
小田根五郎 個展2003年10月31日(金)〜11月9日(日) グリーンアーツギャラリー(石川県金沢市)
「金沢百景」で馴染み深い小田根五郎の個展である。今回は、3年前に同ギャラリーで開催された素描展の作品を油彩にした作品や「金沢百景」の作品などを出品した。国内では京都、奈良、金沢、国外ではパリ、トレド、ベネチュア、ミラノといった歴史ある古い都市を中心に約35点。 フランスの古城モン・サンミッシェルを描いた作品は、静かにそびえ立つ荘厳な僧院と海面に映る建物の姿との対比が美しく、トレドを描いた作品は、画面に広がる街並みが旅情を誘う。また、近年取り組んでいる「映る」ということを追及した作品では、実像と虚像を同時に表現するという難しい課題に取り組みながら、繊細で力強い画風を見せている。 金沢美術工芸大学教授として教鞭を執りながら、北陸朝日放送で放映中の「金沢百景」への出演と多忙な日々を送っている。今後は洋画の題材としては珍しい、東大寺や平等院といった木造建造物を取り上げていきたいと意欲を見せた。 会場には作品の裏話やエピソードなどのコメントも添えられており、画家の思いを垣間見ることができる。 グリーンアーツギャラリー TEL:(076)245-7222 |
幸せ陶器サンポ展2003年10月28日(水)〜11月9日(日) ギャラリーシャンブル100 (石川県松任市)
これが若者のエネルギーというものなのか。脳細胞が活性化していく感覚を味わさせてくれる展覧会に出会った。今から歩き出す石川県寺井町の九谷焼技術研修所で学ぶ3人の作品200点が並ぶ。爽快で気持ちがいい。どの作品もダイナミックで流動感があり、しかも温かい。同研修所研究科の船木大輔(26)、山下紫布(22)、又間美保(23)は「挑戦です。1年間の成果を見てほしい」と胸を張る。 テーマは「人」。3人が合作して作製した陶器の「3脚のイス」は見る側の胸をわしづかみにするような作品だ。若いから出来るのだろう。船木は1昨年、金沢市工芸展で同市工芸協会長賞を受賞し実力を証明した。「昨年の個展ではディスプレイが思うようにできず満足感がなかった。今回は3人で知恵を出し合って展示した」と意欲を示す。その山下、又間は女性らしい繊細な作品を出品した。オブジェもあれば、花器や茶碗、皿など多彩だが、どれも新鮮だ。 「人」に対する温かみのある作品が多く、そこに3人の人柄も見え隠れする。そんなところから器の美が生まれてくるのであろう。初心を忘れずに取り組んでほしい。 ギャラリーシャンブル100 TEL:(076)275-0935 |
森山邦應作陶展2003年10月30日(木)〜11月4日(火) ギャラリーノア(石川県松任市)
陶芸家は一般にとことん土と形にこだわるものだが、地元の土を自分で探し、掘る、という作家はそう多くはあるまい。石川県金沢市土子原町に工房を構える陶芸家、森山邦應もその一人だ。父博応を継いで陶芸家の道へ入ったのが20代。土に生きてきた男である。その土の風合いを生かした抹茶碗や花器、水指しなど70点が品格のある構えで並んでいる。底の表面の凸凹が不思議な芳香とエネルギーを表している井戸茶碗が豊穣な世界を醸し出し、薄い紫色が鮮やかな徳利形の花器はリズム感に満ちていて清清しい。
森山の作風は松根窯といい、「柔」と「剛」を備えた風土に根ざしたものだ。「備前には負けない作品ができた。とにかく苦労したし、ともあれ疲れました」と語る。それが力作を生んだ源ではなかろうか。自然灰釉、焼き締め、粉挽き、刷毛目の作風には独特のものがある。守山は言う。「いつも笑顔と感動を送り、人生に感謝、信念を持って生涯創作し、一期一会の心を宝とします」。作品にその言葉が滲んでいる。 ギャラリーノア TEL:(076)276-4486 |
赤を藍する器たち・多田鐡男展2003年10月22日(水)〜11月3日(月) 晴組+桃組(石川県金沢市)
会場には注器やマグカップ、角皿、鉢など、こんな器で食卓を囲んでみたいと思わせる使い易そうな器が揃っている。主役の座は料理に譲り、器はあくまでも脇役として料理を引き立てるのだが、器次第で料理の良し悪しが決まることもあって気が抜けない。しかし多田鐡男の作る器は、どんな料理も受け止めてくれそうな心配いらずの作品である。 形はいたってシンプル。上絵、染付、赤絵といった九谷らしさを残しつつ、決して華美になりすぎない赤や青が効いている。特に赤絵はすでに貫禄さえ感じさせるような落着いた印象を与え、手馴れた作業なのだろう、さっと描いた色絵が印象的。温かく優しい母の印象だ。一方の青は潔い線で飾られ、白と青のコントラストが美しい。しかしながら豪快で力強い印象も与え、こちらは父の印象。だから赤(母)を愛する青(父)なのだろうか。 豊かな生活は豊かな食生活からと言われるが、それらを盛り付ける器の存在も重要だ。そんなことを教えてくれるような気がした。多田鐡男は1945年生まれ。「陶房・鐡」 主宰。 晴組+桃組 TEL:(076)252-8093 |
鍛冶師 河上知明 灯りとひびき展2003年10月23日(木)〜10月28日(火) ギャラリーノア(石川県松任市)
無機質で冷たい印象を受ける鉄が灯りを受ける燭台や癒しの音色を奏でる楽器に変化する。河上知明の作品は力強さの中に温かさを備え、鉄は温かいものでもあるのだと私達に再認識させてくれるようだ。ステンドグラスと組み合わせた灯りは漏れる光さえも美しく、優しく温かい光を灯す。チタンや鉄でできた珍しい楽器「三昧琴(ざんまいきん)」は、皿のような形状で大きさや厚みの変化がつけられており、美しい音色を響かせる。チタン製の三昧琴は教会の鐘に近い荘厳な音色。鉄製の三昧琴はどっしりと厚みのある音色。
音色は異なるが叩いていると次第に癒されていくのを感じることができる。
一方、燭台はまるで螺旋を描きながら天へと伸びる植物のように堂々とした風格をたたえている。河上は「地面から伸びようとするエネルギー、生命力を表現したら植物のようになった」と話す。ゆるやかで美しいフォルムもさることながら、鉄を自在に扱う鍛冶師としての確かな腕がそこにはある。 |
インド細密画展2003年10月23日(木)〜10月28日(火) 犀川画廊(石川県金沢市)
ミニアチュール絵画と呼ばれるインドの伝統的な細密画は、その高度な技術ゆえ集中力と時間を要する仕事である。そんな細密画を独学でマスターしたのはモハメッド・アリ・カーン・ゴーリ。1961年インド・ラジャスタン州ジャイプール出身。
15年前から日本に居を構え、細密画の素晴らしさを伝えている。 肉眼では捉えきれないほど細かな部分を描くには、リスの尾で作られた細い筆を使用する。描くのはインドの民話、宮廷物語、古代王の肖像、カマ・スートゥラ、動物や鳥など。岩や植物などオリジナルの絵の具で、シルクや和紙、象牙に描いていく。「Tantra(タントラ)」には天文学的要素が取り入れられ、魔よけの力を持つという。「Mughal-Raui(ムガル・ラニ)」では、ルビー、サファイア、エメラルド、パールといった宝石が埋め込まれた繊細な仕事にため息がもれる。今回出品された作品で最も小さいものは1.2cm×2.4cm。会場ではルーペを使っての鑑賞だが、制作するときは肉眼である。おかげで視力は弱ってしまったとか。
会場では繊細な線の美しさや鮮やかな色使いを楽しめるとともに、モハメッド・アリ・カーン・ゴーリが絵の持つ意味や不思議なパワーについて解説してくれる。金沢での個展は初めて。今後も全国各地で個展を開き、年末までスケジュールは詰まっている。インドと日本の美の架け橋にならんことを願ってやまない。 |
草木で彩る木の細工 三浦栄子展2003年10月23日〜10月28日(火) 犀川画廊クラフトコーナー(石川県金沢市)
染織で見かけるローケツ染を楠や欅に施し、引出しや盆、ティッシュカバーといった生活を彩ってくれそうな作品が並ぶ。モチーフはコスモス、紅葉、椿、桐、梅など草花が中心。水彩を描いていることもあって花を表現するのはお手のものだ。 |
真鍋千恵子陶展2003年10月17日(金)〜10月23日(木) くらふと&ぎゃらりぃOKURA(石川県金沢市)
飼っている猫をモチーフにした招き猫に迎えられ、会場はゆったりとした時間が流れている。「これでも九谷なんですよ」と必ず来場者に添えるぐらい真鍋の作品は、淡い色、自由な線で彩られ、遊び心溢れるものばかりだ。 |
山本容子近作展2003年10月4日(土)〜11月3日(月・祝) 金沢湯涌創作の森 版画工房(石川県金沢市)
巡回展「山本容子の美術遊園地」も今年の春で終了し、次はどんなことをやってくれるのか、と期待が集まる山本容子の近作展。お洒落でリズム感あふれる銅板画は相変わらず、今回は創作の森オープンを記念し、軽やかでリズム感あふれる画面構成と美しい手彩色のキャラクター達が愛らしい作品が会場に並んでいる。
ファウストシリーズ、音楽家シリーズ、エンジェル・アイ・シリーズ、エンジェル・ティアーズシリーズ、はなうた巡礼シリーズ、グリーティングシリーズ、表参道スクリーンプロジェクトで注目を集めた、わたしの時間旅行シリーズ全76点。はなうた巡礼シリーズは童謡をモチーフにした作品。「どんぐりころころ」や「かごめかごめ」といった馴染み深い童謡をコミカルに表現しており、思わず口ずさんでしまう。 |
藍と草木の染織展2003年10月4日(土)〜10月19日(日) 金沢湯涌創作の森 交流研修棟(石川県金沢市)
金沢湯涌創作の森のオープニングイベントのひとつ。古民家を改修した趣のある会場に3人の染織家の作品が彩りを添えた。 藍型染の内藤英治は、自然の情景を描いた屏風。「慈雨五月」は田園に降る雨の様子。ジャパン・ブルーと呼ばれる藍の濃淡を活かし1枚の風景画として表現。ぽつりぽつりと雨音が聞こえてくるようである。このほかたけのこを描いた存在感のある作品なども出展している。絞染の竹田耕三は、藍の着物や帯。伝統的な絞りの技術を活かした着尺や訪問着、浴衣などが並ぶ。藍色は夏をイメージさせるが、竹田の作品はしっとりとした大人色。古典的な柄をモダンにアレンジした美しい作品が並ぶ。村上良子の紬織は自然の美しい情景を色で表現しているよう。大胆な構図は抽象絵画のようであり、凛とした雰囲気が漂う。
古き良き時代を忍ばせる古民家と伝統工芸である染織作品の饗宴。いずれもレベルの高い秀作揃いである。 |