェコにある世界遺産の教会。木桶を真ん中に置き、舟板などを題材に茶系色でまとめた静物画で時の永遠性を表現している。光と影の対比で横一列に並べた構成が評価された。

風景、静物、女性像などを精緻に描きリアリズムを追求する。その作品群は10年前の静かな世界から流動的な画面に変化している。質感はさらに柔らかく、繊細な色合いに還元されているようだ。ジャズを好むという西房、リズム感のある絵になってきた。見る人の視線が止まるような構成を考えて描いている、という。

個展でも西房の世界が遺憾なく発揮されている。「巡礼の朝」(M60)、情感が伝わってくる。所は南フランス、動いている霧の中に鐘楼の教会が浮かんでいる。手前に煙突、背景はこれだけだが、グレー一色でまとめている。「川を流れる」は、光を吸い込んだ川面、鮮やかな緑の木々、流れる雲を丁寧なタッチで描き、動きのある世界を展開させている。

西房は日大芸術学部卒。光風会会員で2000年に前田寛治大賞、現代美術展大賞。画風は風景、人物、静物と多様。現在、石川県立工業高校教諭。

ひろた美術画廊 TEL:(076)240-0007


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