
吟醸造りを身上に近代技術との調和を目指す吉乃川の酒蔵 |

仕込み水「天下甘露泉」の石碑 |
天下の甘露で醸す酒
米どころ新潟は由緒ある酒蔵の多い土地柄。その中でも吉乃川は戦国時代の天文17年(1548)創業、実に450年余の歴史を誇る酒蔵だ。長岡市摂田屋に蔵を構え、連綿と酒造りの技術と伝統を伝えてきた。
摂田屋は信濃川の扇状地である越後平野の扇の要に位置し、緑豊かな東山連峰を背に、前方を悠々と信濃川が流れていく。蔵元を訪れると、この地で旨い酒が醸されるのも当然とうなずきたくなる眺めだ。
それに何より水がいい。蔵の敷地内から湧き出す井戸水を仕込みに使っている。その名も「天下甘露泉」。口に含めば、喉元をすっと滑り落ちていく、まさに甘露の味わい。信濃川の伏流水と東山連峰の雪解け水が地中深く交わって、生まれた水だ。水質はミネラル分が多すぎず少なすぎずの軟水。「吉乃川」は、淡麗な中に米の旨味がふくよかに感じられる酒といわれるが、この水だからこそ実現できる酒なのだ。
吟醸蔵の誇りと技
「吉乃川」の蔵元は別名「吟醸蔵」とも呼ばれ、酒造りの基本を吟醸造りにおき、酒質にこだわった酒造りには定評がある。
近年、ごく一般的になった吟醸酒だが、もともとは個々の酒蔵が酒造りの奥義を極め、次代に技術を伝えていくために造っていたもの。1粒の米を時には60%以上も削ってしまう贅沢な醸造法を、吉乃川では過去の米のない時代にも絶えることなく続けてきたという。
こだわりの姿勢は精米にも表れている。扁平精米という、米粒の形のまま小さくなるよう磨く方法を取っている。「通常の精米に比べると、2、3倍の手間はかかりますが、米の芯の部分を有効に使えるので、より純度の高い香味が得られるのです」と杜氏。
また、酒造りは米作りから始まると、夏の間は米作りのプロでもある蔵人自らが栽培した酒米を使用して醸造する酒を造りはじめている。
飲み飽きしない酒
杜氏に酒造りの基本を尋ねれば、「一に水、二に米、三に技、四に風土」の答え。風土は雪深い気候のこと。雪は大気中の塵やほこりを洗い流すとともに、天然の冷蔵庫となる。そして、新潟県は越後杜氏の里。経験豊かな杜氏たちは、研究スタッフの支援を受けて近代技術との調和を追求しながら、水、米、気候という自然の恵みを最大限に生かした酒造りに心血を注いでいく。
目指しているのは「飲み飽きせずに、次の手が伸びてくる酒」。もっと身近に、日本酒の素晴らしさを日々の暮らしの中で、飲み手が実感できる酒でありたいと、吟醸造りを身上に手間ひまをかけながらも価格は高からずのところに設定している。そこに、この酒蔵の心意気が表れている。
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