エジプトの至宝、「ツタンカーメン王の黄金のマスク」と38年ぶりに再会しました。初めて会ったというより垣間見たのは大学生の時でした。その歳月の流れにも感慨がありますが、12月やっと念願かない現地のエジプト考古学博物館でじっくり鑑賞することができました。
「黄金のマスク」の撮影もOK
エジプトの貴重な文化遺産約12万点を所蔵する博物館はカイロの中心部にあり、年中無休で午前9時から午後4時(金曜日を除く)まで開かれています。門内に入るには厳重なセキュリティチェックを受け、さらに建物入り口でも持ち物などの検査があります。しかしカメラもビデオも撮影がノーフラッシュで許可されています。
![]() 世界から観客が押しかける エジプト考古学博物館 |
![]() 古王国時代の遺物が並ぶ 1階中央ホールの壮観 |
建物は重厚な2階建てで、1階が年代別に、2階がパピルス、棺などテーマ別に展示されています。100を超す部屋に膨大な展示物が並んでいます。お目当てのツタンカーメンの秘宝は2階3号室にありました。ここはやはり世界各地からの観客で混み合っていましたが、間近に見ることができます。時折フラッシュがたかれ係員に厳重注意を受けていましたが、写真も撮れるのだから驚きです。
門外不出とされた「黄金のマスク」は、過去にアメリカと日本でしか公開されていません。日本では1965年に東京と福岡、京都で開催され、総入場者293万人の大記録を樹立しています。この展覧会は私の大先輩が国民的英雄のナセル大統領と単独会見し、いわば直談判で実現したことが語り草になっております。
当時、私は大学に通っていましたが、東京国立博物館に出向き半日がかりで見学しました。長い行列に数時間並び、やっと入場できても立ち止まれない状態であったのをよく憶えています。でも紀元前1300年もの時代を経てなお失わぬ輝きを目に焼き付けました。
![]() 最大の至宝 「ツタンカーメン王の黄金のマスク」 |
![]() ギザのピラミッドの前で ポーズをとる警備員 |
盗掘免れほぼ完全に発掘
ツタンカーメンは紀元前1336年に即位し、紀元前1327年に18歳で死去していますが、その墓室が発見されたのは1922年です。古代エジプトの都のあったテーベ近くの「王家の谷」で、盗掘を免れ、ほぼ完全な形で残っていました。王のミイラはなお「王家の谷」に眠っていますが、ミイラの顔の部分をおおっていた「黄金のマスク」はエジプトの「顔」ともなりました。
マスクは高さ54センチ、幅約40センチほどの大きさですが、純度の高い金の厚板を用い、全体をいくつかの部分に分けて打ち出し、成形後に鋲でつなぎ合わせ研磨してありました。幼い時に即位し夭逝した若いファラオの相貌が迫真的に表現されています。
この「黄金のマスク」以外にも装身具や「黄金の棺」などが置かれていますが、さらに他の部屋には黄金のベッドや玉座などもあり、紀元何千年もの大昔にこれほどの芸術品を生んだ古代エジプト文明のすごさと、一方で権力の怖さに思いを馳せたものです。
博物館では、古王国時代の傑作とされる彩色の鮮やかな「ラーホテブとネフェルトの座像」や美術の教科書でもおなじみの「書記座像」など興味が尽きません。1階中央ホールは圧巻です。4体のラメセスII世像はじめアメンへテブV世と王妃ティの巨像などが立ち並んでいます。
![]() 彩色の鮮やかな傑作 「ラーホテブとネフェルトの座像」 |
![]() はるか砂漠にギザの 三大ピラミッドを臨む |
2階に王のミイラ展示室があり、ラメセスII世など13体も安置されています。薄暗い照明の中、包帯に巻かれたものや生々しいものもあり、不気味さが漂います。ここに入るには40ポンド(日本円で800円)の特別料金が必要です。恐いもの見たさもあって、なかなかの人気です。権力者の死生感が見てとれますが、何千年も経て、こうして一堂に集められ、人目にさらされているのには複雑な思いがしました。
古くて新しい国の魅力
精巧な宝飾品や花崗岩で出来た王の巨大な像、ミイラなど、日本の博物館とは比べものにならない古い歴史の遺物だけに、丹念に見れば何日もかかるでしょう。さらにこうした遺物が発掘されたり発見された主な遺跡にも足を延ばしたくなります。とはいえ神秘と謎に包まれた古代エジプト文明の解明の歴史は浅く、まだ200年に過ぎません。
この間、エジプトの歴史的な逸品は流出を続けました。カイロの博物館以外にも、イタリア、ドイツ、フランス、イギリス、アメリカの有名博物館のコレクションとなっています。かつて先進各国から派遣された遠征隊や発掘隊によって持ち出されたものです。ドイツのエジプト博物館にあるネフェルトイティの彩色頭部像や大英博物館に収められているロゼッタ・ストーンなどは所有権をめぐって返還要求が続けられています。
わずか8日間のエジプトの旅でしたが、ピラミッドはじめ壮大な歴史的遺物に触れ、刺激的な日々でした。5000年の歴史を持つエジプトですが、なおも「開発途上」の印象でした。それもそのはず古代王朝を経て3000年余を絶えず外国の支配に苦しみ、その収入と資源を食いつくされてきたのです。
やっと独自の道を歩み始めたのは1952年の革命でした。その後、「ナセバナル。ナセルはエジプトの…」で有名なナセル大統領によってアラブ世界に踊りでたのです。古くて新しい国の魅力の一端をお伝えしました。
次回は「現代美術の旗手、蔡國強」です。
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