倉下高志写真展

2003年3月14日(金)〜3月19日(水) グリーンアーツギャラリー(石川県金沢市)

倉下高志

「山から雪便り」

「赤い空」
「八重二十重」

「とにかくツイていますね。いつその場に行ってもシャッターチャンスなのです」。運の強い人である。「自然が相手の写真はアリバイ証明が必要。その場に身を置く、ということです」。なるほど、つまり撮影する場所に体と時間を持っていくこと、これがアリバイの意味である。

そう語る倉下は写真を始めて20年。本職は高校の数学教諭で生徒の写真クラブの指導をして10年。山登りが好きで山や花、森など自然が相手。大きくて重い一眼レフを持ってシャッターを切りまくる。個展として構成したのは今回が初めてだが、自然を鮮烈に表現できる作家として定評がある。

写真における「絵画主義」といわれ、単に美しさを追求した作品はここにはない。いま形を変えて出現した倉下の作品は構図がしっかりしていて、色彩の美は凄みさえ感じられる出来栄えだ。景観意識と写真表現はこうでなくてはと思う。展示の作品は35点、春夏秋冬と四季に分け、自然の移り変わりを的確にとらえている。

写真撮影は出会いである。ニュースであろうと人物、自然、静物、すべて被写体との出会いでドラマが始まると言う。写真はドラマ、そこに感動するものが常に潜んでいるのだ。

グリーンアーツギャラリー TEL:(076)245-7222


'02 玄土社書展

2003年3月15日(土)〜3月17日(月) 石川県立美術館(石川県金沢市) 

表立雲「その時V」 136×136cm
栗原和江「少しの絶望」 130×133cm

「私は前衛書家です。作品は想い切り大胆に発想します。ですが、反対に臨書は出来る限り厳密に細心に古典の形を写します」。いいかえると、「古典は研究の対象、自己流の曖昧な解釈を排し厳密に発掘するもの。創作は自己の表現、既成概念にとらわれず、わがままに生まれるもの」。そして、「無心で古典と向き合い、小さな疑問が大きな発見につながるかもしれない期待感。こぼれ落ちた偶然から新しい着想が展開され、失敗が成功をよぶ創作の愉しさ」。こんな思いで、今年も玄土社書展が開催された。主宰する表立雲は、1925年富山県小矢部市に生まれ、現在金沢市在住。玄土社の活動は活発で、作品のレベルも高く、名前は全国に知られている。

松村知春「時のかたち」 121×121cm

高桑昌子「蕭(よもぎ)」68×68cm×2

書の展覧会というと、限りなくモノクロームの文字の世界が広がり、どこか色気に欠ける、というのが一般的だが、この書展はひと味もふた味も違う。これも表の思想が反映されてのこと、出品者も生きいきしているように映る。

なかには実際に立体的に展開した作品もあるのだが、作風も表現方法も異なる54の作品は、どれもなかなかに個性的で、実際には平面の作品が、それぞれ作者の思いによって、あたかも立体作品であるかのように、前後に広がっていくようであった。

石川県立美術館 TEL:(076)231-7580


春の四重奏 Spring Quartet

2003年3月13日(木)〜3月18日(火) 遊くらふと(石川県金沢市) 

石畑(左)と音座
音座マリカの「ふくろう」
石畑美津子の
「古布とビーズのアクセサリー」
吉野幸雄の「急須」

河上知明の「チタンの三昧琴
(ざんまいきん)」

陶芸の吉野幸雄、ふくろうと絵の音座マリカ、燭台と三昧琴の河上知明、古布とビーズのアクセサリーの石畑美津子。この4人のスプリング・カルテット、春の協奏展。吉野と音座(共に金沢市在住)、河上(石川県小松市)の3人は80年代中ごろから一緒に何度も展覧会をする仲良しグループ、そこに最近、石畑(石川県輪島市)が加わった。

会場は金沢の慶覚寺の境内にある"遊くらふと"。以前にも紹介したが、さすがに床だけは平面だけれど、あとの前後左右の壁はもちろん天井も真直ぐなところはない、といったギャラリーだ。ところが、妙に落ち着く。とくに2階の畳の間は、窓からみえる寺の庭に野鳥などもやってきて、なかなか風流で長閑な空間なのである。

カァーン、グゥォーンと、澄んだ、厳かな音がする。ヨーロッパの古い町の教会から流れてくるような音色。客の若い女性が三昧琴をたたいているのだ。直径30cm以上の大きなモノから12cmくらいの小さなモノまで、上手に音階を奏でている。もともと燭台の台座を作る要領で鉄を叩き上げたモノ、"遊びごころ"だったのだが、最近はこちらの方が脚光を浴び、材料もチタンになった。音色もさることながら、表面に浮き出る貝のような色の風合いを求めてのことだ。

絵を書いていた音座が陶のふくろうを焼き始めたのは1986年。"百武彗星"を山まで見にいった。「北斗七星をぶったぎって尾が懸かった瞬間、ふくろうが鳴いた」。それからだ。

遊くらふと TEL:(076)224-0015


畠山耕治展 〜意識を鋳る〜

2003年3月12日(水)〜3月21日(金) G-WING'Sギャラリー(石川県金沢市)  

鋳金作家の畠山耕治

箱は、函、筥、匣、筐、とも書き、大小の差はあれ、いずれもモノを容れておく器のことで、ほとんどに蓋が付く。何かだいじに仕舞っておきたい、ほかの者にはみせたくない、そんな意識がそこにはある。だから"箱入り娘"といった言葉が生まれたし、"おはこ"はいわゆる"十八番"のことで、蓋のついた箱に入れて大切にしておくから、市川家が家伝の芸歌舞伎十八番の台本を箱入りで保存したことから、そう使われる。

また、"パンドラの箱"は ゼウスがすべての悪と災いを封じこめて、人間界に行くパンドラに持たせた箱で、パンドラが好奇心からこれを開いたため、あらゆる罪悪・災禍が抜け出て、人類は不幸にみまわれるようになり、希望だけが箱の底に残った。"玉手箱"は竜宮の乙姫さまから浦島太郎が土産にもらったものだが、やはり開いてしまったため、一気に百倍も年老いた。閉じられているモノは、開けたい、見てみたい、これは人間の性である。

畠山の作品は、青銅のずっしりとした重さとも相まって、そんな人間の性に逆らって、それでも閉じこめようとしているかのようにもみえるが‥‥。趣向を凝らした箱の表面にはどんな想いが込められているのだろう。「箱はその人の物語をそのまま反映する。意識を凝縮して、中に空気となって入っている」。この意識は作家が創り出すのではなく、素材に宿っているモノで、それに作用する力が意識の奥に潜む気配として存在する、という。

タイトルはつかない。左は天地25cmくらいのやや大きな箱。
中と右は10 cm立方くらいの小箱。いずれも内面には金銀の箔が施されている。

富山県高岡市出身、在住。1980年、金沢美術工芸大学卒業。内外で評価は高い。

G-WING'Sギャラリー
TEL:(076)238-0788

 


版画4人展

2003年3月8日(土)〜3月16日(日) 美術サロンゆたか(石川県金沢市)  

有元の「春」

池田の「黒い帽子の女」

世界的なアーチスト、それぞれ強烈な個性を持つ4人が一堂に、という展覧会はそうざらにはお目にかかれない。しかも有名作家の寄せ集めとは一味違って、今回は没後にも人気が高い作家も含まれて注目の企画だ。メンバーはお馴染みの池田満寿夫、有元俊夫に、現役の草間弥生、舟越圭。ファンならこれだけの名前を聞いただけで胸がときめくであろう。

有元の作品は2点しか展示されていないのが残念だが、20世紀のロマネスクが画面から漂ってきて、その静謐な雰囲気にいつまでも身を置きたくなるだろう。人物像「春」の顔は能面にも似た、まさに無表情のゆたかさを感じさせる。池田はマチスやゴッホを思い起こさせる作品を出品しているが、色彩豊かな作品「黒い帽子の女」がいい。この人のは肩がこらないのが救いだ。

草間の「赤いカボチャ」 舟越の「伝えられた言葉」

草間はカボチャと花をイメージした作品が5点。どこかコンピュータグラフィックスのような抽象的な紋様で描いた「赤いカボチャ」は驚きだ。草間はこどものころから物体の周りにオーロラが見え、植物や動物の言葉が聞こえる、といった自然界からの啓示を受けたという。一連の作品から、なるほどそうかなと思ってしまうほど宇宙的である。舟越は木彫家だが、今回は版画で「伝えられた言葉」を展示した。太い線で描かれ、新鮮な素朴さもあり好感が持てる。

定評のある作家について、作品を紹介するのは差し出がましいが、あれこれイメージを喚起されて鑑賞するのも楽しいものである。

美術サロンゆたか TEL:(076)232-1341


一創会金沢展

2003年3月7日(金)〜3月12日(水) 石川県立美術館(石川県金沢市)  

「浅草の休日」(P100)

「北帰行」(F130)
「アトリエ2003」(F130)

今年初めての大型展だ。充実した意欲作が並び、絵画のだいご味を堪能させられる。そのはず、この会派の25回記念展である。第1回から4半世紀を刻み、何よりも個性を重視し自由な画風をモットーとしている。すでに1月に東京展を開き好評を得た。「どの作品も手抜きが見当たらない。みんな頑張った。いい作品が多いね」とは寺西武久北陸支部長の弁。

写実から幻想的なものまで、とにかく幅広い。その洗練された色彩美は定評があり、作家たちもこれまでの制作の精神をしっかり踏まえ、この会派の世界を確実に広げている。まず、会代表の横塚繁の「浅草の休日」。オーソドックスな具象画だが、捉えどころが違う。画面中央に大きく描かれた和装の女性、バックの寺院、観光する人、自転車で遊ぶ子、バランスが抜群だ。見る側に安心感を与えてくれる。挿絵画家の持ち味が発揮されている。

寺西の「北帰行」はリンゴを持った少女を中央に配したことで画面に重量感を持たせ、バックの動物に動きを与える効果となっている。西山英二副支部長の「アトリエ2003」も青の色調で3人の女性の表情を生き生きと描き変化を醸し出している。

秀作が展示されるなかで、一般から会友や会員に推挙された作品が目立った。異色は五香利恵の「ハーモニー」。黒線で描いた裸婦に躍動感があって実力のほど見せた。一般からの会員推挙だが、以前会員になってから脱会、今回は復帰第1作だ。他の会派でも例のない事であろう。それだけ、この会派は作家精神を尊重するのである。

石川県立美術館 TEL:(076)231-7580


村田紀之器展

2003年3月6日(木)〜3月11日(火) ギャラリーノア(石川県松任市) 

山月窯の村田紀之

人生というのは、ある出会いや事件で180度変革することがある。村田紀之もそうであったのであろうか。26歳の時、写真家有田泰而に師事しその道を志した。が、ある時、撮影でアフリカを訪れて大地に触れ、地の匂いを肌に感じ、「土のぬくもり」というものを知ったという。

日本に帰り土を知る手段として九州の陶芸家中里隆のもとで2年間修業。その後、自分に適した土を探し、越前焼の里として知られる福井県宮崎村に移り住み開窯(山月窯)、今年で9年目になる。4年目には個展、以降は東京を中心に器展を開いている。土は越前だが焼は唐津。唐津は韓(から)の津といわれ、朝鮮の影響が濃く茶陶や食器、皿、鉢など土もののあたたかさがあるという。あなたにぴったりですね、と言うと本人にっこり。

「月見片口」 「天使の花器」

その作品は200点。高級感のあるものや遊び心のあるものまで多彩だ。例えば、「月見片口」は夜空で見た月をイマージして作られたものだ。「天使の花器」は挿し口に羽をあしらい、作品と対話するような楽しさがある。

42歳、今は順風満帆。土と闘う陶芸家。これからが試練ではなかろうか。

ギャラリーノア TEL:(076)276-4486


竹内浩一作品展

2003年3月1日(土)〜3月13日(木) ひろた美術画廊(石川県金沢市) 

無垢な表情の「猿」

心を打つ「子犬」
泳いでいるような「鯰」

猿や子犬、鯰(なまず)、かわいい表情の動物たち。気品のある色合いの動物絵画だ。中国古画宋画風のタッチと緻密な表現で描かれた作品である。作家の竹内浩一は山種美術館賞で大賞、新感覚の日本画を編みだし、動物絵画で独自の地位を築いた。格調のある大賞の作品「猿図」は高い評価を受けた。26歳で日展初入選、38歳で特選というまさに日本画のサラブレット。64歳、京都市在住で日展を中心に活躍、いま円熟の人である。

鳥や獣を描いても、そこには生命の鼓動が見る側に伝わってくる。技法は高度で、心情をうまく表現する作家である。動物の孤独で無垢な表情を画面にさりげなく投影、それが静かに平穏につつましく見る側に感動を与える。ともあれ、「古さ」を感じさせないのがこの作家のテクニックか。

竹内のメッセージは「ただ美しいものには興味がなく、無垢なもの、孤独なものに魅かれ、自分の心のままに描いたことだけは確かだと思う」。その思いが生かされ作品に優しさが滲んで柔らかな和様の世界がここにある。

ひろた美術画廊 TEL:(076)240-0007


金 晶美 展 ―有と無の境界線―

2003年3月5日(水)〜3月10日(月) ギャラリーアルトラ(石川県金沢市) 

オブジェ(青銅 2000年)  「人は独りで
もいろんな顔を持つ。隠したい自分を表
現して」
オブジェ(青銅 2001年) 「先生(関源司)
が倒れて、"棺桶"をイメージして」

オブジェ(青銅 2003年 修了
作品)と金 晶美 「芥川の"ク
モの糸"を背景に、死の世界
にいながらも生を求めた欲望
を表現してみた。死の世界へ
1度行ってみたいけど」

「有」と「無」は「生」と「死」のことである。見える世界と見えない世界、聞こえる世界と聞こえない世界、言葉のある世界とない世界、ともいえる。正反対の世界を見つけ、その境界線を考えること、にもなる。つまりは、生きていることを考える、というわけなのであるが。

金は1967年、韓国の全羅北道に生まれた。89年に圓光大学校美術大学を主席で卒業。日本に来て、多摩美術大学大学院美術研究科で鍛金を学び、97年に修了。その後、韓国の母校や国立公州文化大学金属工芸科の講師を歴任するが、学生たちと接して、「自分自身、まだまだ学ぶべきものが多い」と感じ、再び日本へ。今度は鋳金を金沢美術工芸大学の「たいへんエネルギッシュな」関源司に師事すること3年、この春修了した。36歳。これからは、東京に自分の工房を持ち、制作活動に打ちこむ。

今回の個展は、1メートル前後の高さや幅を持つ、金属工芸の作品としてはかなり大きく、あたかもブロンズ彫刻のような、見る者を怯ますくらい挑戦的で過激な作品3点が中心だ。「今後はもっと大きな作品を造りたい。どこから見ても、どんなに離れても見えるくらいの」。「自分の作品を通して、見た人が、話をして、考えて、大切なものに気づいて欲しい」。

ギャラリーアルトラ TEL:(076)231-6698


50人の写真展 −私の好きな一枚−

2003年3月4日(火)〜3月16日(日) 浅の川画廊(石川県金沢市) 

「朝のコーヒー」 大橋吉郎
「M君、新婚の朝」 朝倉英夫

過去に出展した作品もOK。風景、人物、動物、スナップ、なんでもOK。1人1点。出展は無料。50人になり次第締めきり。そんな投げかけに応募者はすぐに69人、早い者勝ちの50人の展覧会だ。

こう書くと、レベルが、と疑問符をつける方も多くいらっしゃると思うが、ところがどうして、これがなかなかのもの。それもそのはず、写真集を出したことのある人や、文化センターで教えている人も数人いて、過去に現美の最高賞を受賞した人まで参加している。ただやみくもに募ったのではなく、画廊のフィルターがかかってのことだと納得する。思いがけず「数人の方から、個展の申し込みがありました」、と画廊主。

「インフォメーション」
津田朝子

参加者のほとんどは金沢市近郊の在住者だが、その作品には全国、全世界の人や風景が写しこまれている。テーマが多伎に渡り、飽きさせることもない。そして、さすが50人のパワー、友人知人も含め多数が訪れ、活況を呈している。

また、「−私の好きな一枚−」だから、いわゆる現代アート的な、凝った、気を衒った作品もなく、やさしく鑑賞できた。その意味では、どこか懐かしい、そんな気がした。

浅の川画廊 TEL:(076)222‐5043

 


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