中村博光作陶展

2003年7月10日(木)〜7月31日(木) ギャラリー・茶房久連波(石川県金沢市)

浴衣でも着て、こんなお膳でしっとりと・・・

素朴な風合いながら味がある燻(くす)べ焼。燻べの持ち味を活かしながら、のびのびと大らかな作風が魅力的なのは陶芸家中村博光の作品。日常使いのものは軽く、そうでないものは重くを心がけているそうで、実際カップや椀など手に取ると驚くほど軽い。

月が浮かぶような片口鉢と酒器
風炉窯一式

「見た目は織部の鉢のようだけど、細かな所に目が行き届く人」と夫・中村博光について、妻であり陶芸家の中村多喜美は話す。その作品はしっかりとした技術が存在し、手抜きは一切見られない丁寧な仕事ぶり。「轆轤が得意。中でも急須は上手。急須だけでやっていこうと思うぐらい」とも。確かにその無駄のない美しいフォルムは、堂々とその存在を主張している。今回は茶道具も手掛けた。茶道の知識は無いが、一生懸命勉強して作ったという。湯窯に描かれたのは故郷・大野の風景。大野が好きだという中村は個展では必ず大野の風景や大野の産物をモチーフにしたものを取り入れ、故郷への思いを表現する。

現在、中村は妻と2人で陶芸教室を営みながら多忙な日々を過ごしている。最近は陶芸ブームもあってか生徒も増え、なかなか自分の作品を手掛ける事ができなかった。5年ぶりの個展である。燻べや織部、粉引などの器や皿、花器などこれまで中村が作りたかったものがしっかりと形になり、見応えのある作品展となった。

ギャラリー・茶房久連波 TEL:(076)253-9080


原 雅幸個展〜イングランド便り〜

2003年7月5日(土)〜7月13日(日) 美術サロンゆたか

「白い波」6M
「Thatched roofのコテージ」SM
「Herver Castle」4M

流れる雲、雲の切れ間から射す光、風に揺れる木々。鑑賞する者を画面へと引き込んでいくような精緻な描写が印象的なのは原雅幸の風景画。初めて観る者を温かく優しく包み込むような空気が漂う。

原は日本の風景画も描いていたが、描き尽くしたと感じ渡英。現在ロンドンから離れた広大な田園地帯にアトリエを構え、自然豊かなイギリスの風景を描き続けている。その描写力は実に見事で、小石のひとつひとつから草の一本一本、遠くに見える小さな人影まで描き、圧巻である。「風景の密度が濃く、それを描こうとするとどんどん細緻になる。細かい部分を描いていると楽しくてあきない。自分にそういう気質があったのに気が付いたし、イギリスの風景に対していると夢中になれる」と言っている。写真と比べられることがあるが、写真のような平面ではない。奥行きが感じられ、サムホールサイズと小さいながらも壮大な風景がそこに広がる。細緻な仕事のため1ヶ月に3枚程度しか描けないのも納得できる。

一体どこまでその才能は開花し続け、イギリスの風景をどこまで捉えるのか。原は無所属の画家であり、国内でその作品を見ることができる機会は少ない。金沢での個展は3回目。豊かなイギリスの風景を描いた12点が並んだ。

美術サロンゆたか TEL:(076)232-1341


宮田耕二水彩画展

2003年7月4日(金)〜7月9日(水) グリーンアーツギャラリー(石川県金沢市)

宮田耕二と「湖畔の春」

何気ない風景画や静物、人物を描いた絵に引き込まれる事がある。それは作者が体験した印象深い出来事や感動が鑑賞する側に伝わってくるからかもしれない。宮田耕二の絵もそうである。会場に展示された32点の作品はどれも的確にモチーフを捉え、何も語らなくてもその時受けた感動が伝わってくる。

宮田は1924年生まれ。子供の頃から絵が大好きであった宮田の画歴は70年。油彩で抽象画も描いた時期もあった。自然に水彩の道に進んでいたのだが、自分にはこれがあっているのだろう、と言う。水彩を始めて40年。自らが感動を受けたもの、印象に残った事をひたすら描き続けてきた。

街の喧騒が伝わる「上六の路地」 大胆な構図の「向日葵」

いつも持ち歩いているというバッグにはスケッチブックと絵の具が入っている。いつどこで感動できる瞬間に出会えるか分からない。「本当にどこででも描く。飲みながら醤油で描いたこともある」と絵仲間。元気の秘訣は「深く考えない事。楽天的に物事を考える事」。4年前に病を患ったが、完全に回復したら海外へのスケッチ旅行にも行きたいと意欲的だ。今回の作品の中で1点だけ画風が大胆な「向日葵」について「若々しいですね」と言うと、「まだ79歳ですよ」と笑った。

グリーンアーツギャラリー TEL:(076)245-7222


三盃いく子人形展

2003年6月28日(土)〜7月8日(火) ギャラリー・茶房久連波(石川県金沢市)

作家・三盃いく子

三盃いく子は異色の人形作家である。本来なら可愛らしいはずの人形なのだが、三盃の人形達は凝視する瞳とニコリともしない表情を見せ、思わずドキリとしてしまう。東山茶屋街の雰囲気に合うような作品を作ったと言うが、なるほどその妖しい雰囲気がお茶屋に見事にはまり、不思議空間を作り出している。

三盃は現在28歳。4年前から絵を描きはじめ、3年前からは人形作りも始めた。現在はこの2つを生業としている。「決まったモチーフはないんですが、粘土を触っているうちに自然にこのキャラクターが出来ました」と話す人形は猫や兎など、どこか不思議の国のアリスを彷彿とさせる動物達や少年だ。使用しているのはセラミドと呼ばれる陶芸用粘土。これを形成し焼成せず乾燥した後に着色する。セラミドの自然な色も好きなため着色しないこともあるが、どれも丁寧に時間をかけているため、愛着があって思い入れの深いものばかりだ。

ちょっと偉そうな「うさぎ殿下」 土の色が懐かしい「道化」

会場にはクレヨンを塗り重ねた画面を削って描いた三盃いわく「スクラッチ画」など絵画3点と人形25点が展示されている。妖しい雰囲気ながらも、不思議な魅力に引き込まれついつい手にとってしまう。おっとりとした三盃の雰囲気と人形の妖しさとのギャップが面白い展覧会となった。

ギャラリー・茶房久連波 TEL:(076)253-9080

 


西山英二 ヨーロッパスケッチ展

2003年6月25日(水)〜7月7月(月) ギャラリーアミーゴ(石川県小松市)

あかね色がエキゾチックなパリの街角
鮮やかな色合いの凱旋門付近
情緒的なセーヌ川

画家にとってフランス・パリは憧れの地。作家生活において、ここを外してはその精神が崩れていく、とあるベテラン絵描きが言った。確かに文学であれ映画であれ、パリは人の心を動かす。この地で修行し、あるいは永住して活躍している日本人もいれば、すでに何回か訪れて個展を開き画壇で認められた人も多い。また、やっと念願かなって勉強をしてきた人もいる。

西山英二はここ数年パリはもちろんスペイン、イタリア、トルコなどヨーロッパ各地で自己の表現を鍛えてきた。「ヨーロッパには歴史の重みがある。特に石の文化に惹かれる。どこを向いても絵になる。日本にはない風景があります」と語る西山はこまめにスケッチをしてきた。外国が珍しいの、と照れてはいるが、外国人の生きざまや古い建物、自然を対象に人を惹きつけるように描いている。今回の個展でもそれが投影されて、確実に自分の世界を広げている。激しく鋭いタッチでパリの街角や自然を描いており強烈な印象を見る側に残してくれるのである。

西山は石川県加賀市の出身。金沢美術工芸大学を卒業、美術教師を勤めた。現在一創会所属。1980年に同会展で初入選し以降連続入選など、いま円熟の作家だ。

ギャラリーアミーゴ TEL:(0761)24-2552


蔦健三・フランス巴里展

2003年6月27日(金)〜7月6日(日) ギャラリーアルトラ(石川県金沢市)

大作「パリの幻想・ダンサーの夢」

日仏現代作家美術協会委員の蔦健三は18歳から憧れていたというパリを2年前に初めて訪れた。絵を初めて48年になるから、まさに念願かなってということである。いま66歳、二紀、独立、行動美術、水彩連盟などいろいろな会派を経ている。賞も多く現代美術展最高賞、水彩連盟最高賞、会員賞、カナダ大使館賞等々。

個展は数回を数えるがパリ展は初めて。展示の作品は50点。ペンスケッチや水彩、淡彩、ヌードクロッキーなど多彩だ。パリ市内の街頭でユトリロやロートレックらがいた人間くさい風景を描き、様々な街の表情を捉えてきた。また、ムーランルージュの踊り子、地下鉄の旅芸人などの人物画は作家の感性が伝わってきて好感が持てる。

ムーランルージュの踊り子 珍しく裸婦も何点か

蔦は先日にもパリで日仏親善のため開かれたシャロン展に選抜出品している。選ばれたのは「異国の街で」。パリの街を背景に女性があや取りゲームをしているのを詩的に表現したもので好評を博したそうだ。

とにかく器用な作家である。油絵は抽象も具象もこなすし、水彩から似顔絵、屏風絵の大作、ポスター、雑誌の表紙、チラシのイラスト、なんでも引き受ける。「どれかひとつに打ち込みたいが」と言うが、このままのほうが蔦らしく、また新たな挑戦に期待をしたい。

ギャラリーアルトラ TEL:(076)231-6698


江口幸代染付一人展

2003年6月26日(木)〜7月8日(火) ギャラリーノア(石川県松任市)

「紫陽花」の前に立つ江口幸代
大胆な構図が活きる「山法師鉢」
藍と白のコントラストが美しい「紫陽花花器」

露に濡れたようなしっとりとした紫陽花、風に揺らめく萩など、藍色という日本古来の伝統色の濃淡を巧みに使い、活き活きとした草花を描く。会場には女性らしい繊細な絵柄を描いた好感のもてる作品約160点が並んだ。

江口幸代はデザイン関係の仕事に従事した後、1995年に県立九谷焼技術研修所を卒業。現在は日展作家・北村隆の工房で働きながらその腕を磨く。今回が初個展とは思えないほど、その作品は上品でありながら堂々とした風格をたたえている。

昔から絵を描くのが好きだったという江口は、陶芸の世界に身を置くようになってからも、素焼の器をキャンバスをにして好きな草花を描いている。モチーフとなる草花はほとんどが自宅に咲いているもの。時にはスケッチを兼ねて山歩きもするという。描写力が優れているのは、絵の基本を身につけているからだ。構成力に優れているのは長くデザイン関係の仕事に携わっていた事が影響している。

「藍は薄くもなり濃くもなり変化に富んだ色。染付は手間が掛かる分、窯出しの時が楽しみ」。今後は実用的でありながらどこか遊び心を持たせたもの、上絵と染付を合わせた作品を手掛けたいと意欲を見せる。江口の研究熱心な姿勢と努力を怠らない真摯な態度がそのまま作品に反映されている個展となった。

ギャラリーノア TEL:(076)276-4486


二人展 布花と籐との語らい

2003年6月26日(木)〜7月1日(火) ギャラリー千代堂(石川県松任市)

アートフラワーの今井洋子(左)とラタンクラフトの福岡文子(右)

会場に並ぶのは本物と見間違えるほどその細部まで精巧に作られた布花と、天然素材の温かみが感じられるラタンクラフトの作品。それぞれの分野で師範として後輩の指導にあたる今井洋子と福岡文子の初めての二人展となった。

今井は子育てが落ち着いた頃にアートフラワーを始めた。現在は師範として各方面で活躍している。飾る事も作ることも楽しめるところがアートフラワーの魅力。花びらや葉の一枚一枚を丁寧に染め、コテやワイヤーを使用して表情豊かに仕上げていくには、集中力と花を見る観察力がものを言う。今井は一輪でも飾れるもの。生活の中にさりげなく取り入れやすいものを目指している。

繊細な手仕事が光る
アートフラワー
2003年バスケタリージャパン
出展作品「皮籐オブジェ」

一方、ラタンクラフトの福岡は長谷川正勝籐工芸グループ師範。籐と言えば実用的な籠などを想像するが、福岡の作品はバリエーションが豊富。人形やオブジェ、花器や陶板と組み合わせた作品など、様々な芸術分野の展覧会を見ることから生まれるアイデアと素材の持ち味を知り尽くしているからこそできる繊細な手仕事が光る。

二人とも、「好きだから、人に見せたいから、ほとんど自己満足の世界よ」と笑う。しかし、単なる趣味という枠を越え、それぞれの分野で技を極めようとする職人のように感じられた。

ギャラリー千代堂 TEL:(076)275-0305


水友会・洋画展

2003年6月20日(金)〜7月2日(水) ひろた美術画廊(石川県金沢市)

田中俊夫「朝の西伊豆」

水友会は一水会の委員、会員、会友から成るグループ。この画家たちの絵は写実の美の鑑賞面では心の安らぎを与えるとともに高尚な気分にもさせられる。作家においては、特にこのクラスになると周囲の動きや批評、思惑などに右往左往しない落ち着いた様子が作品に反映して受け取れる。今回もそうだ。その世界はどっしりとしており、しかも絵に甘さが見られない。

展示の作品は30点。出品者は荒木幸子、江守マリ子、北清志、杉村雄二郎、高木利一、田中俊夫、政木良一、松浦欽子、松下久信。中でも150号の大作は名品、優品と対することができる。

松浦欽子「春を待つ」 江守マリ子「アタカマの風」

女性作家の二作品を見てみよう。松浦の「春を待つ」の舞台となっているのはこの会派ではお馴染みの長野県安曇野。山、川、野、木、花、等々を丁寧に描いて見せた。「この絵は前から中ほど、そして遠方の山まで動いている感覚で描いた」と言う。動く写実、新しい感性が滲んでいる。江守の「アタカマの風」の舞台は外国。中央にどっしりと若い女性、作者が得意のモチーフだ。この人物像を見ていると全体にわき出る輝きを感じる。

ともあれ大勢が所属する会派ではあるが、たゆみない歩みを支えてきた原動力のひとつがこれらの作品群であろうか。

ひろた美術画廊 TEL:(076)240-0007


釉陶・之乎路窯展

2003年6月18日(水)〜6月30日(月) ROSEin(石川県金沢市)

之乎路窯の向瀬孝之

今、どのような分野でも境界が崩れ、あるいは問い直されたりしている。「芸術」の世界でも絵画や彫刻を中心とした「美術」と「工芸」の線引きが薄れてきたようだ。さらに細かく考えれば例えば陶芸の世界では、いわゆる日用の美と芸術としての美がかつては区別されてきたが現在では混在しており、かえって個性的な作品を生みだしているようだ。

之乎路(しおじ)窯の作家、向瀬孝之の作品にもそういう傾向見受けられる。日用からオブジェまで作風は幅広い。姿勢は穏やかだがイメージを喚起する作品に無限の広がりがある。その原風景はここにあった。子供のころ釣り好きの父親に連れられて、早朝に、夕方に日本海へ舟で出た。海から見たアルプスの山々からの朝日や砂浜から眺めた夕日、夜の漁り火が今も脳裏に映ると言う。はじめのころは海や山のイメージでオブジェ的な作品を制作していた。今は宇宙がテーマ。月や星など幻想的モチーフで造形美を醸し出している。

幻想的な月のイメージ

向瀬は石川県志賀町赤住町の出身。窯名は「万葉集」にある歌人・大友家持の歌から引用した。高校卒業と同時に羽咋大社窯の磯見忠司に入門。日本新工芸会員、石川県美術文化協会課員で、入選は新工芸10回、日展8回。現在の窯を開窯したのは平成4年。

ギャラリーROSEin TEL:(076)286-2379


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