――文化には人を動かす力がある。
文化には日本を動かす夢がある。
みんな力を合わせて
いま、関西から元気になろう。
これは文化庁長官の河合隼雄さんが、今年3月に打ち出した「関西元気文化圏構想」に掲げた文章です。今年は、阪神タイガースが18年ぶりに優勝し、関西は景気の低迷はさておき、気分は最高に盛り上がりました。
河合さんの提唱する関西から「文化力」キャンペーンは、ロゴマークを作り、ホームページ(http://bunka-ryoku.goo.ne.jp/)でも呼びかけ、PRに懸命です。9月には、河合長官が大阪の国立文楽劇場で会見し、具体的な内容を発表しました。今月から関西各地で「オペラ・都市・社会」「文化芸術と科学芸術」など、音楽、美術、演劇などにわたる盛りだくさんのイベントを展開します。今後、毎年秋に開催したい意向です。内外から有名人を集めての催しで大いに期待したいものです。

ただ一過性に終わらせないためには、「官」の呼びかけに、いかに「民」が応じるかに成否がかかっているのではないでしょうか。何もかもが東京に一極集中する中、歴史の蓄積がある関西が起爆剤になってほしいと思います。ともかく「文化には人を動かす力がある」というより、「文化」を支え、育てるのは人です。河合さんは「文化の求心力は面白がる心」だといっています。
さて美術の秋、芸術の秋です。毎年恒例の「正倉院展」は終わりましたが、神戸市の兵庫県立美術館では「アレクサンドロス大王と東西文明の交流展」が、12月21日までロングランで開催しています。こちらは大理石の牧神姿のアレクサンドロス大王像や片岩のヘラクレス姿の執金剛浮彫など約180点が出品されています。造形的にも優れた展示品が多く、機会を見つけて足を運んでほしいものです。
年が明け、1月17日から3月28日まで神戸市立博物館では「大英博物館の至宝展」が開催されます。大英は収蔵品700万点を超える世界最大級の博物館です。今回の展覧会では、大英博物館の250年、古代オリエントの世界、ヨーロッパ、アフリカ・オセアニア、アジアの5つのセクションに分けて精選の270点が展示されます。
ただこれらの文化財は、絵画や陶芸を見るのとは違った視点で鑑賞すべきです。「アレクサンドロス大王展」では、大王の東方遠征に伴いギリシャの文化をアジア各地に伝え、融合してゆく歴史の流れが、「大英博物館の至宝展」でも、1万年におよぶ人類の歴史の中で選りすぐれた文化財が戦火のイラクをはじめ地球の各地に点在していたことなど、出品物の背景にあることを認識しなければなりません。
こうした展覧会は単に感性だけでとらえるのではなく、歴史を知ったうえでじっくり見ていただきたいと思います。そのためには、事前に予備知識を得たり、会場でも先に図録を入手して鑑賞すれば、より理解を助けてくれるでしょう。
世知辛い昨今ですが、優れた「文化」に触れ、元気をつけましょう。
さて申し遅れましたが、私・白鳥正夫はこの10年余、新聞社で企画の仕事に関わり、展覧会などを担当してきました。今月から月に2回、このコーナーで「ぶんか」「アート」の周辺について体験に基づいてのエッセイを書き込みます。どうぞご愛読下さい。
次回は「展覧会企画はこうして生まれる(1)」です。
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| 「文化」は生きる「力」だ! 発売日:2003年11月19日 定価:本体1400円+税 発行:三五館 内容:50歳を前にして企画マンを命じられた新聞人が、10年間で体感し発見した、本当の「文化」のかたち平山郁夫画伯らの文化財保護活動など幅広い「文化」のテーマを綴る。 |
夢しごと 三蔵法師を伝えて 発売日:2000年12月21日 定価:本体1,800円+税 発行:東方出版 内容:玄奘三蔵の心を21世紀へ伝えたいという一心で企画した展覧会。構想から閉幕に至るまで、筆者の「夢しごと」をつづったルポルタージュ。 |
夢をつむぐ人々 発売日:2002年7月5日 定価:本体1,500円+税 発行:東方出版 内容:新藤兼人、中野美代子、平山郁夫など、筆者が仕事を通じて出会った「よき人」たちの生き方、エピソードから、ともにつむいだ夢を振り返るエッセイ集。 |