山本基展−しろきしろへ

2005年7月23日(土)〜9月25日(日) 下山芸術の森発電所美術館(富山県下新川郡)

 
「迷宮」
「空蝉」
「空蝉」の一部

塩を使ったインスタレーションを発表する現代美術作家、山本基の個展。大正14年に建てられたレンガ造の水力発電所を再生した美術館に、約10トンの塩を使った大規模な二つのインスタレーション作品「空蝉」と「迷宮」を展示。同時に、過去の他作品も塩のオブジェや展示風景の写真などで紹介する。

“塩”を使った作品をつくり始めたのは、妹の死がきっかけだった。突然訪れた身内の“死”に対して、作家は、“死”と向き合い、“死”とは何かを知ろうとする。社会の中で“死”がどのように扱われているのかを知るため、お経や葬式、そして末期医療の問題まで、“死”にまつわる様々なテーマに取り組み、古くから死の儀式に用いられてきた“塩”という素材に辿り着いたという。

これまで展示会場を変えて何度か制作されてきた「空蝉」と「迷宮」。「空蝉」は、塩のブロックを積み上げた階段状の作品。今にも崩れ落ちそうな危うさを感じさせながら、階段は、もうひとつの世界へと続くように垂直に天井へ向かって延びている。「迷宮」は、一面に塩の迷路を描いた作品。時間と共に薄れていく記憶の核心に触れようと、その記憶を紡ぐかのようにつくっている。塩のラインは床の凹凸や湿度、作家の体調にも左右され、その行き着く先は制御できない。必然と偶然が絡まり合ってできる迷路が、記憶の核心に触れることの難しさを伝えている。

山本基は、1966年広島県生まれ。1995年金沢美術工芸大学絵画専攻を卒業。2002年、フィリップモリスKKアートアワード2002受賞。2003年、ポロック・クライズナー財団(ニューヨーク)から1年間の制作助成を受ける。現在、金沢市に在住。

下山芸術の森発電所美術館 TEL:(0765)78-0621


マシュー・バーニー:拘束のドローイング展

2005年7月2日(土)〜8月25日(木) 金沢21世紀美術館(石川県金沢市)

 
鯨を解体するデッキから構想された作品。モニターには再編集されたイメージ映像が流れる。
油脂にまみれた白いプラスティック製の鯨の背骨が床に置かれる
アクリルケースの中には、透明な額で縁取られたドローイングが並ぶ

アメリカを代表する若手現代作家、マシュー・バーニーの日本では初めての個展。2時間半におよぶ映画とインスタレーションで構成された最新作「拘束のドローイング9」が、世界に先駆けて発表され、注目を集めている。制作にあたっては、北海道から鹿児島まで列島を縦断して調査を行っており、“捕鯨”や“茶道”をモチーフにした作品からは、日本の文化や風土への深い考察がうかがえる。また、パートナーで世界的なボーカリスト、ビョークが映画でマシュー・バーニーと共演し、音楽を担当していることも話題を呼んでいる。

マシュー・バーニーが1987年から制作している『拘束のドローイング』シリーズは、身体に拘束や制限を与え、その反動として生まれる未知の形やエネルギーを自身が身体を張って表現している作品。第一作目では、床に斜面を作り、ゴムチューブに身体を引っ張られながらスロープを駆け上がり、ドローイングを行っている。また、それ以降の作品も、トランポリンから飛び上がって天井に描いたり、モンスターを演じて獣化した不自由な身体で描くなど、人間の身体とそれを取り巻く世界、体内の活動とエネルギー、その変容が全ての作品の主題となっている。

新作の映画は、エネルギーを象徴する石油精製所を舞台に始まる。巨大な捕鯨船の上でワセリンの鋳造物が作られていく過程と船の中の茶会に招かれた男女のラブストーリー、この2つの流れの中で“拘束からの解放”が描かれる。鋳造物の拘束が解かれ、溶け出したワセリンの液体が茶室を満たす。ワセリンの海の中で男女が互いの下肢を切り刻み、その姿が鯨に変わり、息を呑むクライマックスを迎える。

展示室では、これまでの彫刻やインスタレーション、金沢で行ったパフォーマンスの映像など、『拘束のドローイング』シリーズを一堂に展示し、その全貌を紹介する内容となっている。

金沢21世紀美術館 TEL:(076)220-2800


有元利夫展 光と色・想い出を運ぶ人

2005年4月15日(金)〜5月22日(日) 砺波市美術館(富山県砺波市)

「星の運行」1974年 「花吹」1975年 「ウィリアム・バード(鐘)」1981年

1985年、38歳という若さでこの世を去った画家、有元利夫。古典絵画を思わせる作風で人気を博し、また、本の装丁などにも使われた作品は広く知られた。有元利夫が残した作品127点を展示し、油絵、素描、版画、立体など多岐に渡った、その幅広い才能を紹介する。

有元利夫は、学生時代に旅したローマ・やフィレンツェで数多くのフレスコ画に出会う。遠近法が確立する前の大胆な人物の配置と構成を取り入れ、絵の具を重ねる油彩とは違い、縦に染み込むようなフレスコ画の技法に大きな影響を受けた。「(このような)様式のあった時代を懐かしみ、様式というものを信じている」という有元利夫の言葉に、自身の作品に古典の要素を吸収しようとした理由が説明されている。光の玉や花びらが舞う画面には、独特の柔らかい光と静けさがあり、すべてを包み込むような優しさに溢れている。

油絵の具だけではなく、テンペラやアクリル、日本画の岩絵の具、トルコ石やサンゴを粉末にしたものなどを混ぜて使った有元利夫。作品の前に立つと、こすったり、削ったり、さまざまな効果を出そうと、作家が画面に手を加えた様子が確認できる。「作りたがりや」と自らを称した画家。作品が完成するまでの様子が目に浮かんでくるようだ。

会場の様子

その他、絵画と比べても楽しめそうな完成度の高い素描画、銅版、リトグラフ、小口木版などで作られた版画作品、遺跡からの出土物のような立体作品など展示する。

砺波市美術館 TEL:(0763)32-1001


AILA 川内倫子写真展

2005年4月17日(日)〜5月29日(日) 金津創作の森(福井県あわら市)

 
 
 
 
 

2002年に第27回木村伊兵衛賞を受賞し、国際的にも高い評価を得る写真家、川内倫子の個展。昨年発表した写真集「AILA(アイーラ)」より、約70点の作品を展示する。

「AILA(アイーラ)」は、トルコ語で「大家族」という意味。被写体となったのは、亀、かたつむり、ふくろう、血を滴らせた鳥の死骸、へその緒をつけたままの生まれたばかりの赤ん坊、割れたガラスの破片など有機、無機を選ばず目に付いた様々なもの。ちょっとした縁でつながっていく人や物、自然との関係を、広い意味で家族の結びつきに喩えた。夢とも現実ともつかない、薄いフィルターがかかったような印象の作品。柔らかく透明感のある画面だが、そこには日常の見えにくい所にある小さな日々の営みが切り取られている。

展示会場には、大阪のクリエイティブユニット「graf(グラフ)」の協力のもと、モンゴルのパオ(住居式テント)を思わせる3つのテントが作られた。白い布を利用したテントの中から、明かりがこぼれる。あわら市内の小中学校や住民からいらなくなった白い布を集め、縫い合わせた大きな布で天井と入口の部分を覆っている。使い古された布には、しみがあったり名前が入っていたりして、人の気配が感じられる。

この場所で写真展ができるのか、はじめは不安だったと話す川内倫子。地元の人たちの協力で、ここでも「AILA」が意味するひとつの“つながり”が生まれた。沢山の人の“つながり”でできた会場は、「AILA」の展示にぴったりだった、と作家自身も満足そうだ。

金津創作の森 TEL:(0776)73-7800


ミュシャと夢二のなかのアール・ヌーヴォー

2005年4月9日(土)〜6月12日(日) 金沢湯涌夢二館(石川県金沢市)

 
「挙国一致宝くじのポスター」(左)
夢二の作品
「(トラピスティーヌの酒)ポスター」と原画(左)

夢二館開館5周年を記念する特別展。アール・ヌーヴォーの代表的な画家アルフォンス・ミュシャのオリジナル作品約40点を、アール・ヌーヴォーの影響を受けた竹久夢二の作品と共に展示する。ミュシャの作品が貸し出されることは珍しく、ミュシャと夢二の作品とを比べて見る貴重な機会となる。

アール・ヌーヴォーは19世紀末から20世紀初めにかけてヨーロッパで流行し、明治末から大正期にかけては、日本の画家にも大きな影響を与えた。チェコ出身のミュシャは、サラ・ベルナールのポスターで一躍有名になり、パリで活躍する。デザイン性に優れ、当時から人気が高かったミュシャの作品。「(トラピスティーヌの酒)ポスター」を原画と共に展示する他、世界一美しいと呼ばれたビスケット缶、母国チェコの現状までを効果的に表現した宝くじポスターなど紹介する。

夢二の作品では、草花をモチーフにした千代紙や流れるような曲線がアール・ヌーヴォーを思わせるセノオ楽譜、デザイナーの先駆けとしての仕事を思わせる日本郵船のメニューなど14点。その他、夢二が尊敬する画家藤島武二がミュシャの絵から引用した作品や、アール・ヌーヴォーを巧みに取り入れた橋口五葉の装丁本など、同時代の日本の作品も紹介し、浮世絵的な要素に融合させた夢二らしいアール・ヌーヴォーの世界を浮き彫りにする。

金沢湯涌夢二館 TEL:(076)235-1112


奈良美智 From the Depth of My Drawer

2004年10月19日(火)〜11月28日(日) 金津創作の森(福井県あわら市)

「Jailhouse Kamikaze」1994年

「The Heads」1998年
会場の様子

「方向性を絞られて進んできた中で、捨てなければならなかったいろんな可能性があったのも事実。ずっと開けることのなかった引き出しを開けるように、過去の作品を見つめ直してみたいと思いました。今回の個展は、置き去りにされた可能性の見え隠れする作品も加えて、今の自分を自分なりに再考する展覧会です。」(展覧会チラシより)

過去の作品に再会することで新たなインスピレーションを得ようとする奈良美智。原美術館を皮切りに4カ所を巡回する個展は、作品選びから展示構成まで、奈良自身がキュレーションを行う。廃材を利用して、白いペンキを塗った大小5つの部屋を作り、そこで80年代後半から近作までのドローイング、ペインティング、立体作品など約170点を展示する。

入ってすぐの「Hula Hula Garden」(1994)は、これまでヨーロッパでしか展示されなかったインスタレーション作品。入口のない部屋に、うつぶせに横たわる子どもたちと壁にかかるいくつもの顔、そこらじゅうに花が置かれ、窓から覗き込むという形で展示している。廃材で作った壁にはいくつもの小さな穴があり、そこから覗く来場者の姿も見られ、この展示の面白さを印象付ける。

「Fountain of Life」2001年
インタビューを受ける奈良美智

中央に建つ小屋には、祈るように目を閉じた子どもたちの頭とコーヒーカップの彫刻作品「Fountain of Life」(2001)。子どもたちの瞳から泉のように涙が流れ落ちる様子は、音にならない小さなリズムが響いているようで、思わず耳を澄ましてしまう。哀しみとも痛々しさともとれる表情をたたえた作品は、見る人の感受性に訴えかける。

会場奥の部屋でテーブルに展示するドローイングは、いろんな紙にさまざまな絵が描かれ、英語やドイツ語でのメモ書きなどもあったりと、今回のタイトル「引き出しの奥から」まさに引っ張り出してきた作品。過去と現在の作品が交錯する空間で、おなじみの独特の表情をした子どもたちを始め、これまで出てくることのなかったモチーフも見え隠れし、作家活動の道のりを見ていくことができる。

その他、直径180cmの大皿に描いた「Sprout the Ambassador」(2001)、中東カブールで撮影した80枚の写真をプロジェクターで紹介する「Kabul Note」(2002)など。各地で開催する個展は、その土地で見つけた素材を利用して展示内容も変化する。ここでは、福井県に住む友人が持っていたという十数年前のドローイング作品が展示に加わった。

金津創作の森 TEL:(0776)73-7800


香月泰男展 <私の>シベリア、そして<私の>地球

2004年9月25日(土)〜10月24日(日) 石川県立美術館(石川県金沢市)

ガスマスクと青空が印象的な「雲」1968年

シベリア・シリーズ
「業火」(右)と兵隊の行列を描いた「奉天」
オモチャ(小彫刻)

戦前戦後を通じて日本の洋画界で活躍し、独自の具象絵画を追究した画家、香月泰男の没後30年を記念する回顧展。戦後シベリアでの拘留体験を描いたシベリア・シリーズ全57点を中心に、初期から晩年まで制作し続けた油彩と水彩、さらに素描、陶画類、オモチャ、テラコッタといった小彫刻、戦地から家族へ宛てた軍事郵便はがき『ハイラル通信』など約170点を展示。

北海道で美術教師をしていた香月泰男は、昭和18年に召集され満州へ出征。20年の敗戦でシベリアの収容所へ送られ、22年に帰国するまでの間に3カ所の収容所で飢餓と強制労働を強いられる体験をする。復員後、描きはじめたシベリア・シリーズは、1956年の渡欧をきっかけに立体を平面で捉える構成的な表現に変わり、その後、日本画の絵具として使われる方解石の粉を混ぜ、木炭をすり込み、独特な質感と黒による表現を展開する。自身の戦争体験を精魂を傾けて描いたシベリア・シリーズは、今回、制作年順ではなく体験順に並べ、作品の1点1点に香月自身が書き留めた解説を添えて紹介する。

「制作のほとんどのモチーフを追憶の中(=シベリア回想)と、家から二、三分の距離より望見されるものにしか求めていない」と自らが書いているように、復員後亡くなるまで住み続けた郷里の山口県三隅町では、自然と身の回りの生活風景、小動物、草花を、愛情を込めて数多く描いている。「<私の>シベリア」に対して「<私の>地球」と呼んだ身近な世界を描く作品群は、戦争の悲惨さというシベリア・シリーズのテーマに対して、平和であることの喜びがテーマとなっており、静かで穏やかな生活を希求した香月の心情が想像される。

その他、趣味の域を越えて制作した陶芸や廃品を使った愛らしいオモチャ、師や画友に送った手紙なども面白く見応えがある。

石川県立美術館 TEL:(076)231-7580


竹久夢二写真館−懐かしい遠い日の記憶−

2004年9月11日(土)〜11月29日(月) 金沢湯涌夢二館(石川県金沢市)

「宵待草」大正中期

「庭の干草」大正9年初版
夢二が撮影したお葉
夢二がよくモチーフにした傘

明治時代の終わり頃から、安価なカメラが急速に広まり、大正始めには「芸術写真」という言葉が流行した。流行に敏感な竹久夢二もまた、自分のカメラを手に入れ、2千枚にもおよぶ写真を撮影している。

企画展は、夢二の遺族から提供された写真60点を同館所蔵の作品15点と並べて展示し、当時の夢二が何を見て、何を感じていたのかを伝えている。写真を見ると、夢二は、自らが好んで描いたモチーフをたくさん撮影していることに気付く。抒情的で非現実的な夢二の絵に通じる世界が、夢二の写真からも感じ取れる。並べて展示した写真と作品を見比べると、それらは驚くほど似ており、ひと通り見終わった時、普段の展覧会で作品だけを鑑賞するよりも、一層強く夢二の世界を知ることができたように思えた。

会場では、夢二が愛用したカメラ「ベス単(通称)」や、次男不二彦が7歳の時に映した彦乃と夢二の写真などを展示。富士登山の様子を描いた「流人(りゅうじん)スケッチ」は初公開となる。

金沢湯涌夢二館 TEL:(076)235-1112


九谷焼動物園へようこそ!

2004年7月24日(土)〜9月12日(日) 石川県九谷焼美術館(石川県加賀市)

 
プロムナードの世界
金、銀、銅受賞作品

大胆なデザインと重厚で華やかな色彩をもつ九谷焼は、花鳥風月をモチーフとしたものが多い。並んで数多く作られたのが、鳳凰、麒麟など想像上の生き物や動物たちがモチーフとなった作品。古九谷から現代作家の作品まで、動物をテーマにした作品を集めて展示する今回の企画展は、色々なイベントを用意し、夏休みの子供向け企画として開催している。

1階展示室では、絵皿に描いた動物、香炉や置物としてかたどった動物など86点を、陸上、草原、鳥、水の中の生き物に分類して紹介。動物の姿を忠実に再現する作品もあれば、デザイン化した作品もあり様々だ。古くから多くの作家が好んで取り組んだ動物画は、現代とは異なるその時代の感性が表れたものとなっている。

北庭では、若手陶芸家による41作品でプロムナードを作り、人気投票を行う。2階ホールは、全国の小学生から公募した動物画イラストコンクールの入賞作品300点と金、銀、銅受賞作品9点を展示し、九谷焼作家の手によって忠実に写した上位受賞作品を絵皿も並ぶ。

子供たちが先入観なく作品を鑑賞できるようにとの考えから、展示作品には動物名を大きく表記し、作品名や作家、窯名を小さめに紹介したキャプションを使っている。また、作品の展示を低めに設置するなど、子供の目線に合わせる工夫がされた。難しく捉えがちな伝統工芸作品だが、この夏は子供と同じような気持ちで気軽に楽しみたい。

石川県九谷焼美術館 TEL:(0761)72-7466


THEドラえもん展

2004年7月10日(土)〜9月3日(金) 高岡市美術館(富山県高岡市)

奈良美智のスケッチ
森村泰昌&ザ・モーヤーズ「ドラス」など
ポスターの数々
松井龍哉「メモリー」

「あなたのドラえもんをつくってください」、という一通の依頼状からはじまった企画展。2002年にスタートし全国の美術館を巡回して、ここで8館目となる。村上隆や奈良美智といった著名アーティストをはじめ、映像、写真、グラフィックス、音楽など様々な分野で活躍する約30人が取り組んだ「わたしのドラえもん」を展示する。

デジタルハリウッドを創設した杉山知之の「ドラファクトリー」は、未来のネコ型ロボット工場の様子をCGで表現。短い映像が流れる10個のモニターを通して、ドラえもんが製造される工程を追っていく。今回最年少のヒロミックスはTシャツをデザインした。スパンコールを使い、青くて丸いドラえもんの頭を表現した「Green and blue」は、作るうちに地球のイメージも重なったという。

展覧会チラシでも紹介されている、奈良美智の「ジャイアンにリボンをとられたドラミちゃん」は、想像以上の大きさとその存在感に驚く。ドラミちゃんのためのスケッチやメモ書きも、そのまま展示されていて興味深い。名画の人物に扮したセルフポートレートで知られる美術家森村泰昌はユニットを組み、森村泰昌&ザ・モーヤーズとしてドラえもんをイメージしたドレス(作品名は「ドラス」)を制作。

最後の会場では、松井龍哉の「メモリー」を展示する。鑑賞者はのび太くんの部屋を模した会場の一角を歩き、押入で眠るドラえもんの姿を見ながら、イヤホンから聞こえる音に耳をすます。掃除機やチャイム、食器を洗う音、バイクや自転車の音といった日常の音風景が広がっていく。立つ位置を変えると、階下や窓からの聞こえてくる音の方向が変わるシステムで、臨場感を伝え、鑑賞者にノスタルジーを感じさせる。

会場には各アーティストの作品の他に、マンガのページをめくると映像が映し出されるブックTVといったアトラクションも用意され、大人も子供も一緒になって楽しめる。

参加アーティストは以下のとおり。
福田美蘭/日比野克彦/森村泰昌&ザ・モーヤーズ/村上隆/中村哲也/奈良美智/ヒロミックス/蜷川実花/佐内正史/デジタルハリウッド(杉山知之)/高城剛/土佐尚子/GRAPH 北川一成/GROOVISIONS/服部一成/平林奈緒美/ヒロ杉山/桑名大伸/松下計/中島英樹/野田凪/タナカノリユキ/谷田一郎/タイクーングラフィックス(宮師雄一、鈴木直之)/青木克憲/佐藤可士和/松井龍哉/小野塚秋良/高橋みのる/小曽根真/バカラ

また、8月5日(木)〜31日(火)の期間、高岡市内の小学生が描く「ドラえもんと残したい高岡の風景」作品展も高岡市美術館ギャラリーにて開催される。現代の小学生はどんなドラえもんを描くのだろう。同館学芸員さんを驚かせた創造性に富む作品、約500点にも注目したい。

高岡市美術館 TEL:(0766)20-1177


マン・レイ展「私は謎だ。」

2004年6月11日(金)〜7月11日(日) 福井県立美術館(福井県福井市)

ひとつめの部屋の様子
「永続するモティーフ」より
 
 

20世紀を代表する芸術家マン・レイの世界をめぐる展覧会。写真家として名声を得たマン・レイだが、彼の作品は、油彩、デッサン、版画、オブジェ、映像と多岐に渡り、その全ての分野で、たえず新しい技法を取り入れて人々を驚かせた。集められた約300点の作品から、マン・レイの魅力に触れる。

会場の入り口は遮光幕で覆われ、中からはメトロノームの音が聞こえてくる。入ってすぐ正面に置かれたメトロノームは、その空間を支配するように一定の時を刻みつづける。その最初の部屋の壁には、マン・レイがこだわって作り続けた「目」、「手」、「セルフポートレート」の3つのモチーフによる作品が展示されている。生涯に渡って何度も制作されたこれらの作品から、マン・レイがそれぞれの時代で自問し見つめた彼自身の姿が浮かび上がる。

最初の部屋を過ぎると、そこからは年代順に展示され、ニューヨークでの作品、パリでの作品へと続く。まず、マン・レイの本領の一つ、オブジェの作品が並ぶ。オブジェには、身近にある日常の2つのものを組み合わせ、ユーモアと皮肉を込めた作品が多く見られる。磁石に銃を釣り下げた「コンパス ダダのオブジェ」(1920)は、銃のもつ脅威が大きな磁石によって削ぎ落とされ、その存在は滑稽にさえ見える。パリでの初個展オープニングの日に思い立って作ったという「贈り物」(1921)は、アイロンと釘を組み合わせて異質な物体に作り変えたものだ。

若い頃からマン・レイ(人間・光線)と名乗ってきた作家は、晩年に「私は謎だ。」と語った。移民の子としてアメリカに生まれ、パリに渡って活動を続け、二つの世界大戦を体験する激動の人生の中で、自身を問い続ける行為が欠くことの出来ない営みになったという。自伝的な要素が含まれた多くの作品から、謎に満ちたマン・レイの人物像とその人生を垣間見ることができる。