富永和雅・一洋染織展

2003年11月20日(木)〜11月28日(金) G-WING'Sギャラリー(石川県金沢市)

「あかり 菱形」

金沢で染織業を営む富永和雅・一洋夫妻は、夫が糸を染め、布を織る。妻はその布で袋物や衣服を作る。会場にはあかりや座布団、タペストリーや敷物といった生活を彩る作品から袋物やマフラー、ストールといったこれからの季節に相応しい小物たちが揃う。柿渋染や草木染で作られた作品は、たくさんの色が存在する現代社会の中で自然から生み出される色の素晴らしさを改めて感じさせてくれる。

「あかり 横長四角」と柿渋のタペストリー 冬の装いを彩る小物たち

柿渋染は科学染料のない昔から染められてきた染物で、生地を強くし、水をはじき、防虫効果もあることから、古来より利用されてきた。布を染めるのではなく、糸から染め上げるという大変手間のかかるもので、何度も何度も染め、日光をあて、時には雨にさらし、納得の色がでるまで長い工程をかける。また、糸を漆でコーティングした創作漆糸というオリジナルの糸を織り込んだ作品は、柿渋と漆という自然素材の風合いと色合いがうまく溶け込んで趣ある作品となる。

富永夫妻は、自然の恵みを大切に大切に染め上げ、織り込んでいく。自然に対する感謝の念があるからであろう。作り上げられた作品のどれもが優しく、大地のように包んでくれる温もりが感じられる。

G-WING'Sギャラリー TEL:(076)238-0788


マイ・ルイ2人展

2003年11月20日(木)〜11月24日(月) ギャラリー忙中閑有(石川県金沢市)

ファンタジックな「雪だるま」

メルヘンの世界「青リンゴ」

中谷麻衣(マイ)と川高累以(ルイ)のふたりが新しい試みでイラストに挑戦した。イラストにも様々な表現方法がある。「すごい、というほかに言葉がない」と来場者は言った。超繊細なタッチ、その緻密な作品はまるで写真のようだ、とも。作品のすべてに色彩と光と影が揺らぎ、動く絵画のようでもある。宇宙に入って漂う浮遊体験のような楽しさと緊張感が混じっていて、なにか灰色の気持ちから一気に陽気な気分にさせてくれる展覧会である。

中谷は石川県立工業高校工芸科で陶芸を学んだ。今回は思い浮かんだものを水彩と色エンピツでイメージ通りに素直に表現したものだ。色エンピツは色彩の広がりと空想が重なりあって楽しい世界を演出してくれる。中谷の作品にはその精神が十分表現されていておもしろい。川高は名古屋モード学園メイク科卒でイラストを学んだ。好きな書と絵画でガッシュや墨を用いて生きものや自然を描いた。墨というのは細部に関係なく全体を瞬く間に変化させる。そこに創造力を超えた魅力を感じるのである。川高の作品もまたイメージの深まりと新鮮さに感動してしまう。

創造力が豊かな「闇」 魅力いっぱいの「光」

現代社会は常に変容している。芸術もまたしかりである。既成概念から決別し、自由な創造こそが新しい文化を醸し出すのである。北陸で活躍する若い作家たちもまた挑戦しているのである。

ギャラリー忙中閑有 TEL:(076)262-6510


澤崎俊治作陶展

2003年11月11日(火)〜11月23日(日) ギャラリーシャンブル100(石川県松任市)

優雅な花生け

明かりも鮮やかな花器

赤い斑点の茶碗
味わい深い皿と水差し

陶芸の世界では「芸術の美」「日用の美」「クラフトの美」があり、その各々に魅力があり、見る側を楽しませてくれるものである。さらに陶芸家自身の力を教えてくれる作品には強い魅力と愛着を感じさせる。石川県七尾市の山中で窯を構える作家、澤崎俊治(創造美術会会員・七尾美術協会常任理事)の作品もそうである。日用からオブジェまで作風は幅広いが、今回は「器の美」を見せてくれた。

志野焼の抹茶茶碗や花器など60点を展示、志野焼独特の風合いと素朴なタッチが生きた作品で、茶碗の土は白山麓で採取した土を混ぜて赤い斑点を表現した。石動山の土は鉄分を多く含み固いのが特徴。その両方の持ち味をうまく生かして作り上げたと言う。また、花器にはヤマゴボウやニガタケなども生けられ、彩りと穏やかな陶器の空間を醸し出している。

崎の窯名は「四位伝谷釜・伊須流岐(いするぎ)焼」。国指定史跡で石川県鹿島町の石動山(せきどうざん)にある神社の名前に由来する。山頂は日本海や白山を一望できる風光明媚なところで陶芸家にとっては格好の場。そんな環境のなかで作品が生まれた。

ギャラリーシャンブル100 TEL:(076)275-0935


・・・てみる 谷口淳一展

2003年11月6日(木)〜11月30日(日) INAXスペース金沢(石川県金沢市)

ギャラリーの年間テーマである「み」から「・・・てみる」という展覧会名を付けた谷口淳一は、1958年富山県出身の家具職人。JUN工房というオーダー家具を製作する工房の代表を務めるかたわら、様々なジャンルの作家とコラボレーションした展覧会を開催している。

会場に並べられた椅子にドキッとする。アフリカをイメージしたというが、確かに4本の脚をもった椅子たちは動物のようであり、今にも迫ってくるような威圧感さえ感じられる。さらに、漆を塗って削って、塗って削って仕上げられた椅子は木の内部まで漆が染み込み、重厚感を感じさせる。椅子のほかにも漆器や木の実に見立てた不思議な形の容器などが展示され、見た事のない奇妙な空間を形成している。

作家は作品を作ってみる、試してみる、考えてみる。我々は触ってみる、座ってみる、飾ってみる。お互いにとっての挑戦ともいえるこの行動で、新たな発見をする。思い切って座ってみた。さすが家具職人。座り心地は言うまでもない。

INAXスペース金沢 TEL:(076)262-1701

 


本多隆之個展

2003年11月13日(木)〜11月18日(火) ギャラリーノア(石川県松任市)

「月明かりの稲」F60

「稲と石」F6

「コスモス」F4

随分渋い素材を選んだものだと、この絵を見て思う。本多隆之は1978年生まれ、金城短期大学美術学科油絵コースを卒業。今年、石川県現代美術展佳作賞を受賞した他、一枚の繪現代洋画精鋭選抜展銅賞を受賞するなど、近年実力を付けている若手である。

今回出品した24点のうち20点は稲を描いたもの。普段何気なく見ている風景に目をやれば、人々に忘れ去られながらも力強く生きるものたちがたくさん存在する。そんな忘れ去られたものを見つめ直し、本多は真っ直ぐに伸びた稲や静かに鎮座する石に心惹かれた。

「月明かりの稲」は水際の稲と石。そして水面に映る稲と石の姿が印象的な一枚。わずかな月明かりに照らされ、稲はその姿を現す。石は静かに鎮座するのだが、力強くてたくましい。塗り重ねられた色が重厚感を与え、月明かりに見立てた金箔が効果的に用いられている。このほか、稲と石を組み合わせたものや天に向かって真っ直ぐに伸びる稲を描いたもの、コスモスや人形など素朴な題材ながら力強さを感じるものなど、様々な作品が展示され、印象深い展覧会となった。

ギャラリーノア TEL:(076)276-4486


一創会北陸支部 2003女流作品展

2003年11月11日(火)〜11月17日(月) ギャラリー新神田(石川県金沢市)

一創会北陸支部に所属する女流画家が久しぶりとなる作品展を行っている。メンバーは、久郷篤子、五香利恵、篠田佐和子、高橋悦子、谷口佳子、新田千鶴子、松本陽子、水上正子、山川博子、了海正枝の10名。

一創会は自由な画風であり、会派独特の色というものを感じさせない。抽象から写実、具象など自分が描きたいものであればなんでもよい。ランプを配した静物画、屋根の並びを描いた風景画、小学生の息子の姿を描き留めた作品や裸婦やトルソー、女性と建物を組みあわせ女性の内面を描こうとするもの、はにわや少年、ピエロで心象を描いたものや初舞台の踊り子の感情が汲み取れるような抽象画といった、バラエティに富んだ作品のどれもが活き活きと描く楽しさを伝えている。また女性ならではの優しさや繊細さ併せ持ち、内面の美を表現している。会派にとらわれず自由に表現したい、そんな軽やかな女性たちの飛躍が楽しみである。

ギャラリー新神田 TEL:(076)292-0862


越野あき子 個展 ―予感・祈り2003秋―

2003年11月5日(水)〜11月10日(月) ギャラリーアルトラ(石川県金沢市)

越野あき子と「In April」6F

「予感・祈り'01」130F

「贈られた花束」12F

写実的でなく抽象的でもない。しかし画面の前に立つと心が穏やかになってくる。そんな不思議な力を備えた越野あき子の作品は、近年、予感と祈りをテーマに制作されている。未来への前向きな予感と混沌とした現代社会に対する切なる祈りや感謝する気持ちをリンクさせ、画面に描きこんでいく。

3点の大作はいずれも空間に女性を配し、色を抑えた静かな情景。まるで聖母のように静かに優しく微笑む女性は仏のようでもあり、温かく見守りながら明るい兆しを運んできてくれることを予感させる。小品では、異国情緒溢れる水甕に生け込まれた薔薇の瑞々しさを描いた作品や、果物、天使など温かい作風が魅力的な作品が揃う。

作品をよく見ると、ところどころにちぎった紙が貼られている。なにかの文様のようでもあるし文字のようにも見える。これは図書館で探した古い天体図や聖母、天使の版画をシルクスクリーンにしてちぎったもの。絵の具同様に描くための道具として効果的に使用し、重厚感ある予感と祈りの世界を広げている。

ギャラリーアルトラ TEL:(076)231-6698


石川県ゆかりの日展作家展

2003年11月1日(土)〜11月12日(水) ひろた美術画廊ANNEX(石川県金沢市)

広々とした空間が魅力的な新ギャラリー
塗師祥一郎「山村」F100

松本昇「裸婦群像」F130

ギャラリーのオープンを記念しての展覧会。石川県出身者である村田省蔵、塗師祥一郎、円地信二、松本昇、端名清、故奥田憲三という日展作家6氏の作品が約20点。100号を超える作品などは美術館などでしか見る機会がなく、これほどの大作が一堂に並ぶと圧巻である。

松本昇の裸婦は、均整のとれた女性の姿の瑞々しさと清らかな美しさを見ることができ、内面の輝きを感じられる作品。塗師祥一郎は山村の雪景色を描いた。雪深い山村の銀世界を情緒豊かに温かく仕上げている。村田省蔵は、田園風景の中に立つ木々の姿が印象的な作品。端名清はミコノス島の夕暮れを描いた。白壁の建物と赤く染まるエーゲ海の対比が美しい作品である。円地信二は得意の女性像。暗い背景に映える色彩豊かな女性は美しく、独特の世界が広がる。故奥田憲三は、広がりのある風景に漂う雲が郷愁を誘う作品など、大作から花や風景を描いた小品まで、さすがと唸る秀作揃いである。

ひろた美術画廊ANNEX TEL:(076)240-4440


北出不二雄 作陶展

2003年11月1日(土)〜11月11日(火) ひろた美術画廊(石川県金沢市)

近年は東京や大阪での個展が主であった現代九谷焼の重鎮である北出不二雄の個展である。伝統的な九谷焼の世界に「彩陶」というオリジナルの技法で新風を吹き込んだ氏の作品が並べられている。壺、花器、皿、水差、陶額などいずれも色彩豊かで、本格的な九谷焼からモダンなものまで幅広く、これまでの軌跡を辿ることができる。

「染錦花文散壺」

「紫釉石窟佛台皿」

「彩陶」は土が乾く前に文様を彫って焼き締め、色をのせる氏独特の技法である。美しい文様から現代的な文様まで、年齢を感じさせない若々しい作品は熟練の技でないと難しい。豊かな色彩を上手く組み合わせるバランスの良さと構成力に優れているからであろう。一歩間違えれば下品になってしまう紫も上品にまとめ、効果的に組み合わせている。また、描かれている植物や動物は、しっかりとしたデッサンがなくては表現できず、観察力と描写力の正確さも見てとることができる。完成された美しさとは、作家のたゆまぬ探究心と努力から生み出されるのかもしれない。

ひろた美術画廊 TEL:(076)240-0007


五味祥子 個展

2003年11月1日(土)〜11月9日(日) 美術サロンゆたか(石川県金沢市)

「遺跡の人」F4号
「羽化する人」F4号

二科展パリー賞受賞作品「地熱圏」F100

金沢での個展は4年ぶり。これまでは2年の1度のペースで銀座で個展を開催し、精力的に作品を発表してきた。トルソーを配した初期の作品から近作まで、小品から大作と五味祥子の画業を辿ることができる。

「遺跡の人」では、ポンペイを訪れた際に、古い石畳など歴史を感じるものに刺激されて表現した作品。なにかを抱え込んでいるようなどことなくもやもやしたものを表現し、今までの自分を重ね合わせている。一方、「羽化する人」は、どことなく晴れやかなイメージ。子育ても終わり、画家としての円熟期を迎えた五味自身の姿である。パリー賞受賞作品「地熱圏」は、灼熱の赤に描かれた色彩豊かな人物との対比が面白い。その頭は古代エジプトのファラオを連想させ、想像を掻き立てる。様々なイメージを重ねることによって画面に深みが増し、強烈な印象を与える。

また、画面の質感も面白い。絵の具を厚く塗り重ね、漆喰のような雰囲気を漂わせたり、ガーゼのようなものを使ったり、岩絵の具のような質感も面白い。様々な表現を模索しながら自らの画業を確立しようとする姿は、まさに羽化する人なのである。1949年甲府市出身。金沢美術工芸大学油画科卒業。二科会会員。

美術サロンゆたか TEL:(076)232-1341


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