
“POLISHER IS WALKING”矢野志郎展(「アナザームーブメント」5)2003年3月21日(金)〜3月30日(日) くるみや(石川県金沢市)
板ガラスを併せ、重ね、磨き、緻密に計算された作品たち。より遠くから、あたかも小宇宙を覗いているかのような、何条もの光の帯が煌びやかに拡散していく。作品はけっして大きくはない、だが、それぞれその存在を顕示するパワーは強烈だ。 近年ガラス工芸を目指す若い人が増えているが、わかる気がする。ガラス作品を創りだすという行為は、光と闇を手もとに引きよせ弄び遊ぶことから始まるともいえよう、そんなところがわかりやすいように映る。ところが、当然のこと、奥は深い。作業の工程の大半はとほうもなく地道なものだ。そして、なによりも明晰な理論を構築する頭脳が要求される。一人前になるのには、ほかの工芸従事者と同じく、時間はかかる。
矢野は1978年福岡県の生まれ。1999年東京ガラス工芸研究所卒業。2001年から能登島ガラス工房のスタッフとして石川県能登島町在住。まだ20台半ばと若い。だからもちろん修行中なのだが、この作品たちは凛々しく完成度は高い。これから、どういう作品を創っていくのだろうか、もっともっと複雑で悩ませてくれる作品をと期待してみたくなる。とても楽しみな作家だ。 くるみや TEL:(076)251-8151
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“私の目”家住利男展(「アナザームーブメント」2)2003年3月21日(金)〜3月30日(日) 花のアトリエ こすもす(石川県金沢市)
ガラスの塊というものは、哲学の塊だったのだ。家住のこの展覧会をみるとあらためてそんな気がしてくる。ガラスは特性として本来そういうものを持っているのかもしれない。あの重量感といい、輝き具合といい、反射のし方といい、どうしてもいろいろ考えさせられてしまうからだ。そして、あげく、どうでもいいことが、非常に重要な意味をもってきたりもするから厄介なのだ、これがまた。 家住は1954年、栃木県足利市に生まれた。1985年に東京ガラス工芸研究者を卒業。現在、倉敷芸術科大学、芸術学部助教授。神奈川県在住。作品は日本国内にとどまらず、世界各地の美術館やギャラリーで紹介されてきた。 その制作技法は、1985年より一貫している。板ガラスを何枚も重ね、接着したガラスの塊をグラインダーで削り、ダイアモンド粒で形を整え、表面を研磨粉で丁寧に磨き、最後にフェルトバフをかけて光らせる。光のあたり方やみる者の位置によって、その塊は妖艶に変化を遂げる。あたかもこちらの意識の深さを探り威嚇するように、だ。
会場となった"花のアトリエ こすもす"は昭和のはじめに建築された(87年前)木造としては珍しい3階建てで、とても瀟洒な建築物。少し前までは薬局として現役だったが、現在1階は花屋、3階がギャラリーになった。家住は、倉庫から上質な古い家具などを持ち出して、作品とコラボレートした。 花のアトリエ こすもす |
“small objects”片山由佳乃展(「アナザームブーメント」14)2003年3月21日(金)〜3月30日(日) くらふと&ぎゃらりぃOKURA(石川県金沢市)
アナザームーブメントは年1回の春の金沢のアートイベント、今年が3回目、テーマはガラス。石川県内で活躍する9人と全国各地からの6人の作家と1企業が参加した。ガラスアートは歴史的にはまだまだ新しい分野だ。だからこそ、逆に大いなる可能性を秘めているともいえるわけで、若い人たちが中心になって、存分にその個性を発揮している。 くらふと&ぎゃらりぃOKURAの2階には、“small objects”片山由佳乃展が開催されていた。ちいさなオブジェ、といっても中には直径50cmぐらいの作品もあるのだが、どれもほどよくまわった会場の光を採りこんで、白い肌がやさしく輝いている。ガラスのガラス固有の美しさだ。 片山由佳乃は1973年愛知県生まれ。1998年に愛知教育大学総合造形ガラスコース、マイケル・ロジャース研究生を修了し、2002年には金沢卯辰山工芸工房を修了した。その間、1998年から現在に至るまで金沢市や東京、愛知で個展やグループ展をこなしてきた。現在は金沢市のFactory Zoomerのスタッフとして活躍している。 オブジェだから、基本的にはそこに存在するだけでいいのだけれど、あれこれなにかに使えないものだろうか、などと愉しく悩ませてくれる作品たちだった。 くらふと&ぎゃらりぃOKURA TEL:(076)263-3062 |
小林俊和・小田橋昌代ガラス展(「アナザームーブメント」11、12)2003年3月21日(金)〜3月30日(日) 美術サロンゆたか(石川県金沢市)
16人のガラス作品を金沢市内の14会場で展示している「アナザームーブメント2003」、いわば個展ラリー。個性があふれている、といった若者たちが中心のガラス美術工芸展。何か新しい風が吹いてくるような雰囲気である。 そのひとつの風「小林・小田橋展」。小林が吹きガラスで制作した「夜空に羽ばたく」は色鮮やかな鳥を星がきらめく円筒の上に置き羽ばたく瞬間を表現した。また、「静寂」はかわせみが水面を泳いでいるかのように見せた。小田橋は石膏で静かにたたずむ女性像を制作した。それは母親のようでもあり、娘のようでもあり、像はやさしく微笑んでいる。 小林は愛知教育大学総合造形コースガラス専攻卒、富山市ガラス工芸センターで技術スタッフとして勤めた。鳥や犬、猫など動物をモチーフに制作、高い技術力でリアル性を追求している。小田橋は愛知教育大学院修了、金沢卯辰山工芸ガラス工房の研修者となる。パート・ド・ベエール技法によるガラスの人体を制作、アメリカで高い評価を受けた。 小林は動物を通し、小田橋は人物で、愛と勇気と親しみに視線を注いでいる。 美術サロンゆたか TEL:(076)232-1341 |
記憶のシェア・辻和美展(「アナザームーブメント」9)2003年3月21日(金)〜3月30日(日) INFORM gallery(石川県金沢市)
会場の真ん中にコップがいっぱい詰まっている大きな箱が置いてある。が、数十個の物体は紙に包んであるので実際には何だろうか、と興味がわいてくる。壁面には1から365までの番号と言葉が書いてある。1個だけ取って紙を剥がせば秘密が分かるというそれが作家の仕掛けらしい。なるほど、ガラスコップに番号が書いてある。いわば、おみくじの形式だ。 その番号の言葉は作家のメッセージである。それは日常、頭のなかにある単語で「記憶のシェア」であるという。言葉は「愛」であったり、「死」であったり、あるいは「むっかつく」「どっか行け」なんていうのもある。 辻は「コップは水などを飲むための機能を持って存在している。コップを作っていて考えることはコップのことではなく食事のことなど平凡な事柄。その日常生活のなかから出てきた言葉の羅列、つまり独り言。多くの人とシェアできる言葉、そこからコミュニケーションが生まれるのだ」と説明する。また、コミュニケーションの場として、長方形に作られた2つのガラスの箱がある。そこに人が入り肩だけを触れ合う、というわけだ。作品は現代のコミュニケーションをテーマに、いま必要なものは何かを見る側と一緒に考えている。 辻はカリフォルニア美術工芸大卒で金沢卯辰工芸工房専門員を勤めた。 INFORM gallery TEL:(076)221-1722 |
Cornucopia 田嶋悦子展(「アナザームーブメント」8)2003年3月21日(金)〜3月30日(木) アチャ(石川県金沢市)
Cornucopia(コルヌコピア)は陶とガラスの素材を融合し、植物をモチーフに豊穣を願う意味。そのメッセージを鑑賞者と作家で「共有」できればいい、という考えから生まれた。この会場は古い民家を改造したギャラリー風空間。長持ちやアンテイックな家具に作品が並び、「古きもの」と「新しきもの」が見事にマッチした展覧会となっている。 田嶋は大阪芸術大学工芸学科卒で現在、同大学専任講師。現代陶芸家として多くの展覧会に出品し造形作家として定評がある。現代の陶芸は機能性のみでなく、造形性や装飾性を追求した作品が見られるようになり、田嶋もオブジェとしての陶表現に挑んでいる。 葉は純白の陶で花びらは薄く着色したピンクやグリーン、ブルーのガラスである。その組み合わせは清楚で気品がある。形は大胆で、それが豊かさを表現しているといってよい。「癒しとは違う、なにか非常にいい気分、といったものです。植物は人に豊かなるものを与えてくれるものだと思います」と作家は語る。存在感があふれる作品が鮮烈な印象として眼に残る。 アチャ TEL:(076)261-4071 |
木村硝子展(「アナザームーブメント」7)2003年3月21日(金)〜3月30日(日) 遊くらふと(石川県金沢市)
超薄いグラスにほどこされた切り子のデザイン、まぶしく輝いて絵画的な美となって見る側に迫ってくる。ずらり並べられた多種多様のグラス、コップもあればワイングラス、ミニカップ、どれもガラスの芸術である。 制作しているのは東京にある硝子店。1995年にはグラスで日本クラフト展最優秀賞を受賞。そのデザインは108種類もあるという。しかもガラス職人が手作りでひとつひとつ仕上げていく。まさに職人芸である。 女性デザイナーの三枝静代は「その時代に合ったデザインを工夫し、基本はオーソドックスが、ガラス作りの哲学です」と語る。作品は西洋のアンテイックな模様をあしらい、しかも日本の「雅」を取り入れたデザインは和様折衷で使用でき、外国でも好評だという。 遊くらふと TEL:(076)224-0015 |
第27回 日本海造形展2003年3月20日(木) 〜 3月26日(水) 石川県立美術館(石川県金沢市)
はや27回を数える、日本海造形展、今回は19人の出展となったが、初回からの出展者も多く含まれるのには少々驚かされた。「日本海造形会議」のメンバーの年1回の作品展でもあるのだが、金沢市在住の画家やデザイナー、カメラマンを中心に、石川県輪島市や小松市の作家も5人出展した。 広く造形全般を謳っているだけあって、どの作品も個性的だ。美術館の高い天井すれすれにまで伸びた作品もあり、訪れた子どもたちも思わず「ウオーッ」と歓声を上げていた。
金田和子の「緝(しゅう)」は、これまでの一連の作品とは一線を隔して、いろんな丸を墨で描き、とても面白い試みに映った。奥田きく子の「クラウンの部屋・昼から夜へ」は、落ちついた色調で横に長く展開された作品だが、根底には深いテーマがありそうだ。大場吉美の「ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ、いつつ」は、5コの明かりが整然とシンメトリックに並ぶ、印象的な作品になっている。角偉三郎の「かさね十一段」は、さすがに漆芸の第一人者の作だけあって、鋭く輝くように鎮座していた。 これからも毎年まいとし秀作を出展されんことを願ってやまない。 石川県立美術館 TEL:(076)231-7580 |
郷土ゆかりの画家たち2003年2月8日(土)〜4月6日(日) 加賀アートギャラリー(石川県加賀市)
石川県加賀市は「日本百名山」の深田久弥や雪の研究で知られる中谷宇吉郎を輩出し、作家の高田宏も出身者だが、画家にも何人か著名人がいる。本展はそれにゆかりの人も加えた展覧会。硲伊之助、国本克己、森本仁平、株田由雄、池田喜一郎、清水源太郎、宮元了一、石田成瑜の作品、計18点が展示されている。
硲伊之助(1895〜1977)は東京都出身、2度ばかりフランスに滞在し、マチスに師事した。1936年には一水会の創立に参加している。晩年は加賀市に住み、三彩亭の号で陶器も焼いた。独自の画風はあたたかく穏やかで、今なおファンは多い。同市には「硲伊之助美術館」もある。 森本仁平(1991〜)は加賀市の出身で、美術教師として岩手県一関市に赴任。戦後は自由美術協会で活躍し、90歳を超えた今も精力的に活動を続けている。精緻な筆さばきで奥の深い色彩が観る者の心をうつ。 どこか哀愁を漂わせた日本画家、石田成瑜(1918〜2002)は加賀市に生まれた。創造展などに出品し、会員賞を4回受賞している。 加賀アートギャラリー TEL:(0761)72-8787
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西あゆみ展2003年3月15日(土)〜3月23日(日) ギャラリー点(石川県金沢市)
「あるものが存在する美しさ」ということは何も豪華であったり、華やかであったり、とは限らない。「見て感じる」ことが大切であることが、この展示会で分かる。会場に入り目につくのが純白に研ぎ澄まされたガラスの世界だ。縦30cm、円錐形でビンのようなオブジェが50本。上部は雫(しずく)のように細くなっており一見、白以外の色は見当たらない。ただそれだけである。 大胆、といってもよい、この新進作家の西あゆみは24歳。石川県七塚町の出身。倉敷芸術科学大学芸術部工芸学科ガラスコースを卒業後、独学でこの道に挑戦している。作品に対するメッセージは「窓から見た冬の景色、外に出ると感じる春の息吹、冬から春という季節の移り変わりと春を待つ心を表現した」という。ロマンの香りがする言葉だが、作品では独特の造形世界を形成している。
驚きなのはオブジェの中央に直径3、4cmの小窓があり雨垂れのようなモザイク。また別の作品には米粒ほど花の実のような玉が見えることだ。唯一、微かな色合いがあって神秘性と幻想性をも醸し出している。「用の美もいいが、幻の美が好き」というのが意図らしい。 西は近く英国へ留学する。ガラスの世界をもっと磨きたいと意欲を見せた。 ギャラリー点 TEL:(076)292-2140 |