篠田桃紅「心のかたち」2003年6月27日(金)〜7月14日(月) ギャラリーK2(石川県金沢市)
1950年代のアメリカ。抽象表現主義が確立し、ニューヨークが世界の美の中心地になっていた頃、最もアジア的な表現であろう水墨を用いた抽象絵画を確立し、成功した数少ない女流画家がいる。 篠田桃紅は、1913年中国の大連生まれ。幼い頃から伝統的な書道の手ほどきを受け、やがて書画の道へ。1940年に銀座・鳩居堂で初個展の後、前衛書運動に参加。1956年に単身渡米しニューヨークに2年間滞在した。61年にはピッツバーグ国際現代絵画彫刻展で特選を受賞し、65年にはアクション・ペインティングを確立させたジャクソン・ポロックら抽象表現主義の画家を輩出したベティ・パーソンズ・ギャラリーで個展を開催。その後も海外で個展を開催し、高い評価を受けている。
その作品を目の前にすると、思わず背筋が真っ直ぐになる。線と面の単純明快な組み合わせだが、潔いまでの筆さばきが心地良い緊張感を生む。伝統的な書画の形を打ち破り、水墨抽象絵画を確立した篠田の生き方もまた凛としているのだ。 篠田は今年90歳。現在も東京のアトリエで制作活動を続けている。 ギャラリーk2 TEL:(076)243-0017 |
夏展2003年6月19日(木)〜6月28日(土) G-WING'Sギャラリー(石川県金沢市)
真夏の空が恋しい梅雨真っ盛りの季節。涼やかな気分を届けたくて、と粋なはからいなのか、会場は外の蒸し暑さを忘れるほどの爽やかさが漂う。漆と書、ジャパンブルーの藍染めが融合した空間。漆工芸家・書家の黒田昌吾(富山)と藍染めの原田弘子(愛知)の二人展だ。 もともと家業が漆問屋であった黒田は、漆技術を学ぶために養成スクールへ。しかし思いのほか作り手に向いていたようで、家業を継がずに作家の道へ進んだ。書を始めたのは作品を入れる箱書きのため。やっぱり楽しくなって書の道へ。書は1枚書くのに時間はかからないが作品になるものは何枚も書いたうちの1枚、漆は長い工程だけど、きちんとこなせば作品になる。書と漆、偶然と必然の関係が面白いと言う。 一方の原田は、藍染めにこだわる。嫁ぎ先である愛知県新城市の歴史を辿るうちにこの地が藍の栽培地であったことを知った原田は、藍染めという消えかけた伝統の技を身に付けた。「藍色を不快に思う人はいないはず。藍は季節を問わず生活に溶け込み、自分の気持ちを表現できるもの」とその魅力を語る。藍の伝道師ともいうべきか、日常使いの藍の良さ、本物の色を見る機会を提供したいと今後はワークショップを開催する予定だ。 藍染めの浴衣を身にまとい、洒落た扇子を持って夕涼み。漆のビアカップで冷えたビールなどいただけば日本人で良かったと思うはず。古き良き伝統を現代社会に融合させた形で伝えていく作家の試みと確かな技が感じられた。 G-WING'Sギャラリー TEL:(076)238-0788 |
倶利伽羅窯・立見隆志展2003年6月13日(金)〜6月22日(日) グリーンアーツギャラリー(石川県金沢市)
「器の美しさを追求していくのが私のテーマ」という作品130点には重厚な土の美が溢れている。陶芸家立見隆志(石川県津幡町)が越前の土を使い倶利伽羅窯で新しい世界を醸し出した。 立見は金沢生まれで現在55歳。越前・福島信夫窯で修行。31歳の時に穴窯を作り初窯を達成した。4年後には登窯、さらに2年前には地下式の穴窯を完成させた。今は自然が豊かな石川県と富山県の県境にある倶利伽羅山で薪窯を使い制作している。 立見の越前焼は余分なものをそぎ取ったボディ。シャープで硬質な緊張感を生んでいる。従来の焼き物とは違い個性があり、自然釉の流れで一味違った作品。しかも緻密な表現で独自の世界を出した。丸く平らな面が特徴の「丸扁壺」は新しい形で温かみがある。自然釉と焼きしめで施釉食器の焼成を行い、楽しめる作品に仕上げている。中でも丸物はおおらかで、味わい深い。 生地づくりから全てをひとりでこなす作家精神は「器の本質を究める制作態度の積み重ね」から生まれたものであろう。 グリーンアーツギャラリー TEL:(076)245-7222 |
古澤洋子日本画展2003年6月14日(土)〜6月22日(日) 美術サロンゆたか(石川県金沢市)
高い目線から画面いっぱいに描かれた屋根、大作「流れる刻」は大胆な構図で圧倒される。が、よく見ると筆さばきは実に繊細だ。瓦の上の小さなテレビアンテナ、あるいは鳥や猫、家の周囲を囲むように道路には数人が歩いている。生活感溢れる作品だ。刻が流れ、共鳴し、見る側に迫ってくる。ここには不動の存在感がある。幅378cm、高さ180cmの「氷食(槍ケ岳)」は山と月を幻想的なタッチで表現した秀作で作家の内面が滲んでいる。
古澤は金沢市出身。21歳で日春展に初入選、金沢美大大学院を卒業した25歳の時に日展初入選。その後、朝日新聞社賞や石川県現代美術展最高賞などを受賞し、エリートコースを歩んできた。山岳風景や静物が多い作品に「風景は刻一刻と変化し、同じ表情を見せてくれない。時には人物よりも表情が豊かです。山を描くのは険しさと厳しさのある岩峰の雄姿が好きだから」と語る。作品が男性的だといわれるのもこの辺りにあるのであろう。が、岩陰に咲く花を描いた作品は女性的で繊細だ。大地に根付く花々は自分を投影したいわば「自画像」だという。花器の切り花は美しいが命がない、地面から生えてくる花には「時と生命」が宿っている、と云う。 ふるさとでの個展は5回目。展示の30点にはどれも熟成の感があり、生命に対峙する思いが画面に表れている。これが古澤の自画像ではなかろうか。 美術サロンゆたか TEL:(076)232-1341 |
長井麦作品展2003年6月3日(火)〜6月22日(日) メロメロポッチ(石川県金沢市)
絵画や陶器、ガラス工芸などの分野で自分の世界を目指して進んで行く若い作家たちが、ここ2、3年でうなぎ昇りに増えたようだ。特に器の世界では急上昇だ。その若者たちのほとんどは工芸工房育ちである。師にとらわれず、自由な表現方法でどんどん制作している。楽しみ、愉快に、独自の作品を編み出すことで自己を磨いている。 そのひとり、長井麦は25歳の女性。東京生まれで沖縄県立芸術大学美術工芸学部でデザイン、工芸、陶芸を学び現在は同大学の研究生。「前向きよ、何事もとらわれるのは嫌。発想よ。自分で考え、自分流で制作するの」現代っ子らしい考え方だ。長井のテーマは「かば」。不細工だが愛嬌のある、あの大きな動物のカバである。だからすべての作品はカバの形をしている。もちろん本線は陶芸家である。皿も作るし壷、花器、なんでもOKだ。いまのところ狙いは「かば」だが、将来は「かば」で大きい賞を獲りたいと「かばの夢」は膨らむ。 メロメロポッチ TEL:(076)234-5556 |
船木大輔作陶展 「あ」展2003年6月4日(水)〜6月15日(月) ギャラリーROSE+in(石川県内灘町)
船木大輔は金沢市生まれで26歳。石川県立高校工芸科を卒業、さらに金沢美術工芸大学の聴講生となった勉強家。一昨年、金沢市工芸展で市工芸協会長賞を受賞、その実力を証明した。 最近のテーマは「下絵呉須」を使った作品が中心だ。青を基調とした若々しい色合いで芸術性を追求している。「まだ未熟。提案したいことがいっぱいある。オブジェ的な作品もやりたいし」と謙虚である。なるほど展示にはオブジェの花器もあって気概を感じる。
船木の個展は「あ展」。初めてのひとり旅を意味する。 ギャラリーROSE+in TEL:(076)286-2379 |
"20" 光風会20代作家5人によるグループ展2003年6月13日(金)〜6月19日(木) ひろた美術画廊(石川県金沢市)
国内に数多くある美術団体、とくに絵画部門ではとかく会派が重要視されがちで、その特色が色濃くでるものだ。今回は、約90年の歴史を持ち、写実を理念とする光風会の若者5人がその実力を披露した。 参加したのは、穴畑三千昭(1977年 石川県出身)、石田諭史(1974年 奈良県出身)、北地邦彦(1975年 石川県出身)、南大志郎(1978年 石川県出身)、山田陽平(1977年 富山県出身)。現在、高校勤務や学生、社会人とそれぞれ異なる道を歩んでいるが、このようなグループ展は今回で2回目。同じ会派という事もあって、いい刺激になるのだろう。 穴畑の「白い貝」は絵画の正統派とも言える作品。絵に対する真摯な態度がうかがえる作品だ。石田の「翠の世界」は、上品な翠緑が裸婦の肌を引き立て、味わい深い。北地の「風影」は、陰影を効果的に使い、風に吹かれる木立とレンガ棟の対比が美しい。南の「定められた道」では、大きな橋が対岸に向かってまっすぐ伸びている。タイトルのように自身の道が定まったのか、強い意志が感じられる。山田の「工場」は、静かな工場の風景。無機質な工場とそびえる煙突とのバランスが絶妙だ。 5人とも100号の大作1点と小品2点を出品し、それぞれに個性豊かな才能を披露した。近年、光風会展や現代美術展に入選し、今後が期待される若手作家達だ。 ひろた美術画廊 TEL:(076)240-0007
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山田勝明・信田興平二人展2003年6月12日(木)〜6月17日(火) ギャラリーノア(石川県松任市)
その昔、上杉謙信の軍勢が能登に攻め込んだ際、村人たちは不気味な鬼面や海草をつけ、陣太鼓を叩き鳴らして上杉軍を追い返した。これが御陣乗太鼓の起源と言われている。不気味な面を被るその下には、村人の怒り、悲しみ、恐怖といった人間の内面が隠されている。この御陣乗太鼓を通じて人間の内面を描いているのは、信田興平。輪島出身だ。 温和な笑顔から想像できないほど、信田の御陣乗太鼓は見る者を圧倒する。大作「能登御陣乗」に描かれている下から伸びる手は、村人の救いを求める手だ。信田は手にこだわりたいと言う。手を描くのは難しいが、手が表現するものは多い。手話的な表現ができれば、と今後の意欲をみせた。 一方の山田の作品はバリエーションが豊富だ。「とにかくいろいろな手法を試みる人だ。色も綺麗だし、私とは対照的だよ」と信田が言うように、テンペラ、油彩、パステルと様々。「明日の風」は、どこか宇宙的な大きな広がりを感じさせる大作。「娘さん」では、背景の金箔を丁寧に仕上げることで、女性の肌の質感や表情まで柔らかく仕上げている。また、ナイフで画面を削る事によりシャープに見せる技法など、山田の絵に対する工夫と研究心が伺える。
二紀会所属の2人がそろそろやるか、と開催したのが今回の企画展。全く対照的な画風を持つが、絵に対するこだわりと研究心は若い人には負けない。初個展となった信田が「まだ1年生だよ」と笑ったのが印象的だった。 ギャラリーノア TEL:(076)276-4486 |
田辺京子陶展「花器くけ子ちゃん展」2003年6月10日(火)〜6月20日(金) まちの花屋さん(石川県金沢市)
田辺の作品は色と絵が印象的だ。伝統的な九谷の色と形を脱して生み出される作品は、どこまでも自由で見る者を楽しませる。「絵を書くのが好き。いつでも全開モードで描いてます」と言うように、陶をキャンバス代わりにして独創的な世界を描いていく。個展のコンセプトに合わせて作品を作るというから、毎回違った表情のものが生まれる。今回は花屋とのコラボレーションということで花器が中心だが、色鮮やかな器やコーヒーポットなど個性豊かな作品も並ぶ。 田辺京子は、金沢市出身の現在34歳。石川県立九谷焼技術研究所や(財)金沢卯辰山工芸工房などで陶芸を習得。東京や金沢でグループ展は何度も行っているが、金沢での個展は初めて。「今後やりたいのは唐子。しかもコテコテの豪華絢爛なものをやりたい」と眼が輝く。どんな唐子になるか楽しみだ。
会場となったのはギャラリーを併設する花屋。田辺の夫・林大輔氏も同期間に横安江町商店街にある「コラボン」にて個展を開催中。期間中、2つの会場をまたにかけた楽しいイベントも用意されている。これは、2つのギャラリーと2人の作家を結び付けようとする新しい試み。どうやら石川のアートも活発になってきたようだ。 まちの花屋さん TEL:(076)240-8855
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3-P(スリーピー)展2003年6月7日(土)〜6月15日(日) ギャラリー那珂(石川県金沢市)
ギャラリーオーナーから企画展の依頼を受けた苗加が、県内の優秀な写真家に声を掛け実現したというのが「3-P展」。参加したのは、河野安志、苗加和毅彦、桝野正博。お互いに気になる存在である3人のコラボレーションとなった。 河野の作品には不思議な世界が広がっている。いくつかの写真を組み合わせることで生まれるその作品には、モチーフを活かすアイデアと素材を組み合わせるセンスが光る。苗加の作品は「Scene of Plant」のタイトル通り植物がモチーフ。様々な植物の色や形を捉えている。大胆な構図に繊細な植物の一瞬を留めた作品だ。桝野は静寂に包まれた北海道の風景。単なる風景写真とは違い、写真自体に生命感のようなものが感じられる。 3人の作品はデジタルとアナログを組み合わせたもの。「違う世界を持った3人が集まり作品を発表することで、自分の世界はこれでよかったと再確認できた」と桝野が言うように、いい意味でお互い刺激になったようだ。 人数の多いグループ展などでは、それぞれの個性が際立ちすぎて少々食傷気味となってしまうが、今回は3人という事で調度いい味付けがなされ、個性豊かな彼らの持ち味を生かした美味しい展覧会となった。 ギャラリー那珂 TEL:(076)260-4115
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