
角屋俊一陶展2003年9月5日(金)〜9月10日(水) グリーンアーツギャラリー(石川県金沢市)
角屋俊一は石川障害者職業能力開発校でやきものの指導員をしている。九谷焼の図案の製作や上絵付け、下絵付け、成形実習などを1年間教えている。角屋自身がやきものを始めたのは、今から25年前。九谷焼伝習生教室(現在は石川県立九谷焼技術研修所の開校にともない閉講)で轆轤を学んだのがきっかけだ。個展は2回目。普段は家の隅に追いやられている作品も、きちんと展示すればそれなりに格好もついた。 角屋の作品はどれも楽しみながら作られたような感がある。特に小皿や小鉢などは形も釉薬も染付けも表情豊かで、それだけで食卓を彩ってくれそうだ。日常使いの食器類に最も大切なことであると言える使い易さを追求し、軽く扱いやすいものを心掛けている。色は越前の土を使った温かみある色が中心。大皿、中皿、小皿、飯碗、鉢などバリエーションも豊富で、価格も良心的だ。 また、北陸の海をイメージした色絵陶板も掛けられ会場に彩りを添えている。 今後も自分流の作品を作り続けていきたいと語る角屋。どことなく作家の優しさがにじみ出るような、ほっとさせてくれるような作品達なのである。 グリーンアーツギャラリー TEL:(076)245-7222 |
5人の素材展2003年9月2日(火)〜9月7日(日) 浅の川画廊(石川県金沢市)
陶器の森章子、ガラスの渡辺継、アルミの角居康宏、木の般若芳行、竹細工の飯島正章という異なる素材を扱うその道のプロが一堂に会した。渡辺以外は長野県に居を構え活動しているのだが、クラフトフェアなどで作品を見かけることもあり、顔見知りであった。「趣味ではない、それぞれの分野を本業としているプロだからレベルも高い」と般若は言う。 陶芸の森の作品は、温かみのある色使いとぽってりとした形が印象的で味わい深い。ガラスの渡辺の作品は、金沢でも御馴染みで、透明度の高いガラスの美しさが技術の高さを物語る。アルミの角居は独特の世界を構築している。「始まり」をテーマとした力強いオブジェはただならぬ存在感で見る者を釘付けにする。般若は家具が中心。使う人の用途に合わせて作られる芸術性の高い作品だ。飯島の竹細工は細部にわたって丁寧な仕事が施され、工芸品を越えた芸術である。 これまで個展が中心だった般若も、「それぞれの個性が表れていて、なかなか見応えがある。シンプルだけれど難しい仕事をこなす人達の作品ばかりだから、お客さんも楽しめると思いますよ」と今回のグループ展に満足気だ。いずれも多忙な中で生み出された作品で、使い手の思いがにじみ出ているのだろう、堂々とした風格を備えている。 浅の川画廊:(076)222-5043 |
嶋田ハルエ染展2003年8月26日(木)〜9月2日(火) ギャラリー千代堂(石川県松任市)
美術の世界は洋画、日本画、彫刻、工芸、書の五部門に分かれて活動している。「染」は工芸に属するが特異な分野でもある。しかし、絵画や彫刻には見られない新たな美点を発見することがある。染は日本古来の技術であり、生活に必要な要素もあって、いつの時代もよく見かけ親しまれてきた。それはまた、ちょっと視点を変えて見るだけで楽しく味わい深いものになる。 そんなことを考えて嶋田の染芸術を見ていると新しい感性が伝わってくる。染のれんにはオブジェ的な絵画を描いて合一性を表現している。絵は一創会の西山英二が担当しており現代的な作品に仕上げている。布花もいい。「アートフラワーや造花とは違います。染めた布で花弁をひとつひとつ丁寧に手で組み合わせていきます。すると花が生きているように表現してきて、まさに生花になってくれます」と語る嶋田はこの道30年である。 決して楽な道ではなかった、という嶋田は故郷の石川県七尾市から上京し、この道に進んだ。現在は石川県辰口に住居を構え、今では7教室で後進の指導に当たっている。会場ではその教室の生徒らの作品も展示してあり華やかだ。染は試行錯誤の世界、ハングリーなまでに勉強していかなければ志向の作品にならない、という。嶋田の染の世界は広がり続けるであろう。 ギャラリー千代堂 TEL:(076)275-0305 |
古く美しきものそしてガベと呼ばれる絨毯2003年8月20日(水)〜8月30日(土) G-WING'Sギャラリー(石川県金沢市)
ガベと呼ばれる絨毯は、南イランの遊牧民の生活に欠かすことのできない生活用品で、素朴な風合いと使い込むうちに出てくるつや感が魅力的だ。全て手作業のため、1枚織り上げるのに数ヶ月かかってしまう。デザインは様々で簡略化された動物や植物などが、草木を原料とした鮮やかな染料で織り込まれている。大胆な構図のものやどこか物語性をもった作品まで、それは1枚のアートといっても過言ではない。きっと大草原の中、遊牧民たちが一息つくのに使ったり、ガベの上で子供達が眠っているに違いない。異国の生活が思い浮かぶような温かみあふれる絨毯なのである。 一方の骨董品は国境を越え、西から東さまざまな国の美しい形が並ぶ。よく見つかったと思わず叫んでしまいたいほど古い土器や、女性の胸を飾ったであろう美しい首飾り、一体何人の手に渡ったであろう金貨や銀貨。当時は普通に生活の中に溶け込んでいたこれらの品もまさかこんな形で並べられるとは思っていなかっただろう。どんな人がどんな生活の中で使用していたのか、などと遠い昔へ思いをはせるのも、またその時代を勉強するのも骨董品の楽しみ方のひとつであるかもしれない。美しいものは次の時代へと受け継がれていく。会場に並べられた骨董品たちも次の所有者を待っているかのように鎮座している。
永い眠りからさめ、その歴史を今に伝える骨董品と、南イラン・ザグロス山脈に住む遊牧民が糸を染め、紡ぎ、織り上げた絨毯。相反する古いものと新しいものが見事に融合し、新鮮な空間を創りあげている。美しいものを次代に伝えることの大切さが分かったような気がした。 G-WING'Sギャラリー TEL:(076)238-0788 |
Overflow ohkuwa aya exhibition2003年8月10日(日)〜8月17日(日) ギャラリー忙中閑有(石川県金沢市)
故郷を離れ、都会で頑張っている若者はたくさんいる。大桑彩もその1人だ。金沢市出身の大桑は現在25歳。地元の高校を卒業後、嵯峨美術短期大学表現デザインコースへ進学。卒業後は大阪にある文具メーカーに勤務し、文具デザイナーとして活躍している。 しかし、大桑にはもうひとつの顔がある。出入りしているクラブのイベントにアーティストとして参加しているのだ。現在はフライヤー(広告)を担当しており、デザイナーとして活動している。「大阪は刺激を受ける要素がたくさんある。作品を評価してくれる場所もたくさんある」故郷は好きだが、なかなか作品を発表する場も認めてもらえるチャンスも少ない。大阪を離れることができない理由はそこにあるのだろう。 手描きのラインが好きだという大桑の作品は、花や女性が中心。優しいタッチのイラストは淡いトーンでまとめられており、さりげないセンスの良さがうかがえる。キャラクターは、動物などをモチーフに、ポップでキュートな色使いが魅力的だ。会場にはこれまで手掛けた可愛らしい文具やポストカード、クラブ「Lab」の仕事、コラボレーション缶バッジなどが並び、作品たちもどこか誇らしげだ。 ギャラリー忙中閑有 TEL:(076)262-6510 |
彫刻2人展2003年8月4日(月)〜8月16日(土) ギャラリーコンフリー(石川県松任市)
絵画や工芸の盛んな石川では彫刻の展覧会は珍しい。今回は得能節郎と銭亀賢治というビックネームが大作の合間に作った小品を持ち寄った。「彫刻と言えば大作をイメージする人が多くて、どこか別世界のものと感じている人が多いようだ」と得能。美術館や公園などで大作を見る機会が多い中、小品となると実に興味深い。 意外なことに得能にとっては初めての個展となる。「こういう場所でライトが当たった作品を改めて見直すと、ああした方がいい、こうすれば良かったと修正点が見えてきて恥ずかしいものだ」と苦笑いしながら初めての展覧会について語る得能。2人共モチーフが女性ということもあって不思議と作風が似ている。彫刻の場合、作風が異なる作品を並べると、どこかちぐはぐな印象となり違和感を与えてしまう。だから似たような作風を持つ二人の作品は見る者に安心感を与え、女性らしさと遊び心溢れる仕草をみせる女性や少女像は見る者の心を和ます。 得能の作品のヒントになるのは、日常生活で見る何気ない女性の姿や旅先で印象深く残った女性の姿。そこからインスピレーションを受け作品となる。一方、銭亀の作品は、その表情や仕草から内面を感じ取ることができる女性像。「去りゆく夏」は、夏を惜しむ女性の姿。遠く海でも見つめているのだろうか、凛とした表情に女性の優しさと強さを感じられる。
今回、得能は立体10点、レリーフ7点。銭亀は立体6点、レリーフ3点を出展。以前、このギャラリーで個展を開いたことのある銭亀が得能を誘っての2人展である。「モデルを使って女性らしさを表現できるものを作っていきたい。自由に作りたいね」と今後の抱負を語った。 ギャラリーコンフリー TEL:(076)294-2299 |
高光史也陶展2003年8月7日(木)〜8月12日(火) ギャラリーノア(石川県松任市)
思いのままに――今回の展覧会に付けられたサブタイトルだ。タイトル通り、心のおもむくまま、自由に造られた、斬新で刺激的な作品が会場に並ぶ。作家は高光史也。陶芸家高光一生を父に、高光一雅を兄に持つ高光家の次男。日本新工芸石川会に所属し、日展を中心に活躍する若手実力派だ。 高光は地元の語学系大学を卒業後、一般企業に就職した経歴を持つ。4年間のサラリーマン生活の後に周囲の勧めもあり、自然な形で陶芸家の道に転向した。個展は今回で3回目。現在は楽しくて仕方がないといった感じだ。その作風は父や兄が行っている「たたら板」での形造りや轆轤より自分らしさが表現できる手びねりが主である。花器「摩天楼」は新工芸石川会展北國新聞社長賞を受賞した作品。大胆な形と摩天楼の夜を連想させるような都会的でありながら退廃的なイメージが漂う秀作。このほか会場にはゆるやかなカーブを描くフォルムの花器や遊び心溢れる器が並び、高光の世界を展開している。 「今でも才能があるかと言われれば分からないが、褒められればやっぱり嬉しい。いろんな物をたくさん見て常に勉強してます」と謙虚な姿勢。また、「自分には日本人の血が流れている。そこに異国の作風を融合させたようなものを作りたい」と今後の抱負を語った。形式にとらわれず、型破りな作品を生み出す高光。持って生まれた才能と努力が今後どのようなものを創り上げるのだろうか、今後に期待したい。 ギャラリーノア TEL:(076)276-4486 |
2003北陸二紀展2003年8月7日(水)〜8月12日(火) アートシアターいしかわ(石川県金沢市)
10月16日から東京都美術館で開かれる二紀展を前に会場は見応えのある作品が並んでいる。特徴的なのは、いずれも鑑賞用の絵というより考えさせられる絵である。じっくりと作品が訴えるものを感じ取ろうと、その場を離れることはできない。 絵画部門は80号から150号までの大作絵画47点。高嶋脩二の「パイネ夜明け前−脱皮」は、まさに新しい生命が誕生しようとしている。周りを囲んでいた木が取り除かれ、ベールが剥がれようとしている。期待と不安の入り混じった作品。浅倉雅子の「オラトリオ 華と咲きましょ。」は無数の顔が画面に広がる。それは聖職者であったり尼僧や貴族など様々だ。ユニークな作品でありながら、どこか荘厳な雰囲気が漂う。中井喜美子の「蜉蝣の界(赫)」では、母と子の姿が表現されている。樹と同化する女性に群がる無邪気な子供たち。子らを優しく見守る母性溢れる優しい作品だ。
彫刻部門は4点と数は少ないが存在感のある作品が並んでいる。末政哲夫の「変容 あるモニュメントのための構想」は対象的な形である円と四角を組み合わせた作品。半円から伸びる立体たちは空を目指す。組み合わせの面白さが光る作品である。いずれも本展を目の前にした意欲作ばかりであり、会場に訪れる人々も足を止め、絵画との対話を楽しんでいるようであった。 アートシアターいしかわ TEL:(076)220-1888 |
Beeクラブ展2003年8月7日(木)〜8月12日(火) ギャラリー千代堂(石川県松任市)
日本画、水彩画、陶芸、和紙、書、洋画の6分野の作品がそれぞれ個性を発揮している。産業でいえば異業種の集まりである。が、芸術の世界では「競う」というより「挑戦」である。そこには美の追求という命題がある。それに向かって何年も何十年も挑むのである。Beeクラブ(友人同士集まりの場)も各々が美の奥の深さに魅せられて日夜努力している。「いつも無心。欲は心を卑しくしてしまう。心をこめて制作する姿勢をモットーに励んでいる」と6人は語る。 メンバーは喜多岡修(日本画)、関屋賢次(水彩画)、高畠俊彦(陶芸)、徳田小夜子(和紙)、源香仙(書)、横地三枝子(洋画)で松任美術作家協会の所属。2度目のグループ展。 喜多岡は几帳面な絵柄で繊細な筆さばきが特徴。関屋は祈りの絵画で癒してくれる。今回は水彩だが丁寧な描写で存在感を感じる。徳田は「和紙あーと」の言葉を創出しロマンの世界を展開している。高畠はラクダなど動物をカップなどに表現し意表をついた。源の書は静寂のなかに「時と生命」を表した。横地は大胆な構図で作家の内面を表現した。奥の深い色彩は創造性がありパワーさえ感じる。 展示の多くはどれも熟成の感がある。松任には金沢にはない熱い息吹のある作家がひしめいており、個性も強烈だ。教室やグループも多く、新しい作家もどんどん誕生しており、美術の松任を形成している。 ギャラリー千代堂 TEL:(076)275-0305 |
布と遊ぶ 堀 揖子 藍色の世界2003年8月6日(水)〜8月11日(月) 画廊プラザ樹(石川県金沢市)
藍色の世界が見事に展開されて新たな美の発見を体験することが出来る。日本新工芸展石川会展の奨励賞となった「森の響」は宇宙の彼方に引き込まれるような迫力がある。一面藍色のなかに点々と散りばめた白色の粒、幻想の世界でもある。展覧会のタイトルに「布と遊ぶ」とあるが、そこには「芸術と遊ぶ」といってよいほど挑発的な作品である。 堀は語る。「藍色はアフリカにも中国にもどんな国にもある。が、日本の藍は心を打つ藍、とにかく澄み切っていてきれいなのです」と。「外国の藍で染めた布は洗ううちに薄くなってしまうが、日本の製品は大丈夫なの」。つまり外国のものは1、2回の染めで終わるが、堀の作品は何回も染め上げるからだと言う。一見易しく思われるが、その藍色は生き生きとしており、躍動感があり品格がある。 堀は金沢市の郊外で工房を開く染色作家。「工房自在」と名付け創作活動をしている。特に注目されているのが「戸室染め」の開発。金沢城の石垣などに使われている戸室石から顔料を作り出す手法だ。乾燥させた戸室石を微粒子状に砕いて水に混ぜ上澄みから取り出した顔料成分で生地を染めるわけだが、色が薄く染まりにくいのが難点。まだ開発中で将来、赤や青の石の色で染めた作品がお目にかかれるのもそう遠くはない。 画廊プラザ樹 TEL:(076)262-6276 |