
赤と青 展2003年1月15日(水)〜1月21日(火) G-WING'Sギャラリー(石川県金沢市)
"年明けは赤と青で始める"とばかり、赤絵の磁器作家・赤地径と青絵の磁器作家・竹内靖の2人展が始まった。赤地は金沢市の出身で竹内は小松市(石川県)の出身、ともに石川県立九谷焼技術研究所を卒業している。生まれは1972年と70年で年齢は近いが、研究所で学んだ時期は赤地が21歳から、竹内は18歳からで、5年の開きがある。だから同窓ではない。しかしそれでも、赤と青の色調もまったく違うのだが、なにかと共通する創作者としてのムードを2人は持っている。ともに九谷の土を使い、1280度で焼き上げ(磁器の燃焼温度は1280度が最適で、これより高くても低くても具合が悪い)、暮らしの中で使いやすい器、"日常使いのもの"を目指している。だからなのか。 赤地径の父は赤絵の作家・赤地健で、径は健の "赤地陶房"(金沢市)に勤務という立場だが、京都、奈良、東京で親子展や個展も開催している。落ち着いた赤の発色が印象的だ。 竹内靖は、妻であり染付けの陶作家でもある竹内智恵とともに"萌窯"(小松市)を主宰する。靖が土を焼き、智恵が絵を描く。形もダイナミックで、繊細な文様も魅力的だ。 いわばまだ駆け出しの若い2人である、磁器固有の奥の深さや渋さを作品に強く求めるのは少々無理もあろう。だからこそ、使途や形にとらわれず、大胆な、若さゆえの"バクハツといったモノ"も見てみたい、そう思った。この世代は優しすぎるのだろうか。 G-WING'Sギャラリー TEL:(076)238-0788 |
鳥と語る 詩魂の画家 脇田和展2003年1月4日(土)〜2月2日(日) 石川県立美術館(石川県金沢市)
現代日本洋画壇の第一人者、脇田和は1908年の生まれで94歳になるが、いまも毎年100号の大作に挑む。同世代には熊谷守一(97歳)、小絲源太郎(90歳)も健在だ。大きな病気をした70歳の時『ポンコツ車を誘導する鳥』を描き、治癒した翌年に『車はまだ走っている』を描いた。洒落たユーモアのセンスも併せ持つ、それが秘訣なのだろうか。 脇田の先祖は加賀藩士であった。廃藩後一家は金沢を離れ東京へ移った。父は実業家で和は裕福な12人兄弟の3番目の2男。15歳でベルリンに渡り、17歳でべルリン国立美術学校入学、22歳に卒業。が、その年に父が急逝、長兄もすでに他界していて一家の長となる。家業に専念した時期も数年あったが、迷い、結局は画家の道を選ぶ。運命の鳥との出合いは、国際展に出品し始めた1951年の1・2年後、見舞いにもらったマシコがそれだ。 今回の展覧会は、石川県立美術館の館長・嶋崎丞が永年望んでいたもので、脇田美術館(長野県軽井沢)などの協力を得て実現、140点の作品が編年体に3つの会場に展示される。 独特の世界には、思いおもいにデフォルメされた鳥や小どもたちが、詩情ゆたかな中間色をバックに清らかなメロディーを歌い、油彩でありながら岩絵具のようなカスレやニジミの上質なビブラートも加わって、全体として心地のよいアンサンブルが奏でられている。 石川県立美術館 TEL:(076)231-7580 |
「新春を祝う」展2003年1月4日(土)〜1月26日(日) 石川県立歴史博物館(石川県金沢市)
館の案内書には"新春を迎えるにあたって館蔵品の中から、「未(ひつじ、羊)年」にちなんだ絵画・引札などと吉祥の図柄を描いた掛軸や美術工芸品を展示"とある。「なーんだ」などといってはならない。「おーっ」というものがいくつも展示されている。 『花合わせ札貼交屏風』は、タイトルどおり、福寿草、朝顔、土筆、合歓の木やあざみなど四季の草花を描いた399枚の花合わせ札を屏風に貼り交ぜた、たいへんに珍しい作品だ。花札は、かつては花カルタや花合わせと呼ばれ江戸後期(1804〜1830)ごろに誕生したといわれているが、もっと遡れば平安時代の貝合わせや戦国時代にポルトガルから渡来したカルタ(トランプ)が原型になっている。面白いのは札それぞれに点数がついていて、獲得した得点を競う子どもたちの正月遊びだったのだが、そのイメージはいつしかオトナのものとなり、賭博の道具へと変わっていってしまった。忌々しきことではあるのだが。 日本に羊がはじめて入ってきたのは江戸後期ごろ、大陸から幕府にドッと献上されたらしい。困った幕府は外様大名に体よく分配した。加賀藩の文献にこんな逸話が残っている。第11代加賀藩主斉広(なりなが)が、藩の財政が逼迫していたにもかかわらず兼六園(金沢市)のなかに"竹沢御殿"を建てた。老後を過ごすためのもので、本来なら尾山神社(金沢市)の横にあった"金谷御殿"に住めばいいのだが、そこには"御羊様"が何頭かお住まいになっていて、たいへんに臭く、だから嫌ったのだ、と。 石川県立歴史博物館 TEL:(076)262-3236 |
石道会水墨画展2003年1月8日(水)〜1月20日(月) 画廊プラザ樹(石川県金沢市)
濃淡の美を見たいと思ったら水墨画に限る、と観覧のひとりが唸った。そこには「わび」と「さび」があり、その魅力に惹かれると、この世界の虜になると付け加えた。それほどの境地にするものは何だろうか。 石道会の展覧会はその美を遺憾なく発揮しているといえる。主宰の畝村石道はこう語る。「この道に入って30数年、長い間続けてこられたのは、色を使わず筆数も少ない水墨画は一見易しく思われるが、描いてみるとその奥深さに驚かされたから」。 この絵の生命は「筆さばき」にある。じっくり構想を練ってから、短時間に何枚も描いていき、そのうちの1枚を選ぶ。ポイントは墨の線と白地の生かし方。墨で描いたあとの白い部分は白色を塗ったのではない。が、その白が生き生きとしている。墨の線は躍動感がいっぱいだ。筆を転がして描いていくからである。 石道「円空仏」「山青水秀」(かけ軸)は絵に品格があり、気が流れるように伝わってくる。まさに気韻生動を地でいく作品。墨絵悠々、さらに磨きがかかる。 画廊プラザ樹 TEL:(076)262-6276 |
冨岡省三写真展2003年1月4日(土)〜1月19日(日) 石川国際交流サロン(石川県金沢市)
「土蔵文化」のすばらしさを写真展で見た。それを撮り続けている写真家、冨岡省三は石川県を代表する作家のひとり。今回のテーマも「蔵」。北陸の土蔵は雪に耐える規模と堅牢さにある。さらに漆喰の扉や壁に施された鏝(こて)絵の彫刻には感嘆させられる。その芸術は全国屈指のもので質が高いといわれる。 見事なのは砺波市にある千光寺と名越家の土蔵。扉には布袋様が描かれている。蔵にいっぱい金銀財宝が貯まるよう願ったものなのかユーモラスな面もある。壁にある端から端まで龍がうねっている様は豪快だ。石川県鳥越村にある農家の土蔵はどっしりと大きく重厚だ。いずれも文化の華が土蔵に表現されており、そこをシャッターに収めた冨岡の眼は鋭い。 大手の映像研究所に勤務していたからその技術も優れている。実際に写真を撮ったのは20年前。写真集も多く、特に「蔵」や「扉」をモチーフにした作品には定評がある。リアリティーに徹した独特の技法が持ち味。7年前から教室を開いて若手に教えている。「失敗作には原因があるもの。それが分かったらまた撮る。それを繰り返すと上達する。簡単なことだが、それがなかなか出来ない」。芸術とは繰り返す作業と、冨岡は断言する。 石川国際交流サロン TEL:(076)223-8696 |
ヨー・シロ展 ことのはじまりことはじめ2003年1月5日(日)〜1月12日(日) 遊くらふと ギャラリー(石川県金沢市)
米田義朗は夜間高校の現役の生物教師だ。いわゆる一般的な陶芸の作家とは少々ちがう雰囲気を、だから醸しだしている。その印象をひと言でいえば、笑顔がやさしいハニカミ屋サンといったところなのだが、体の中に刻まれた半世紀余りの歴史にはしっかりとした太い芯が通っていて、己の信念はなまじのことではけっして曲げない、そんな強いモノを感じさせる。 『招かれた「時間」』は不思議な作品だ。10個の直径20cmぐらいの双極子のような白い物体が御膳の上に1個づつ置かれ、それぞれに年月日を記した小さなカードが添えられている。例えば「1995年1月17日」、阪神淡路大震災の日、「忘れられた出来事が大きな意味をもっている。で、正月に、膳に乗せてみた」。物体の形は、人と人との分裂、出合い、別れを表している。別れは死だ。「この個展の全体が、作品の個々が、自己総括なのです」。 信楽と九谷の土ををブレンドし、1250度で焼き上げる。「高温だから、形が歪むこともあるが、気には止めない」。火葬の儀といった意味もあるのだろうか? 1948年生まれ。陶芸を始めて10年。石川県根上町の在住。この6月には初の東京での個展も計画されている。 遊くらふと ギャラリー TEL:(076)224-0015 |
Free 7 展2003年1月7日(火)〜1月16日(木) ひろた美術(石川県金沢市)
新春にふさわしい企画展が始まった。石川県を代表し第一線で活躍する5人の女流作家たちが会派を超えて集った。というのも、5人は昨年の「北国女流展」の審査員となった面々で、二紀会の中井喜美子、二科会の錦木眞葉、一水会の土田佳代子、光風会の池岡信、一陽会の入口ふじ子の各氏。中井の提案で実現した。 「テーマはまったく自由。ただし、それぞれが刺激しあうようにということ。私はちょっと冒険をして、版画の小品にチャレンジしてみました」。中井は続ける。「11月(2002年)に声を掛けたのに、ほんとにスッキリとして、いい展覧会になったと思います」。 5人がF60ぐらいの大作を1点とF0〜F6の小品を2・3点づつ、計17点の展示だ。ゆとりもあって、たしかに瀟洒な空間が演出されている。もちろん5人の作風はすべて違うのだけど、不思議な統一感が生まれている。席を同じくして審査をするという重責をこなしたことに、それは起因しているのだろうか。 あえて期待をこめていう。エキセントリックに観る者を驚かせてくれるような、そんなエネルギッシュなものが、もう少しほしかった。新年だからってことはないのだけれど。 ひろた美術 TEL:(076)240-0007 |
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扇田克也展2002年12月13日(金)〜12月19日(木) G−WING'S ギャラリー(石川県金沢市)
「これが本当にガラスなのか、工芸でもない、さりとて陶芸にしても違うし」と、陶芸を習っている女性が首をかしげているうちに、思わず眼の下のウロコが落ちた気持ちになって大変なカルチャーショックを受けたという。そんなこんなで「これはガラスの芸術作品だわ、立体絵画よ」と、いった鑑賞になったらしい。まさに、この人の作品は「これがガラス?」といつも問い直したくなるほど熱いものを感じる。 扇田は金沢美術工芸大学で鋳金を学んだ。鋳金は鉄や鉛を溶かし石膏で作った形に流して器を作る。この経験からガラスの道に進んだ。ガラス工芸に対する不信もあり一時この道から遠さがった。海外でその土地の風土や歴史、文化を1年間学び、紆余曲折もあったが再びこの道に入った。その時の経験と知識に鋳金の技法を基礎に現在の創作を生み出した。 「自然を生かした光」というのがこの作家の哲学だ。自然の息吹の神秘に感動し、人間の内面を見つめていく、というのが創作姿勢である。モチーフは花であり庭であり野である。作品を見るとよく分かるが例えば花器。表面はすりガラスのような質感で底の部分が透明だ。外からの光りが当たるとほのかにガラスの底に反射し部屋の中で光が灯っているように見える。人の創造力を喚起させる。 作品には余分なものを削ぎ落としたシンプルな造形が多い。「INTO THE LIGHT」はその典型的で造形の魅力を見ることが出来る。ガラスは創造力と美意識を与えてくれる、と語る扇田流美学は自然の力から生まれたといってよいだろう。大阪出身だが、現在は石川県内灘町に住む。受賞歴は五島記念文化賞新人賞、国際ガラス工芸展大賞など多く、その作品は金沢21世紀美術館に収集される。 G-WING'S ギャラリー TEL:(076)238-0788 |
盧慶美・藍染展2002年12月13(金)〜12月19日(木) ギャラリー点(石川県金沢市)
3mほどの大画面に描かれた藍染めの作品と向き合うには見る側にも気合がいる。そこには自然が重層的に封じ込められたエネルギーがあるからであろう。作家は韓国の染色作家盧慶美。植物を原料にした天然染料を使い色彩の奥深ささを表現し、徹底して「自然にこだわる」精神を貫いている。 自然との関わりは「幼児体験」と「現体験」が底辺にある。韓国・釜山市の生まれで大家族の中で育った。「環境は海、川、山、森があり、マキでごはんを炊き、畑で野菜を栽培、海の幸に恵まれて生活をしてきた」と語る。釜山市の大学で染色を学び、デザインの仕事に携わったあと、3年前から金沢美術工芸大学大学院で天然染料の手法などを研究した。現在は金沢市折谷町の工房で染色に励んでいるが、故郷とよく似ており申し分のない環境だという。 作品には山野で見つけた青じそ、ゲンノショウコ、シダなど自然の素材を取り入れている。染めの命は火と水、人の命も火と水が不可欠、そこで人間との一体を目指したという大作「火と水の出会い」が生まれた。20cm四方の円錐型のオブジェが70数個並列し、藍染めの布は中央で焼き焦げて下方は空白となっている。下部は山の陵線を表している。 「自然は日によって、時間によって変化しています。人もまた、いろいろ違う色と向き合い生活をしています。私は自然と人の出会いも時や場所によって違うと思います。そんな共感のようなもの藍染めに託しました」。その作風は染色した布を幾何学的に配列した「海−こころのかがみ」にも見られ、未来に開かれた藍染めの展覧会となっている。 ギャラリー点 TEL:(076)292-2140 |