池岡 信 個展

2003年6月6日(金)〜6月12日(木) ひろた美術画廊(石川県金沢市)

「木馬」の前でにこやかな池岡信
第34回日展入選作「里華の人形」F100
あざやかな色調の「にわとり」
F6

池岡信は東京・赤坂出身。夫の転勤で各地を巡り、現在は辰口町に在住。今回の作品はここ1〜2年ぐらいに描いたもの。「石川に来てから暗い絵ばかりだった。久しぶりに明るい絵が描きたかったの」とのこと。会場には池岡の性格を表すように、鮮やかな色調で飾られた明るく楽しい、心踊るような作品24点が並ぶ。

「私のアトリエはこんなものでいっぱい」と池岡。こんなものとはいつのまにかアトリエに集まってきたピエロや人形、木馬などなど。花は自宅のもの。風景は自分の目で見たもの。想像ではなく見て触れて感じて、池岡の五感を刺激するものが作品となっていく。画面からはモチーフに対する愛しい思いが感じられる。

作品を鑑賞する時、どんな人物がこの作品を描いているのだろう、モチーフにどんな思いがこめられているのだろう、などと考えるが、池岡の作品は実に分かりやすい。好きなものばかりを描くから画風も自然に明るくなるのだろう、絵は描く者を映す鏡のようなものなのだ。

ひろた美術画廊 TEL:(076)240-0007


櫛田 清 金沢と西欧での景観スケッチ回顧展

2003年5月31日(土)〜6月8日(日) アートシアターいしかわ(石川県金沢市)

街並を描き続ける櫛田清と「パリのノートル・ダム大聖堂」
旧金沢市役所本館(水彩)

古い街並みや歴史ある建物といった、いつまでも残しておきたいものがある。金沢でも近年都市化が進み、観光名所と言われるような所でないと古い街並みにお目にかかることは難しくなった。それでも旧町名の復活など、よいものを残そうとする動きは高まっている。

画家であり建築家でもある櫛田清は、スケッチという方法で金沢の街並みや建造物を残そうとしている。今は壊されてしまった建造物や古き良き時代の面影を残す路地裏、武蔵スカイビルの16階から眺めた大パノラマスケッチなど、年配の方には懐かしく、若い人には新鮮に映る作品が並ぶ。そこには歴史と文化を重んじてきた金沢を見守る優しい目が感じられる。

「風薫る青春殿堂」旧制第四高等学校(現在の近代文学館)

また、スペインやイタリア、フランスなど西欧の景観を描いたスケッチもあり、中でもベネツィアのパノラマ大景観は、3日間通ってスケッチを完成させたという大作だ。どの作品にも歴史的に価値のある建造物が描かれており、建築家らしい一面が伺える。

櫛田は京都出身。京都大学工学部で建築を学び、建築家として活躍。1974年から金沢に移り住み、街並みを描き続けてきた。現在80歳。これまでの功績が讃えられ、この5月には「北國風雪賞」を受賞している。

アートシアターいしかわ TEL:(076)220-1888


能登島ガラス工房展

2003年5月22日(木)〜6月3日(火) ギャラリー千代堂(石川県松任市)

由水常雄の「破れ水差し」 佐野安正の耐熱燿変ガラスのティーカップ&ソーサーと銅箔の花器

ガラスは珪砂・ソーダ灰・石灰を適当な割合に混合して溶かす。その時の温度は1300〜1400度。その後徐々に温度を下げていき、形成ののち製品となるのだ。吹きガラス、パート・ド・ヴェール、サンドブラストなど様々な技法により、作り手の思い通りの製品が誕生する。光を透過させ、美しく輝くガラスの魅力にとりつかれた者のみがこの世界に足を踏み入れるのだろうか。

今回の出品作の中で目を引いたのは、耐熱燿変ガラス。電子レンジでの使用が可能で、美しい着色がなされている。これはガラスを作る工程の中で高熱を加えたり、急冷させることで発色が変化する原料を加えるもので、能登島ガラス工房が世界で初めて創り出した新しいガラスだ。これまでのガラスにはない発色は、なんとも味わい深く、どんなスタイルにもしっくりはまる。そのほか、ガラス工房の代表、由水常雄の作品はさすがとうならせる圧巻物だし、若いスタッフ達は、各人の個性がよく表れた作品を発表している。

安藤彰一郎のパート皿とぐいのみ

能登島町にガラス工房が開設されたのが1983年。今から20年前のことだ。以降ガラス工芸を志す人々が集まり、能登島の活性化に一役買ってきたといっても過言ではない。ますます人気を集めるガラス工芸にどんな新風を吹き込んでくるか楽しみである。

ギャラリー千代堂 TEL:(076)275-0305

 


初夏の手ぬぐい展

2003年5月21日(水)〜6月15日(日) 桃組+晴組(石川県金沢市)

金魚の手ぬぐいを使ったつい立て
日常使いの芸術品・手ぬぐい
額に入れても粋な手ぬぐい。大城戸達雄「そば猪口(蝶)」(左)と 雁千穂「燕子花」(右)

1枚の木綿に息づく日本の伝統と粋が感じられる手ぬぐい。古くから日本で馴れ親しまれてきた手ぬぐいの歴史は江戸時代に遡る。もちろん当時は手を拭くものでもあったし、風呂道具の1つであっただろう。時には浮世絵に見られるように頭に被ったりと、生活やファッションに欠かせない存在であった。また、歌舞伎との結びつきも強く、市民の芝居として人気の高かった歌舞伎は熱狂的な歓迎を受け、役者たちの家紋文様を入れた手ぬぐいは庶民の憧れでもあった。

手ぬぐいは注染と呼ばれる染色方法が用いられ、意外に手間がかかる。型紙を作り、糊を置き染料を注ぎ染める。糊を置いた部分には染料が入らず、色を重ねる場合は同じ工程を繰り返す。現代の手ぬぐいは金魚や花火、蛍といった代表的モチーフに加え、猫や蛙などユニークなものも見られカラーバリエーションも豊富。会場で見られたように額に入れてその風情を楽しむのもよし、さりげなくバッグに忍ばせ、ハンカチ代わりに使用するのも粋である。

会場となったのは、観光地・東山茶屋街にある築150年の歴史を持つお茶屋の建物。当時の風情はそのままに、1階は季節のジュースや地酒がいただけるカフェ「桃組」。2階は趣のある和室ギャラリー「晴組」となっている。

桃組+晴組 TEL:(076)252-8093


広瀬ひかり銅版画展

2003年5月28日(水)〜6月2日(月) ギャラリーアルトラ(石川県金沢市)

「蛙桃源郷vol.2」の前に立つ広瀬ひかり

おとぎ話に出てくる生物たちを思い出した。不思議な世界の中で、コミカルな動きを見せる蛙や金魚たちの様子は、さながら現代版「鳥獣戯画」というのだろうか。

自分の作品が大好きだから何枚も刷れる版画は魅力的、と話す広瀬ひかりは石川県津幡町の出身。1996年に文化学院版画研究科を卒業し、現在は東京で制作活動を行いながら精力的に個展やグループ展を開いている。今回が地元での初めての個展となった。

もともとは油彩をやっていた。学校の実習でやった銅板画が自分にあっていると開眼、この道へ。表情や動きを表現するには繊細で慎重な仕事が要求され、作品を仕上げるのに約1ヶ月、カラー作品になると4ヶ月もかかってしまう。独特の構図と細かな作業は、几帳面な頑張り屋さんのなせる技なのか。「難しい事を考えているつもりはないんです。こういう作業が好きなだけ。でも下絵はきっちり描きます」とのこと。蛙をモチーフにしたのは地元で見る機会も多かったし、伸びたり縮んだりとデフォルメしやすかったから。金魚のモデルは祖父が飼っていたランチュウ。そんな記憶の中から生まれたゆかいな仲間たちだ。

2002年山本鼎版画大賞展
入選作「酔金魚」
「蛙降り」 なに見て跳ねる?
「月見蛙」

昨年、広瀬は山本鼎版画大賞展に入選し、今後の活躍が期待される。次に描きたいモチーフは伊勢海老と、まだまだ広瀬の世界は広がり続ける。

ギャラリーアルトラ TEL:(076)231-6698

 

 


現代紙漉模様

2003年5月9日(金)〜5月31日(土) INAXスペース金沢(石川県金沢市)

紙の誕生か?大作も並ぶ

伝統工芸ではなく、現代工芸というべき和紙の作品を見た。そもそも紙が日本列島に伝来したのは4〜5世紀。もともと森林が豊かで清流に恵まれた日本は紙漉に適しており、日本独特のものである「和紙」は全国的に広まって、次第に地方色豊かなものが生産されるようになった。

徳島県上那賀町特産の拝宮(はいぎゅう)和紙は180年の歴史を持つ。かつては障子紙として使われていた拝宮和紙を現代風にアレンジし、住空間を彩る作品を作り出しているのは徳島県在住の紙芸作家・中村功。中村の作品は、素朴な風合いはそのままに、吊るしたり貼ったり巻いたりと、文字を書くだけにすぎなかった紙が見事に空間を彩っている。和紙の舟が水面を漂うかのように配置され、時折風に吹かれて和紙の波が揺れる。また、壁に掛けられたタペストリー状のものは圧縮されたのだろう、今だ原形を留めている木の皮などが重なり、紙の原点を見せつけられたような作品に仕上がっている。

和紙の波にゆらめくオブジェ 光の透け具合が美しい

紙漉の経験のある人なら分かるだろうが、決して楽な仕事ではない。冷たい水に手を浸し、何度も何度も漉いていく職人技だ。だからこそ出来上がった和紙の美しいこと。思わず筆を取って一筆・・・と思ってしまう。日本にもまだまだ捨てがたい文化が残されている。

INAXスペース金沢 TEL:(076)262-1701


竹田将一写真展

2003年5月23日(金)〜5月28日(水) グリーンアーツギャラリー(石川県金沢市)

「黎明の白山」
「古城の櫻」
「ポプラ」

レンズの眼で見た自然への優しいまなざし、美しいふるさとへの思いがこの写真展にはあった。「50年前、当時は高嶺の花だったニコンの写真機をやっと手に入れ、以来夢中で自然を撮り続けてきました」と竹田将一は青年のように照れる。大正時代に金沢で生まれ、昭和、平成と四季の石川を写してきた人生行路、それは歴史の証明でもある。

竹田は80歳、カメラを持つ手に若さが漲っている。瑞々しさと几帳面さは展示の作品にも表れている。それは経歴をみるとなるほどと分かる。職業は教師、専門は数学。金沢市高岡中学から石川県立錦丘高校で教鞭をとり、現在は金沢工業大学講師。若者たちと接し、数学という学問を教えてきたことが作品に反映されている。

展示の36点は植物を主体とした風景や花々で自然への愛着とこだわりの作品だ。「黎明の白山」は加賀平野にある片山津湖畔から白山を望んだ元旦の日の出を撮影したもの。湖に映った数条の光は山頂にたなびく雲がないと出現しない現象である。じっと待ち構える作家の精神がそこにある。「ポプラ」は小松飛行場の側にある並木だ。が、普段は葦の木や雑木林で見えにくい場所。それを狙うのも作家の執念と粘りであろう。

芸術はそう簡単には生まれないものだ。作家自身の資質と努力、それに感性ではないだろうか。80歳の作品にはその感性が伝わってくる。鑑賞に訪れる教え子たちもそれを感じているようだ。

グリーンアーツギャラリー TEL:(076)245-7222


坂下あきこ・村田あやねフォト&イラスト2人展

2003年5月18日(日)〜5月25日(日) 忙中閑有(石川県金沢市)

坂下あきこ(左)と村田あやね(右)

時として不思議な縁が人と人とを結びつける事がある。今回の個展は2人展。初対面同士のコラボレーションだ。きっかけは、才能ある若い作家を紹介したいと、このギャラリーをプロデュースしている国友博氏が、自らの教え子であるイラストレーター志望の村田あやねと、ギャラリーの1階にあるバリ料理店「LEGIAN」に出入りしていた自称「町の写真屋さん」こと、坂下あきこを引き合わせたことから始まった。

写真とイラストという全く異なるジャンルに情熱を傾けてきた二人だが、好きなものを表現することにかけてはどちらも負けてはいない。坂下は、ひなの頃から育ててきた「あひる」の"よもぎ"と"もみじ"を被写体にした作品16点。意外にもあひるはいろんな表情を見せてくれるのだ。そんな一瞬を捉えた愛情溢れる作品が並ぶ。

村田はアクリルで描いたイラスト11点。不思議な生物が・・・と思いきや、実はうさぎ。他にもりんごやドーナツ、たばこは吸わないけれどデザインが好きなラッキーストライクなど、好きなものを全て取り入れた村田ワールド。今回は2人展ということで、坂下のあひるも登場している。

坂下の「散歩道」 村田の「ドーナッツを持ち上げた日」

「個展って作品を売ってもいいんですね」と話す2人。自分の作品が売れたことに驚いた様子。なんのなんの、実力があればそれなりの評価は下されるのですよ。坂下は25歳、村田は22歳。まだまだこれから。もっと貪欲にもっと自信をもって欲しい。頑張れ、限りなき可能性を秘めた若きアーティスト達。

忙中閑有 TEL:(076)262-6510


高森絢子作陶展

2003年5月22日(木)〜5月27日(火) ギャラリーノア(石川県松任市)

朱と透かし部分のバランスが見事な「透」花生け

高森絢子は思い切りが良い作家だ。高校の工芸科に入学、美大受験を視野に入れながらも、短大へ進学。1ヶ月余りでやめて、遊工房のオープニングスタッフとして工房に入社。3年経ったら辞めると心に決めて、こっそり開窯資金のアルバイトをしながら励んだ3年。「きっちり3年勤めて辞めました」。で、開窯。近年、数々の展覧会で入選し、その実力を存分に発揮している。

土は信楽のものを使用。工程の最後1、2割にあたる窯出しは神まかせ、どこかゲーム感覚だと言う。モチーフは決まっておらず、いいと思うもの、感じたものを形にしている。今回も使い勝手の良さそうな器から花器、ランプシェードなどが並び、中でも「collage」シリーズは、その形の面白さと繊細な手仕事が見事。楽しく一生懸命がモットーで中途半端は大嫌いという彼女の性格がよく表れている。

現在は創作活動に勤しみながら陶芸教室も開いている。そんなに頑張らなくても・・・と周囲は言っているようだが、家庭を持っていても自分は自分の仕事をしたいと、「男前な女」を目指している。

「collage」キューブ やわらかなフォルムの「Mother(春)」

今後は陶壁など大きなものを手がけたいとのことだが、「やりたいことを早くに見つけてしまったから、これから他に面白いものが見つかればそっちに移るかも」とあっさり。あり得ない話ではなさそうだ。

ギャラリーノア TEL:(076)276-4486


フェミニンな淑女達展

2003年5月21日(水)〜5月28日(水) ギャラリー新神田(石川県金沢市)

可愛い淑女達 松浦欽子「秋へのいざない」
盛田きく子「あ・・かみきり」 永田弘子「北安曇野」

爽やかな風が運んできてくれたのか、心地いい展覧会が開かれている。一水会に所属する7人の女流画家達が、ギャラリーオーナーの呼びかけに応えて実現したもの。出品作はいずれも未発表作ばかりと、なんとも贅沢な企画である。

出展作家は、松田幸枝、松浦欽子、長谷洋子、小森邦子、永田弘子、盛田きく子、太田まり子の7名。

小品から大作まで23点。それぞれ好きなものをモチーフに、人物や風景、静物を描いているが、女性らしい優しさの中にどこか男性的な力強さも感じられる。また、作者の思いや画面に込められた物語をあれこれ想像しながら鑑賞するのも楽しく、絵画の楽しみ方は色々である。個性豊かな7人の作品が並んでも、そこは同じ会派ということもあるのだろう、存在が邪魔しあう事はない。ときにライバルとして、ときにアドバイザーとして、作品について意見を交わし、刺激し合っているのである。

何か別の事をやってみたい、と意欲満々だけれども、絵画に対しては、「好きだから描いている。好きだから続けられるの。」とのこと。当分やめられそうもない。

ギャラリー新神田 TEL:(076)292-0862

小森邦子「おりがみ」 長谷洋子「アネモネ」 松田幸枝「風たちぬ」 太田まり子「古都の旅情」

 


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