ロク展 rokuten

2004年3月19日(金)〜3月24日(水) ギャラリー新神田(石川県金沢市)

大西佑治「時計の針を構築する」
榊原正修「心の地図」

今年、金沢美術工芸大学油画専攻を卒業した6人によるグループ展。気心の知れた仲間が集まり、この4年間に制作した作品を所狭しと展示している。

会場に入ってすぐ右側に並ぶのは、大西佑治の作品。画面中央の吹き出しや星印、子供の手に持たせた小さなタバコなど、思わず描いてしまったというワンポイントに、こちらも思わず目を止めてしまう。いくつもの写真でコラージュし、それをベースに描いた作品からは、時間の推移やそこから生まれた変容を表現していこうとする作家の意図が伝わる。

坂元博人「僕のK.N(左)」「内省の時(右)」
上野亮介「壁とCDラック」

4年生になって、ようやく自分の表現をありのまま出せるようになったと話すのは榊原正修。作家の感情が絵の中のユニークな人物たちによって代弁されている(会場では、感情の解釈パネル付き)。

坂元博人は、人生のある時間を共に過ごした自分の友人を描く。モデルを繊細に、丁寧に扱うその作品からは、作家が友人に対してもつ信頼や尊敬の気持ちを感じ取ることができる。

リアリズムの方向性を模索する上野亮介は、単純化した色面での表現を試み、卒業制作にさらに手を加え展示している。その他、「卒展」でも紹介した佐藤仁敬、微妙なしぐさが印象的な人物を描く富田伸介が出品。

卒業後の進路はさまざまだが、制作活動を続けたいとの思いを全員が持っている。ロク展を毎年開くことで制作の目標にしていきたいと話してくれた。第一回目となったグループ展、このあとの作品でどのような展開がみられるのか楽しみだ。

ギャラリー新神田 TEL:(076)292-0862


村本真吾 漆造形展

2004年3月19日(金)〜3月30日(火) ひろた美術画廊ANNEX(石川県金沢市)

赤い傘

新しい漆芸のカタチを見た。斬新で存在感溢れる造形作品だが、実は色々と秘密がある。素材は自らが山に入り取ってきたしなやかな竹。そこに収縮性のある布を自由な形に伸ばして形成し、和紙と漆を重ねていく。薄い布は次第に固くなっていき、異なる質感を持つものに変化していく。狙ったのはかぶと虫といった甲殻類の肌質。鈍い光を放つ漆が枝に留まる生物を思わせる。

伝統工芸という印象が強い漆芸を現代の住空間に取り入れたいというのは村本真吾。学生の頃から竹や伝統的な素材を使用した作品を作ってきた。今回のような作品を手掛けるようになったのは2002年頃から。森の中に自然に溶け込むような作品を作りたいと話す。今回出品した11点の作品は漆芸という敷居の高さを感じることはなく、どんな空間にも映えそうな美しい造形美を見せる。

漆造形家 村本真吾 枝羽No.5

村本真吾は1970年松任市出身。東京芸術大学大学院漆芸専攻修了、金沢卯辰山工芸工房にて研修。現在は埼玉県に居を構え、さらに素材と漆の可能性を追求していくとのこと。器など受け入れやすい形から脱却し、あえて空間を彩る造形作品で勝負しようとする村本の意気込みが感じられるような空間が広がっている。

ひろた美術画廊ANNEX TEL:(076)240-4440


第28回日本海造型展

2004年3月18日(木)〜3月23日(火) 石川県立美術館(石川県金沢市)

藤井肇「H氏の錆体」

福田年晃「記憶シリーズ 鮮明な記憶」
五寳利男「tension1〜6」
斎藤久子「増殖シリーズ ころり」

北陸に新しい芸術の風を吹き込もうと設立された日本海造型会議の年1回の展覧会。28回目を数える今回も刺激的で感性を刺激するような作品の数々が発表されている。19名の出展作家に与えられた今年のテーマは「揺」。揺れたり揺らしてみたり、様々な「揺」を感じる作品が会場に展示され来場者を楽しませている。

絵画、彫刻、デザイン、造形、建築、書、映像、漆、写真といった様々なジャンルの作家が、豊かな発想で制作した作品は表情豊かで考え深い。潰した空き缶を人形に配置したもの、形の異なるゴムの物体を床に配した作品、水を入れた透明な筒に金色の物体を沈めた作品など、奇想天外な発想が現代の芸術の幅広さを実感させてくれる。平面作品でも立体作品でも大切なのは、観る者がどう捉えるかであり、作品についてのコメントなどが見られないのもこのためだろう。作家の思いも大切だが、一方通行にならない色々な見方ができるのもこの展覧会の良さだろう。また、作品の一部は触れることも可能であり(作品なので、優しく触れて下さいとのこと)、来場者は感触やその動きを確かめることができる。そこにテーマである「揺」を来場者が体験することができるのだ。

参加したのは、今英男、栄田満、大場吉美、奥田きく子、折橋正一、梶本良衛、角偉三郎、門脇文雄、金田和子、五寳利男、斎藤久子、鈴木治男、姫野治雄、福田年晃、藤井肇、松本佐一、三上道幸、水野一郎、三井泰子。


「まっしろけ」しろい器あそび

2004年3月7日(日)〜3月31日(水) ギャラリーショップ&カフェ コニーズアイ(石川県金沢市)

河原一美(左)と中嶋ひろえ。中央は幸せボタンをつけたワンピース

河原一美「Snow dance!」

中嶋ひろえ「コースター」

石川県立九谷焼技術研修所で陶芸を学ぶ河原一美と中嶋ひろえ。タイトルを「まっしろけ」にしたのは作品の色だけではなく、初めての展覧会を迎える真っ白な気持ちという意味も込められている。忙しい授業の合間をぬって制作した作品たちは、日差しの差し込む温かな会場に並べられ、手作りの小物類が彩りを添える。彼女達の思いが凝縮された優しい雰囲気の会場となった。

白色の器を中心に花器やオブジェなど幅広い作品が約100点。河原は白の器のほかに、赤絵を施した作品で彩りをそえ、、中嶋は水玉や動物など細工を施したものや形にこだわったものを出品している。陶芸初心者だった中嶋だが、土と触れ合う面白さに目覚めたようだ。ともに自分らしい上絵の技術を身につけ、身近に感じてもらえる九谷を手掛けたいと熱い思いを語ってくれた。

河原一美は富山県出身の23歳。中嶋ひろえは香川県出身の21歳。基礎的なことを学ぶ1年目を修了し、次年度からは修了展を目標にし、気持ちを切り替えて取り組んでいく。今回の展覧会を通して得た反省点などを克服すべく、しばらくは授業に集中し、修了後に自分達の成長した姿を披露したいと意気込みを見せた。また、期間中は作品を通して人とのコミュニケーションを大切にしたいという思いから、磁器で作った可愛らしい「幸せボタン」を来場者に持ち帰ってもらうという、参加型のイベントも行われている。ボタンは残りわずか、彼女たちからの小さな幸せが欲しい人はお早めに。

ギャラリーショップ&カフェ コニーズアイ TEL:(076)239-2652


Silver and Wood −Carve・彫る−

2004年3月8日(月)〜3月30日(火) INAXスペース金沢(石川県金沢市)

優しい印象のオブジェ

金石の海岸で採取した流木に、彫金を施した銀や銅を組み合わせたオブジェを発表しているのは、イギリス人で金沢在住の金属細工作家、セス・ロバートソン。もともと母国でシルバー・ジュエリーデザインを学び数々の作品を発表してきたが、近年はデザインだけではなく彫るという作業に興味を持ち、特に表面を装飾する技法に力を注いでいる。最近取り組んでいるのはオブジェ的な作品。繊細な植物を刻み込んだ金属がはめ込まれ、人の手を加えた金属と自然が作り上げた流木という相反するものを組み合わせた面白い試みのものだ。

「Mother&child(親子)」 ユニークな「山菜」

「山菜」は山のような形の流木に銀や銅で作った春の味覚を差し込んで賑やかな作品に仕上げ、「Mother&child(親子)」は、亀の親子のような微笑ましい組み合わせが楽しい。また、小さな流木を使ったものは帯留めや髪留めなどにも利用可能で、日本人の発想とは異なる視点も面白い。このほかデザイン性の高い茶こし器や香水ボトルといった日用品や繊細なアクセサリーといったデザイナーとしての作品も紹介され、その豊かな感性と職人技を披露した。

作品にはとくにメッセージはなく、自然が生み出した美しい形と自らの手で生み出す美しいものを融合させた新しい美のカタチを楽しんでもらえたらと、この展覧会について語っている。

INAXスペース金沢 TEL:(076)264-1710


絵・陶・ガラス展 春のどか山わらう

2004年3月11日(木)〜3月23日(火) 犀川画廊(石川県金沢市)

多田鐵男「赤呉須刷毛目一輪差」

絵、陶、ガラスそれぞれの分野で活躍する作家たちが、春をイメージした作品を持ち寄った。陶の多田鐵男は柔らかな赤を走らせ、潔く引かれた線や文様で彩った花器や器を披露し、多田利子は淡い色使いと控えめな絵付けが上品な器で春らしさを演出。松本いづみはパステルカラーを基調とし、春ならではの可愛らしい作風で会場を賑やかに彩った。絵では、荒木幸子の花、奥田きく子の淡いトーンでまとめた女性像、正田武の春の訪れを描いた里山の風景など、巧みに春の気配を感じさせるものが並ぶ中、個性的な色紙が面白いのは陶芸家・長谷川塑人。「紅白梅花と妖精」では、長谷川得意の妖精が空を舞う。梅の匂いに誘われてか、軽やかに舞い降りてきた妖精の気品溢れる作品である。

今回驚いたのは、シャープなイメージを持つガラスの可能性。「柔らかい器」は、ガラスの持つ自然の動きを大切にするという佐野猛らしく、ゆるやかに広がる形は新しい生命の成長を感じさせるような躍動感溢れた作品。一方の佐野曜子の「A bit of garden」は女性らしい繊細な作品。幾重にも色を巻きつけ、線のカットを施し、織物のような色合いを見せる作品は花が咲き乱れるうららかな春を彷彿とさせる。このほか、佐野猛と曜子はガラスの茶碗や茶器といった茶道具も披露している。吉田美枝はピンクとグリーンを効果的に用いたシンプルなグラスや器、はし置きなどを出品した。

長谷川塑人「紅白梅花と妖精」 佐野猛「柔らかい器」 佐野曜子「A bit of garden」

梅や桜といった季節の花をモチーフにしたものや柔らかなトーンを使用して色彩で春らしさを表現したもの、ゆるやかな形から春を連想させるものなど、作家のイメージの膨らみが感じられる約300点の作品が楽しませてくれる。

犀川画廊 TEL:(076)241-4188


枝長芳典個展 Six years

2004年3月10日(水)〜3月19日(金) 金沢市民芸術村アート工房(石川県金沢市)

制作中の枝長芳典

「jellyfish」
「united colors 1」

目に飛び込む鮮やかな色彩。その色に誘われて思わず触れてしまいたくなる。しかし写真のように思えた作品は、実はリアルなようでリアルではなかった。

2回目の個展となる枝長芳典にとって、今回は1998年金沢美術工芸大学入学時から現在まで6年間の制作の変化や成長を発表する意味を持つ。全て同一人物が描いたものとは考えにくいほどその作風は大きく変化してきた。3年前の初個展で全てを吐き出し、新たな作風を模索するうちに見つけたのが現在の手法。対象物をデジカメで撮影し、パソコンに取り込む。そこで色変換を施し、鮮やかな色彩に変化したものをキャンバスに写しとっていくというものだ。リアルじゃないのはこうした手法をとっているからである。美しいものなら見たままを描けばいいのに・・・と思われそうだが、こうすることにより、自分自身だけでなく誰もが感じる美しさを表現できるのだという。

枝長芳典は1978年広島県出身。金沢美術工芸大学在学中から数々の展覧会に入選し、昨年の北陸中日美術展でも入賞している。つい先日、多くを学んできた大学院を修了したばかり。今後も石川県に留まり、制作活動を行っていく。現在の作風を追及し、さらに美しいものを描いていきたいと意欲を見せた。これからが枝長にとって勝負の時となりそうだ。

※枝長芳典ホームページ http://www.geocities.jp/edanaga2nan/

金沢市民芸術村 TEL:(076)265-8300


大坪紀久子個展 「step by step」

2004年3月12日(金)〜3月21日(日) ギャラリーアルトラ(石川県金沢市)

「Step 57」

大坪紀久子
「Step 42-47」
「Step 25」

会場に入ると順路の矢印が見える。2,3枚と進めていくうちに、ストーリー仕立てになっていることが分かる。「あえて文字がないのは、見る人によってそれぞれ物語ができるようにと思ったからです」と話す大坪紀久子。なるほど、創造力にまかせて物語を作り出して欲しいということか。確かに見るたびにそのストーリーは変わるような気がする。こうかなぁ、ああかなぁ、などと想像しながら鑑賞するのも楽しい。絵本を手掛けたいという夢を持つ大坪らしく、ほのぼのとした雰囲気とほほえましい光景に思わず顔も緩みがちだ。今回はある女性の旅の物語。詳しくはお話しできないが、Step1からStep58まで軽快な流れで物語は進んでいき、あっという間に最後へとたどり着く。

大坪は、塩ビ版とカッターナイフを使用した版画制作で、独特の世界を創り上げる。凹凸のある作品は、目の不自由な人でも指で触れて雰囲気の伝わるものにしたかったという細やかな気配りから生まれた。また、従来の版画とは違い、版自体を自由な形に切り抜いて刷っているため、作品の形やイメージが伝わりやすい。また、パネル貼りというシンプルな形にしたのも、額に頼らず作品で勝負したいという思いから考案され、それが全体のトーンを優しく、温かい雰囲気に仕上げている。使用する色は主に黒と赤、ところどころに見られる茶色は紙を貼っている。たった2色でいろいろな世界を展開させることができるそのアイデアとお洒落で洗練された表現に、ファンになる人も多いはずだ。

さて、 今回は幾通りの物語が生まれたのだろうか?

※大坪紀久子ホームページ http://www.monetz.com/art/

ギャラリーアルトラ TEL:(076)231-6698


鶴田一郎 魅惑の世界展

2004年3月7日(日)〜3月28日(日) アートギャラリーミューゼいずみ(石川県金沢市)

「目覚め」2003年

1987年から1998年にノエビア化粧品のCMに使用されていたと言えばお分かりになる方も多いのではないだろうか。妖しげな雰囲気と艶っぽい表情に、女性なら憧れ、男性なら理想の女性を見るだろう。現代美人画の第一人者・鶴田一郎はギリシャ神話で知られる女神(ミューズ)を理想の女性像に掲げ、表現し続けてきた。

無駄な線は一切見られず、潔く引かれた線がゆるやかな女性のラインを形成する。シャープでありながらも決して女性らしさを失わず、凛とした女性の強さや優しさまで描きこむような表現は鶴田だからこそできるものである。人気の秘密は表情と手の仕草。微妙な表情と繊細な手の動きが調和し、より表情豊かな作品となる。本展では鶴田の手仕事を見ることができる原画を含む38点の美女が会場を彩っており、美女たちの視線に気恥ずかしさすら感じてしまう。モダンな東洋美人や和装の女性、墨絵のようなタッチのモノクロームシリーズ、身近に感じられる女性を柔らかなタッチで描いた作品まで、魅惑の世界を作り上げている。

「赤い告白」2002年 「光の中で」2002年

鶴田一郎は1954年熊本県出身。多摩美術大学グラフィックデザイン科を卒業後、フリーのイラストレーターとして活躍。1980年頃から美人画を描き始め、ポスターやCDジャケット、TVドラマのタイトルバックなど様々な分野で活躍してきた。鶴田いわく、女性は細身で髪はロングでなければならないとか。ちなみに鶴田の事務所のスタッフはみな美人揃いとのことでした。

アートギャラリーミューゼいずみ TEL:(076)232-8070


六反田英一個展

2004年3月7日(日)〜3月14日(日) G-WING'Sギャラリー(石川県金沢市)

このギャラリーで10回目の個展となった。前回の個展(バックナンバー23を参照)は人物の動きが主体であったが、今回はがらりと雰囲気を変え、背景に何も描かれていないものが多く、落着いた印象を受ける。会場を訪れる人も前回と異なる画風に驚くが、画家の新たな試みに興味深く見入っているようだ。

もともと人物表現には定評のある六反田であるが、今回はあえて何も描きこまない空間に人物を配した。人物の確かな存在感はあるものの、どこか幻想的な世界を作り出す。大作ではかすかな動きを感じられる人物像を描き、小品では空間と人物を表現した。中でも「3人の使者」は、その関係が上手く表現されている。背景を描きこまない分、色彩にはこだわるのだろう。絶妙な色合いが奥深い味わいを演出している。1枚でも充分存在感のある作品だが、3枚揃えると空気の流れのようなものを感じることができ、惹きつけられてしまう。人物をきちんと描くことにより空間との関係を再確認でき、両者を組み合わせた時に違和感のない作品が生まれた。

空間と人物の絶妙な関係が際立つ「3人の使者」4F

今回は人物像のほか、静物、風景画、銅板画を加えた約30点を出品。静物画では「大陸の調べ」が面白い。描きこみ方が他の静物画とは異なり、力強さを感じさせる。いずれも静かながらその奥には固い意志のようなものが感じられ、六反田の新たな画風を予感させる。

G-WING'Sギャラリー TEL:(076)238-0788


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