小林裕児展

2002年11月29日(金)〜12月4日(水) グリーンアーツギャラリー(石川県金沢市)

「空舟」
デッサンする小林裕児
「緋布♯3」

ひとつの作品が出来上がる間にイメージが次々にわいてきて発酵していく、小林裕児はそんな作家である。イメージと描くこと、その作業は同じスピードで行われるという。その起因は「音と絵の組み合わせと考えてみてください。私の場合、斎藤徹のコントラバスが合います。音楽との瞬間的なイマジネーションで描いていきます」である。

アトリエの配置が生半可ではない。トラックが横付けできる木工室、隣がアトリエと額縁制作室、イメージの流れで制作ができるようになっているらしい。この思索から安井賞受賞が生まれた。今回は大作ゆえ残念ながら展示ができなかったが、匹敵する話題作が並んだ。

くどくど語るよりも作品を見ると納得できる。「緋布♯3」(91×154)は作家の気持ちが100%伝わってくる作品だ。横たわる人物は戯れる男女の姿か、奏でるように描かれていて一種の運動感がある。バックの赤が鮮烈だ。最近では平面を超えて半立体や立体を試みているという「空舟」がそれ。オブジェ化した木舟に裸婦が2体、この場合もバックの赤色が遠近感を出し立体図を構築して見事である。

1948年東京生まれ。東京芸術大学油画科大学院修了、現在は青山学院女子短期大学芸術学科講師。54歳、ジャズからクラシックまで音楽を愛する男盛りの画家。今世紀に目覚しく活躍する芸術家のひとりと仲間が評す。

グリーンアーツギャラリー TEL:(076)245-7222


光風会6人展

2002年11月29日(金)〜12月4日(水) ギャラリー新神田(石川県金沢市)

勝二美知子の「春にみし夢」
宮越一清の「碧い波打ち寄せる」

写実を理念とする光風会の会員によるグループ展。近年、伝統のなかに新しい作風も出てきている。早崎和代の「ジゼルからの手紙」は静物。椅子の上のバイオリンや楽譜などの描写はパターンだがバックに線で描かれた裸婦が造形化して新鮮だ。リアリティーのなかに一種の心象を描く狙いもあって画面を引き締める役目となっている。

ほかに宮越一清の「碧い波打ち寄せる」は切り立つ岩、打ち寄せる怒涛の波、力強く描いて重厚感が滲みでている。勝二美知子の「春にみし夢」も日本人形4対を画面いっぱいに描き生命感をいかんなく発揮している。

堀暁、坪野まり子、中川和子も力作を出展しており、各々が個性を出して熱心に取り組んでいるのが読み取れる。

ギャラリー新神田 TEL:(076)292-0862


中田明守展

2002年11月21日(木)〜12月3日(火) ギャラリ−ノア(石川県松任市)

造形のおもしろさを追求する中田明守
青い燭台
鮮やかなオブジェたち

楽灯・灯夢「灯り展」と案内にある。うたい文句の通りギャラリーに入ると夢の世界のような青一色の燭台がずらりと並ぶ。出展者は九谷焼作家でクラフトデザインでも活躍する中田明守。「前回の個展ではミニ花器を楽しんでもらったが、今回は肩の張らない、おもしろいオブジェを作ってみた」。

燭台は円形のものはロクロを回し、造形的な作品は手づくりだ。7、80点はあろうか、一つ一つ形が違い、しかも個性がある。どういう形を作り、いかに使いこなせるか。ここが陶芸の難しさで、ポイントだという。そこは心得たもので、造形のおもしろさと気軽に使えるものを今回も作ったそうだ。

なぜ青い色に統一したか。答えは「映える」からだそうだ。燭台とロウソクとよくマッチする。しかも、ロウソクの色は赤や黄色、群青で四角いものや円形になったものもあり、楽しさが倍増するように仕組んである。その組み合わせは構築的だが愛らしい。

中田は石川県立工芸高校窯業課を卒業。九谷焼伝統工芸士、日本クラフト・デザイン協会会員。この分野では「日本の色と形」にこだわる。この作家の持ち味は伝統のなかに現代性を追及することにある。

ギャラリ−ノア TEL:(076)276-4486


第41回 北陸中日美術展

2002年11月23日(土)〜12月8日(日) 石川県立美術館(金沢市)

立体の会場風景
『沈む大地I』 大賞 金澤隆二 平面
『夜の広場』 富山テレビ賞
中村開己 平面

若い世代の登竜門として開設された公募展で、はやくも41回を数える。今回は、応募点数が400点近くに増えて、日本の公募展の中では屈指のものとなった。平面と立体に大別されているが、受賞作を筆頭に入選作の印象は斬新で、新しい息吹きのようなものを感じる。

大賞を受賞した金澤隆二の『沈む大地I』は、核に包まれた大地と地球生命体の姿を表現したものなのだろうか、サイボーグ化された人間がさらに仮面を付けている。好き嫌いが分かれる作品ではあろうが、見る者の目を止めさせるのに充分な迫力をもっている。金澤は茨城県土浦市在住で、青木大賞展特別賞の経験はあるとのことだが、大賞は初めてだ。

富山テレビ賞を受賞した中村開己(富山市)の『夜の広場』も、SFっぽいテーマで描かれているが、穏やかな色使いと形のシャープさが印象的であった。立体にも面白い試みの作品がそろったように思う。エフエム石川賞を受賞した安蔵隆朝(千葉県柏市)の『アップダウン』は、昔の覗きからくりを彷彿とさせる作品で、一人だけに許された覗き穴からの動く映像は、派手さはないが面白く楽しめた。が、残念ながらここでは紹介できない。

北陸3県を対象に始まったのだが、今回の応募の半数は3県以外からと聞いて、少々驚いた。とてもいい傾向だと思う。

石川県立美術館 TEL:(076)231-7580


山中國盛作陶展

2002年11月22日(金)〜12月4日(水) ひろた美術画廊(石川県金沢市)

飾り大皿「飛翔」
陶額「唐子」
手付け皿

山中國盛は九谷五彩に魅せられ陶芸の道に入って27年、九谷焼の現代化という命題に取り組んでいる。「まず、自然をしっかりつかみ、日本人の心を自分なりに表現していきたい」。個展は2年ぶり4回目。作品群はどれもバランス、色彩の取り合わせも抜群である。

飾り大皿「飛翔」(60×60cm)は、つがいのサギと子が飛んでいる光景。白の色合いで表現したサギ、厳かで崇高な雰囲気を醸し出している。金とプラチナでバックを明るく描き、下方の細かい網目が画面を引き締めている。高度なテクニックである。

陶額は小品だが、品格が滲んでいる。描かれている童や花、風景にはふるさとの思いが反映されている。石川県内市町村の花の絵や県木アテ、黒ユリの額が来年1月に開庁する新県庁に展示されるという。芸術性が高く、密度の濃い作品に期待が寄せられている。

山中は九谷焼画工の家に生まれ、三代目浅蔵五十吉(文化勲章受賞者・故人)に師事し、絵付士となる。現代美展最高賞、日展会友、石川県陶芸協会理事、日本伝統工芸士。49歳、この作家がもつ知・情・新が今回の個展でも反映され、また一歩前進した。

ひろた美術画廊 TEL:(076)240-0007


平野和夫金工展

2002年11月21日(木)〜12月3日(火) ギャラリ−千代堂(石川県松任市)

「仏たち(線刻透彫)
青銅花器「耀」
制作する平野和夫

「一発勝負、やり直しが効かない。1日1時間、集中力です。これが彫金の世界」と語る平野和夫は70歳、人生の節目である古希を迎えた。金沢美大工芸学科金工科を卒業、37年間石川県内の中学校で教鞭をとる傍ら、金工作家として活躍。加賀象嵌(ぞうがん)の伝承、研究に励む。今回の個展は、その集大成である。

材質は銅。削り、叩き、ていねいに細い鏨(たがね)で彫り、メッキしてから着色していく。制作の姿を見ていると、このような仕事はキャリアがなければ立派な作品が出来ないのでは、とつくづく思う。「辛抱してやってきた。根気がいりますよ。例えば、この観音さまの顔、目、鼻、口の線は特に神経を使います」。なるほど線描きが少しでもずれればそれで終わりである。「試行錯誤、失敗作のほうが多いね」と苦笑したが、努力の積み重ねが今日の地位を得たのであろう。

高さ40cmの花器だが、とにかく重い。銅の表面は艶やかなあめ色、素直に延びた線が質感を表現している。裏側はザラザラである。このように美しくなるのは、やはり錬金術といっていいのではないだろうか。観音像の周囲に彫られた幾何学的模様は線刻透彫といい、脇役だが高級感を出している。

銅は磨き、細工をすることによって芸術的な領域に達する。そこは彫金師の優れた技による。

ギャラリ−千代堂 TEL:(076)275-0305


山本容子の美術遊園地

2002年11月9日(土)〜12月25日(水) 富山県立近代美術館(富山市)

TUGUMI 1989
『TUGUMI つぐみ』(吉本ばなな著、
中央公論社、1989
ライプティヒのアウエルバッハ地下酒場
『絵本ファウスト』 2000
Papa Aid 〈JUNE BRAND'75〉 1975

山本容子は1952年生まれの50歳、いまや時代の寵児の版画家である。1978年に京都市立芸術大学美術学部西洋画専攻科を修了し、早くから脚光は浴びていたものの充分に収入があったわけではない。35歳のとき「夏の暑い部屋のなか、クーラーもなく汗だくで制作している娘の姿を見て、訪ねた母が泣きました」。ところが1988年、36歳の時、大転機を迎える。文芸春秋社からトルーマン・カボティ著、村上春樹訳の絵本、『おじいさんの思い出』の装丁・挿画の依頼があったのだ。山本はすでにトルーマン・カボティを手がけていた。

「ぜったい版画だけで"食って"いきたかった。ギャラリーで個展をやっても観てくれる人の数に限りがあり、限界を感じていたのね。でも、本だとたくさんの人が見てくれる。だから私の今後の方向として、考えが本の方にシフトしつつある時だったの」。ところが、すんなりと編集者のいうことをきかないのが山本容子の山本容子たる所以だ。絵本だと一部の人しか見てくれない、「本にしましょう」、食い下がった。文章量が400字で40枚、少な過ぎてとうてい本にはならない、だから絵本として企画されたのだ。「挿画をたくさん描きますから」。編集者は悩んだ。天下の村上春樹が当然メインの企画で、それでは無名の山本容子が勝った本になってしまう。しかし、文芸春秋は首をタテに振った。やがて、山本の名が出版界に知れわたり、吉本ばななの『TUGUMI つぐみ』(中央公論社)の表紙の絵や挿画で大ブレーク、あとは現在にいたるまで順風満帆、「お金持ちになりました」(笑) 

どんな小さな絵でも、版画(銅版・エッチング)で刷る、あくまでこだわりの版画家なのである。独特の作風は、時代や本の登場人物、神話などを描くことによって生まれる。それは、日々の学習と向上心の賜だ。さて、これからどこまで羽ばたくのだろうか。

本展は、朝日新聞社主催の巡回展で、来春まで福岡、鹿児島、うらわと続く。

富山県立近代美術館 TEL:(076)421-7111


国際漆展・石川2002

2002年11月20日(水)〜11月25日(月) めいてつエムザ8階催事場(石川県金沢市)

金賞 崔 榮根(韓国)の 「異光」
伝統の卵殻技法がいきる作品
銀賞 STORGAARD FOG, Else-Marie
(デンマーク) インドの漆技法を用いた
"雌雄のロウソク立て"
審査員奨励賞 東藤達也(石川県)の
「翠光蒔絵細中次」 研ぎ出し蒔絵の作品
大賞 大塚智嗣(広島県)の
「溜U−存在する闇 内包する光より−」
塗立(ぬりたて=塗っただけで研がない
技法) の作品

初日の午後1時過ぎに会場へいった。韓国語が会場に飛び交っている。若い方々が多いのだが、親戚なのか先生なのか年配の方も混じって、記念撮影など、嬉々と行なっている。仲間の受賞の祝いも兼ねての来日なのだろう、こちらにも熱気が伝わってくる。そういえば、記念シンポジュウム「新しい時代の漆を語ろう」が、たったいま終ったばかりでもある。

国際漆展は1989年(平成元年)から始まった。現在はトリエンナーレ(3年に1回)だが、ビエンナーレ(2年に1回)のこともあって、"新しい美と認識の広がりを求めて"をテーマに今回が6回目。21の大きな賞があり、大賞の大塚智嗣はじめ日本人が約半分の賞を獲得したが、韓国が4人で続き、アジア・ヨーロッパの6カ国から1人づつが受賞した。

日ごろ日本の漆工芸を見なれている者にとって、さすがに斬新に映る作品が多く、新しい可能性を示唆させる作品も少なくない。漆の関係者は観ておくべき、といっても過言ではないように思う。

2003年1月1日(水)から28日(火)まで、巡回展が石川県輪島漆芸美術館(輪島市)で行なわれる。

 


坂井幸司展

2002年11月15日(金)〜11月25日(月) ギャラリ−アルトラ(石川県金沢市)

「マルガリータ」
「塔の見える小路
坂井幸司と「緋衣」

リアリズム作家坂井幸司の個展は6年ぶりだが、ガラス絵と油彩では人物、風景など多彩に30点を展示し健在のほどを示した。「ここ数年、海外まで足を運んで制作した。その成果を問いたい個展」と語る。坂井は52歳。一創会会員を経て現在は無所属、自由な姿勢で独自の境地を開いた。現代美術展無監査、38歳で一創会北陸代表となった。

ガラス絵は前回のフランス人形から、さらに磨きのかかったマルガリータシリーズ7点を展示。高度なテクニックがいるこの絵は、色彩に対する愛着と忍耐がいる。今回は無色の小さな水滴を散りばめ、さらに金箔を張り高級感を出している。

人物像では50号の大作「緋衣」が鮮烈な印象を与える。緋色のドレスを纏った女性の清楚な肉体となめらかな肌にうっとりさせられる。バックのエジプト壁画が女性像を浮き上がらせている。人物像では一連の壁画が重要な位置を示しているので、その点を読み取って欲しいと言う。

風景の舞台となったのはスペイン、フランスなどのヨーロッパの街角。「塔の見える小路」は構図、色彩とも円熟の感がする。青い空、小路の奥に見える白い塔、左右の建物が光と影のバランスがとれ、遠近もしっかり描いており風景画の醍醐味を味わえる作品。作品には品格と美への執着度が増してきた。古いものを新しさに変えるセンスを持つ画家である。

ギャラリ−アルトラ TEL:(076)231-6698


作内宣夫彫刻展

2002年11月10日(日)〜11月24日(日) ギャラリー点(石川県金沢市)

「チャックモールの椅子」
「KOSMOS」
作内宣夫

現代アートの彫刻家作内による展覧会での「石の景色」は彫刻の新しい姿を見せてくれる。ハイライトは「チャックモールの椅子」というオブジェ。三段階の黒御影石が小さな神殿として構える。中層に赤御影をあしらいドラマ性を表現したダイナミックな彫像である。メキシコのチチェ・イツァー遺跡で見た「戦士の神殿」からイメージした作品。

巨大な神殿を登ると、生贄の心臓を置くチャックモールという一種のオブジェがある。五穀豊穣を祈る雨の神として信仰されてきた。作内の作品は写真で見るメキシコ遺跡とよくにている。チャックモールのミニチュア版だ。的確なデッサン力から生まれたものであろう。

展示の作品群は、「静」は不変の形であり「動」は変化する形で表現されているという。両方がうまく溶け合って彫刻美の世界を醸し出しているのだ。石の重さを表現した「静」の作品「KOSMOS」、天に向って延びる「動」の作品「こぶしの花の咲くころ」も近未来の彫刻を強く意識させる光景がここにあるようだ。

「彫る場合、抵抗感がなければいけない。御影石などの硬い石には強い反発を感じます」何回もの作業を繰り返していく過程で精神的な葛藤を体験していきます。やわらかい石は物足りなく余計に力が入り込んで思うような作品ができません」。作内の制作の原点がここにある。

金沢美大彫刻科卒。石川現代美展最高賞、石川県吉野谷村での「アート・クラフトin御仏供杉」で優秀賞。異才の現代彫刻家である。

ギャラリー点 TEL:(076)292-2140


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