谷中日和展 part.3 - Girls community life−

2004年5月4日(火)〜5月9日(日) gallery J2(台東区上野桜木1)


展示風景
村上綾作品

毎年4月から5月にかけて行なわれる「谷中日和」と称したgallery J2の企画展。今年はギャラリースタッフにより作家が選出され、3週(part.1〜 part.3)にわけてテーマ別に展示、20代の作家達によるそれぞれの試みを紹介する。

Part.3の今回は「Girls community life」をテーマに、長谷川冬香、藤中敬子、牧ゆかり、村上綾の4人が一つの空間を作った。ほどほどに干渉しあう関係、共通点がありながらも個々のオリジナリティははっきりとしている、そんな女の子の共同生活を作品によって表現した。

牧ゆかり作品
牧ゆかり

今春、芸大の大学院を卒業した牧ゆかりはタブロー作品を展示。卒制作品では“布のシワ”“物のきわ”を絵画に取り込み、線を中心とした表現で優しい色を使用した作品が多かったが、卒業後は徐々にテーマを変え、モチーフを元に作品を作るのをやめた。「モチーフがあると、どうしても作品がモチーフに引っ張られ、影響されてしまう。縛られずに作りたくなった」という。絵具自体の持ち味を生かし、絵具の質感、色、筆のタッチ、それらの関係を画面におこしていく。最初は画面に自由に配色をし、それを絵画として最終的にどうまとめるか、それをテーマに現在は模索しながら作品を制作している。

それぞれの私的な時間や欲の顕れる生活のものを描く、という長谷川冬香。紙粘土や和紙を使用し、ころころとしたオブジェ「風達磨」を製作した藤中敬子。大きなタブローとオブジェを組み合わせた村上綾。四者四様の作品が一つの部屋として、明るさ、優しさ、賑やかさを伝える。

長谷川冬香:2004年武蔵野美術大学造形学部卒業。
藤中 敬子:2004年東京造形大学デザイン学科卒業。
牧 ゆかり:2004年東京藝術大学大学院美術研究科終了。
村上  綾:2004年東京藝術大学大学院美術研究科終了。

gallery J2 TEL:(03)3823-0292

(吉村)

石居麻耶個展

2004年3月15日(月)〜3月20日(土) 銀座スルガ台画廊(中央区銀座6)


「或る日々の光景」
「或る日々の光景」
展示風景

爽やかな青い空や長く落ちる影、ゆっくりとした時間の流れを思わせる「或る日々の光景」。そのタイトルにふさわしく、いつとは断定しない日常の中で、ふと目がとまった瞬間を描く。見ているうちに自分の思い出と重なり、なんだか懐かしい気持ちになった。

時間帯によって移り変わる光と影のコントラストが好きで、それを多くテーマに用いているという石居。手作りの作品集に載せた百点以上にも及ぶ作品の多くが、日常の中のひとときを描いたもの。着彩の仕方や技法は様々だが、ほとんどの作品は細線で描かれたペン画をベースにしている。

今回の展示作品は木パネルにジェッソを塗り、黒ペン、アクリルガッシュ、色鉛筆などで描いた後、ウッドバーニング用の低温度のコテで表面を溶かしながら、削り、彫りを繰返し仕上げていったという。古びた色合いや質感が好きで、カサカサとした画面を作りたくて試行錯誤するうちに、この手法を用いるようになった。極細の黒ペンで描かれた上に隈なく繊細な溝が彫りこまれ、溶かす深度によって色が変化する。近くで見れば見るほど、その細かさには圧倒された。

先日、大学を卒業したばかり。在学中は授業として様々な技法を学び、彫刻や立体作品なども作ったが、やはり絵を描くことが一番好きだという。恩師との交流のため、手紙の代わりに1年間毎日絵を描いて送り続けたこともある。内容は抽象、具象、イラストなど様々だったようだが、その一つ一つには、日々の出来事や思いが表れているのだろう。送られた恩師のなんと幸せなことか。

2004年東京藝術大学デザイン科修士課程修了。在学中に数々の賞を受賞し、卒業制作作品では「サロン・ド・プランタン賞」を受賞。

銀座スルガ台画廊 TEL:(03)3572-2828

(吉村)

雑誌をデザインする集団キャップ展 TMDC 1st PROJECT CAP GUN

2004年3月4日(木)〜3月30日(火) ギンザ・グラフィック・ギャラリー(中央区銀座7)


designed by cap
会場風景

どこでも見かけられる身近な存在の雑誌。だがその舞台裏には雑誌のキャラクターやブランドを形成するうえで必要不可欠な雑誌デザイナーが存在する。普段はなかなか表に出ることがない雑誌デザイナーたちの世界。そんなデザイナーの制作における役割や、編集に関わる仕事の面白さを伝えようという展覧会がギンザ・グラフィック・ギャラリーで開催された。日本の雑誌デザインを過激に演出してきたアートディレクター藤本やすしが主催するデザイン集団「キャップ」にスポットを当てた。

会場には1980年代よりキャップでデザインされた約2,000点もの数々の雑誌デザインを展示。また、この他にもスタジオでの制作風景・豊富なアイディアソース・ライフスタイルの断片を実物と写真で紹介。デザイナーの裏側を垣間見られるのはもちろんのこと、会期中には各雑誌編集部対抗卓球大会も行われたりと、展覧会を楽しめる要素がいっぱい詰まっている。

今回の展覧会によって、藤本が発足したTMDC(東京雑誌デザイン同好会)の活動のスタートをきった。今後の活動は未定だが、巡回企画として4月21日(水)〜5月24日(月)まで、大阪市は「dddギャラリー」での展示が予定されている。

藤本やすしは1973年、平凡社に入社し、「マニア」「太陽」の編集部を経て1981年、同社を退社する。1983年、デザインオフィスの「キャップ」を設立し、1996年、gallery ROCKETを原宿にオープンさせた。現在は表参道に移転し、アート作品を販売するstore ROCKETも併設している。アートディレクターとして過去に「マリークレール」「流行通信」「olive」などを、現在では「GQ JAPAN」「VOGUE NIPPON」「BRUTUS」「STUDIO VOICE」「GINZA」「Casa BRUTUS」を手掛けている。また、ルイ・ヴィトン、ビームス、六本木ヒルズの広告制作のADとしても活躍している。

ギンザ・グラフィック・ギャラリー TEL:(03)3571-5206

(伊藤)

凡淡水展

2004年2月13日(金)〜2月18日(水) Gallery ALCHEMIST(国立市東)


「金魚ヒエラルキー」
「人間均一」
凡淡水
ショーウィンドウに展示された「人間均一」「金魚エクソダス」「疑似餌」は3部構成の新作。お金を使う消費者と儲ける人間の様子を、(金)魚とそれを操るエサや釣り針などに置き換えた作品になっている。「人間均一」は欲を掻き立てる様々な情報に閉じ込められ生活している消費者の世界を袋とじにして表した。中の釣り針はその情報を発信している人間の心理や仕掛け罠である。そして、その人間模様を表したのが「金魚エクソダス」。数字の中で泳ぐ金魚はお金を儲けることしか考えない強欲な人間の心理である。それら2作品をモデルにまとめたのが「疑似餌」。小さい窓を覗くとその向こう側に餌がある。レンズには覗いている自分が映るが、同時に自分を覗かれているようにも感じる。その小さな窓の向こうに映る自分は果たして「人間均一」の金魚なのか、それとも「金魚エクソダス」の金魚なのかを問いかけられているかのようにも感じてしまう。

新作は全部で8点。凡淡水が見つめた人間の毒々しい一面を、魚とエサや釣り針に置き換えて表現した作品が並んだ。陰気臭さも個性的な感覚と色彩で描いて面白く表現することで、ユニークなものになった。会場内にはその他にも、インクの混ざり合いによって予期せぬ色の出現を楽しみながら作られた「混色採集」シリーズなどを展示。作品はすべてリーズナブルな価格で販売している。これも絵を楽しんで欲しいという凡淡水の心配り。凡淡水ワールドが溢れかえった展覧会となった。

Gallery ALCHEMIST TEL:(090)2492-9068

(伊藤)

イシダヒデユキ 写真展−Missing Cuts〜Like light through the dark−

2004年2月10日(火)〜2月16日(月) デザイン・フェスタ・ギャラリー(渋谷区神宮前3)


 
 
 
昨年11月、東京ビッグサイトにてデザイン・フェスタが開催された。ここに出展したのをきっかけに、今回デザイン・フェスタ・ギャラリーにて個展を行うことになった光画作家・イシダヒデユキの写真展。旧作と新作を合わせた15点の作品を展示した。

写真の被写体は、空・太陽・水・草花などの身近なものが多い。作品が醸し出す雰囲気やマットのせいか、それらは静かな印象を与える。作品はすべて撮影から現像まで、自分の手を通し制作している。敢えてアナログ手法にこだわり続けるのは、自身の写真を表現する上でなくてはならない通過点。そのこだわりがスナップ写真では見られない独特の表情を作り出す。

イシダヒデユキは“Missing=行方不明の、見当たらない”という言葉から派生した“Missing Cuts”という言葉をキーワードに撮影をし続けている。ある光景のひとコマを写真で切り取るのではなく、見落としがちな情景や見失ったシーンを写真によって生み出す。視界に入ったものではなく、心に映った被写体を写真という世界で表現しているのだ。そんな作品を撮り続けているイシダヒデユキは「目で見るのではなく、心で感じて欲しい」と心を込めて話してくれた。

デザイン・フェスタ・ギャラリー TEL:(03)3479-1498

(伊藤)

井上玲切り絵展 CUT!CUT!CUT!

2004年1月15日(金)〜2月2日(月) STANDARD deli (新宿区新宿4)


農夫と穀物
おとこ・おんな
昨年末、このコーナーで紹介した井上玲の、今回は切り絵作品による個展。前回の個展ではベニヤ地に各種の素材で描いた抽象的な作品を発表したが、今回は紙を使い、切り絵という全く違う手法によってその世界を表現した。版画や桐箱にカービング・描画をした作品など、普段は木を用いた作品の多い井上玲。木に囲まれた製作中、一息入れたい時に彫刻刃をカッターに持ち替え、切り絵を制作していたのだという。

通常、切り絵というと白地に黒のハイコントラストな作品や、バックに彩色をしても切り絵部分はダークトーンの紙を用いた作品が多いが、井上玲の切り絵はとてもカラフルだ。
ビビットなものから、ペールトーンの優しい組み合わせのものまで、「地」と「切り絵」部分という区別が無く、美しい色合いで構成されている。今回の40数点にも及ぶ作品は、ハガキ大からB5サイズくらいまでの小作品がほとんど。内容には一貫したテーマを設けずに製作したという。コミカルなもの、抽象・具象的なものと幅広く、タイトルもメッセージ的なもの有り、何だか意味深なもの有りと面白い。紙を“切り抜く”だけではなく、張り合わせ、格子状に組み込み、カールさせる。紙ならではの手法を様々使い、見るほどに楽しませてくれる作品だ。

男 障子からみる

今回はカフェとの協力によって実現した個展。広い店内一杯に作品が展示され、店内の一隅には、大判のフェルトを使用し直接壁にコラージュをほどこしたブースもある。明るい色調の花や虫達で壁が覆われ、ほのぼのとした明るさに溢れた楽しい空間が出来あがった。
「美術や芸術というとむずかしく、かしこまったものというイメージがありますが、私は自分の展示をあくまでも楽しむつもりです。楽しんだものはきっと伝えることができると思うからです」と井上は言う。今回もたくさんの人に出来たての楽しさが伝わったに違いない。

STANDARD deli TEL:(03)5367-0185

(吉村)

黒田克正展−線の迷走・遊戯の堆積−

2004年2月6日(金)〜2月28日(土) ギャラリーGAN(渋谷区神宮前5)


左から「黒いリズムA」「黒いリズムB」共に182×227cm
左から「四つの旋律A」「四つの旋律B」
落書きの延長線のように線を自在に書き出した黒田克正の展覧会。会場には大型キャンバスに描かれた作品が集結し、絵を描くことの面白さが詰まった作品が展示された。

「四つの旋律」は2001年より2年間かけて制作された作品。一方「黒いリズム」は2002年より制作された新作。どちらも作風は共通しているが、前者は白地の背景から黒の線を、後者は黒地の背景から白の線を遊ばせるかのように描いている。絵描きのみならず、誰しも絵を描こうとすると真っ白な紙を目の前に色やかたちを作っていく。長年絵を描いている黒田もそのようにしていたが、「描かれた絵を元のキャンバスの状態に戻していく」ことを、絵を描きながら共に行いたいという思いを抱く。新作では、その黒から白にさかのぼっていく様子を表したのだという。

初日オープニングパーティより。右・黒田克正

「実在そのものを捉えなくても、1本線を引けばそれはすでに絵になっている。絵を描く行為を大切にしたい」と黒田は話す。キャンバスに刻まれた線の動きから“Noise Art”と呼んだ人もいた。具体性を持たせずに表現し、目に映った作品を感じてもらう。何が描かれているか、どんなことを表現しているかは見る人に委ねている。

1945年、滋賀県生まれ。1982年、日辰画廊での個展を皮切りに、現在に至るまで数多くの個展・グループ展を行っている。今回の展覧会は2月いっぱい開催している。

 

ギャラリーGAN TEL:(03)5468-6311

(伊藤)

コレクション展

2004年2月4日(水)〜2月29日(日) ギャラリーGAN.f(渋谷区神宮前4)


堀内朗「サファイアの色の空」
堀内朗「青の国」油彩
ギャラリーによる企画展。今回は堀内朗の青を基調とした作品、宗形譲の植物をモチーフにした作品が相反することなく、調和された雰囲気で会場に並んだ。
宗形譲「プリムラとレモン」油彩
宗形譲「卓上のバラ」油彩

堀内朗は1956年福岡県に生まれ、幼少時より、山本秀一氏に絵画の手ほどきを受けた。20歳の頃から、インド、ネパール、スリランカと題材を探しながら放浪の旅を続け、1993年に帰国後、本格的に作家活動を開始する。一貫して「青」を基調とした堀内の作品から漂う静寂と温かさは、夜の時間の流れに漂っているようなくつろぎを与えてくれるようだ。いずれも青の色調であるにも関わらず、絶妙な濃淡の違いから見る側の想像を掻き立ててくれる。どこかエキゾチックな描写は、アジア放浪中、堀内が出会ってきた風景なのかもしれない。

宗形譲は1943年東京都に生まれ、1960年代後半から個展、グループ展に積極的に参加。具象的な花と幾何学的な背景がひとつの作品の中に同居していることが、乾いた印象を受ける独特の風合いと相まって、見るものを飽きさせない。

ギャラリーGAN.fは「現代美術をもっと身近に」をテーマに、誰もが気軽に触れることができる環境を目指し、若者の情報発信地、原宿神宮前に2002年オープン。原宿の立地に沿った作品展を展開し、企画展を中心に行なっている。最近では貸し画廊としても利用できるようになり、随時利用者を募集している。

ギャラリーGAN.f TEL:(03)3408-4811

(伊藤)

川城夏未展

2004年2月9日(月)〜2月15日(日) Oギャラリー(中央区銀座8)


Balance2004-未明-
Balance2004
Balance2004-昨日と明日のための夢-
川城夏未は現在に至るまで“赤”の作品を描き続けている。赤い色は情熱的・エネルギッシュなどプラスなイメージがある一方、危険・警告・攻撃的などの刺々しく奇抜なイメージがある。川城はそのようなイメージを一変するかのように“赤”に静寂さを求めている。邪魔にならない、落ちついた印象を与える“赤”を表現する。

作品はすべて油絵の具に蜜蝋が使用されている。色鉛筆や絵の具にはない、クレヨン独特の描き心地や質感に興味を持ち始めた川城は、自身でクレヨンを作ってみようと試みた。試行錯誤を繰り返す後にクレヨンの質感に近づいたのが絵の具と蜜蝋の組み合わせ。クレヨンという身近な文房具から「蜜蝋」という新たな発見をもたらし、今現在川城の表現方法に定着している。

展示された作品の色調は赤に統一されているものの、微妙に色合いが異なっており、また、蜜蝋によって見る角度やライトの当たり具合などで様々な表情を見せる。とんがったものが好きじゃないという川城は自身の作品をから「いろんなことを感じ取って欲しい」と言葉を述べた。

Oギャラリー TEL:(03)3574-0450

(伊藤)

「cut art Gallery#1」さとうみよ−切り絵−個展

2004年2月10日(火)〜2月15日(日) Gallery たまごの工房(杉並区高円寺南)


ポストカード展で
1位を獲得した作品「華魚」

魚が舞う行燈
昨年、Galleryたまごの工房主催の公募展「ポストカード展」が開催された。作家がポストカードを出品し、寄り集まった中から一般投票を行う。優勝者には1週間このギャラリーで個展ができる。見事一般投票で第1位に輝いたさとうみよが、今回晴れてこのギャラリーで個展を開催した。

ポストカード展で優勝した「華魚」のポストカードをはじめ、人魚や金魚、カエルなどの動物をモチーフにした切り絵作品と共に、ピアスやリングなどのアクセサリーを展示した。その中で一番大きい作品「姫」は、鱗模様やその流れ、そして明暗や微妙な色相を表現するために、その部分だけで千代紙を約50枚も使用したという力作。どれも黒い輪郭の中に散りばめられた多彩な色模様は昔ながらの切り絵らしいが、作品の雰囲気は現代らしくもあり、また、西洋っぽさをもある。

「姫」の拡大
「姫」の鱗模様の拡大部

紙はさとうのこだわりによって厳選された和紙などが巧みに使用されている。紙ならどんなものでも使用するが、特に和紙に執着するのはその特徴から。色紙などには見られない質感を手すきの和紙は持っている。種類・色・厚みも豊富で、異なった色同士を重ね合わせることで生まれる新たな色、独特の透け感やグラデーションなどは絵の具で色を作るのとは違う面白さがあるという。

切り絵ではアクセサリーで表現できない美しさを、一方アクセサリーでは切り絵で表現できない“動”やうねりを補い合える。「cut_art−切り絵−」と「hi_accessory−装身具−」と自ら称した二つのクラフト作品を制作し、「作る」という欲求を発散させながら、今日も制作に励んでいる。

Gallery たまごの工房 TEL:(03)3313-8829

(伊藤)

中村明功・あや子個展 −1分間の悦楽 万華鏡の世界−

2004年2月9日(月)〜2月15日(日) ギャラリーくぼた6F(中央区京橋)


「天の光は全て星」 「天の光は全て星」映像
日本ではまだ数少ない万華鏡作家として活動する中村明功(あきのり)・あや子による初の個展。今回はステンドグラスの技術で制作された華々しく、また可愛らしい容姿をしたユニークな作品約30点を展示。このボディの装飾やオブジェクトの製作を担当しているのは漫画家でもある妻・あや子。一方、夫・明功は設計と製作を担当し、夫婦二人三脚で作りあげている。

覗き口の先端に付いた2枚の円盤を、手で回しながら映像の変化が楽しめるのはホイールタイプの万華鏡。箱型の万華鏡はオルゴール付きのものがあり、かわいらしい音色に合わせてゆっくりと映像が変化する。万華鏡の先端部に入れる具材は主に色ガラス。オイルが入っているタイプは、その特徴から模様はなめらかに動き、不思議な映像の移り変わりを見せる。そしてまた、表面反射鏡という特殊なガラスの効果により、一層煌びやかな眺めを作り出してくれる。

「覗き込みさえすればそこに無限の美世界が広がり、別世界を堪能できる。ただの1分間でもいい、仕事を忘れゆったりと落ち着いた世界を与えてくれる、それが万華鏡なのです」と、魅了された万華鏡の世界を語る明功は、「この子は――、この子は――」とひとつひとつ丁寧に説明してくれた言葉から、まるで我が子を可愛がるかのような愛着心が伝わってきた。

二人は94年、海外出張先のスイスにて万華鏡と出会う。97年、万華鏡作家・山見浩司に師事し、本格的な万華鏡制作を開始。また、インターネットで日本初の万華鏡サイト「1分間の悦楽 万華鏡の世界」を開設。98年12月に渋谷パルコ・ロゴスギャラリーに作品を出品したのを皮切りに、以後様々な展示会などで作品の展示・販売活動をし、現時に至る。二人は休日を利用して万華鏡制作を楽しんでいる。今後も万華鏡の美しい世界を繰り広げてくれるだろう。

「祈りの海」 「祈りの海」映像 「祈りの海」映像

ギャラリーくぼた6F(中央区京橋)
TEL:(03)3563-0005

(伊藤)

高橋千津展

2004年1月26日(月)〜2月1日(日) OギャラリーUP.S(中央区銀座8)


「ざわざわ。」
「ここいらの匂い」
「あしもとでもがいている。」
高橋千津は「線を使って何かをやりたい」という思いから、ドライポイント(※)という技法で線を描くことを選んだ。線の滲み方や太さなどの出方が手描きとはまた違う風合いを持つ。そこに魅かれた高橋は筆の代わりに版を使い表現するようになった。

会場には大小様々な作品がランダムに飾られている。黒一色の線を引き立てるかのように添えられたたくさんの色は、高橋自身が四季を通じて感じ取ったものもあれば、その時々に感じた自身の感情を色で表したものもある。「日常の私的な感情や時間、温度を瞬間的に自由に。同時に、版というプロセスさを経ることで、冷静さ、静寂さを求めた」という高橋の思いが詰まった空間となった。

1973年、東京都生まれ。5月には東京は代々木上原にある「ギャラリーYORI」にて個展を開催する。

※ ドライポイント・・・銅板、亜鉛板や塩ビ板などに、鋭くとがった鉄筆などでキズをつけてミゾを彫り、そこにインクをしみこませ、プレス機で紙に転写する方法。金属片に溜まったインクが、鮮明な線だけではなく濃く柔らかな滲みを生じさせたり、線の強弱をつけることができるため、明暗表現などに独特の効果を生み出す。

OギャラリーUP.S TEL:(03)3574-0450

(伊藤)

俊尭展

2004年1月9日(金)〜1月31日(金) ギャラリーGAN(渋谷区神宮前5)

「九州の土」
佐賀県で採取した赤土
「白浜の土」

「今日に受け継がれた日本文化は祖先が創造したもの。創造するための人を育てたのは土である。人は食せずには生きていけないがゆえ、食べ物を生産するためには土が全てなのだ。だから日本の美(心)の根源は土の中にある」と言う俊尭(としたか)は、“日本の美(心)をテーマに表現する絵描き”である。そしてまた俊尭は「激しい労働によって研ぎ澄まされた精神が日本の文化を支え、その一方で、平安貴族の“雅”のような生き方が芸術性を高めたのが日本文化だ」と語る。

テーマの中心である土をはじめ、画材は俊尭が選んだ天然素材のみを使用。土は作品の表現と波長の合うものを自ら探し求め採取する。表現の幅を広げるために火や水などを用いて試行錯誤を繰り返すが、それを俊尭は「色彩を科学し、画材を調理する」と銘打った。

今回展示したものは土の世界のスタート地点である地面と野草の境。それらは薄型のキャンバスに地面が創作され、俊尭が見た地面の中の世界(宇宙)を表現している。今後は徐々に視点を掘り下げ、土の中そのものの世界を表現し発表していく予定である。

ギャラリーGAN(渋谷区神宮前)  TEL:(03)5468-6311

(伊藤)

三沢栄一彫金展

2004年1月20日(火)〜1月25日(日) 銀座煉瓦画廊(中央区銀座7)

「プレリュード」(リング)

「ロンド」(ブローチ)
「山葡萄」(ブローチ)

「モノの見方は固定概念を外せばもっと面白く見える」と語るのは彫金作家・三沢栄一。会場に並べられたブローチやペンダント、リングなど67点の装飾品は、そんな三沢の「美」を表現している。

「彫金」とは鏨(たがね)により金属に加飾する技法。その歴史は古く、エジプト古代史で最も有名なツタンカーメン王の黄金のマスクをはじめ、日本では奈良時代以前より仏具・武具・刀装などで親しまれてきた。三沢はその技法を用い、優雅な曲線や細かい表情を表現している。

作品は一品一品三沢の手にかかり、丁寧に制作されている。七宝をあしらった物などは一つ一つ釉薬を乗せて焼くため、同じデザインの作品でも色は全て異なり、様々な表情を見せる。それを購入した者は、世界にひとつしかない三沢のオリジナル作品を末永く堪能することができるだろう。

1971年国立音楽大学作曲科卒業。1974年に彫金を学び始め、親方の元で5年間の修行後、独立。ジュエリーデザイン、伝統的彫金技術及びアール・ヌーボーの美術工芸の研究を基に独自の技法と表現で個展を中心に作品を発表している。今は八ヶ岳南麓にある山梨県大泉村の工房にて、バロック音楽を聴きながら日々作品制作に没頭している。

銀座煉瓦画廊(中央区銀座7)  TEL:(03)3571-8626

(伊藤)

第13回 木端展

2004年1月14日(水)〜1月19日(月) 積雲画廊(渋谷区神宮前1)

会場風景

一見なんの違和感もない作品に見えるが、フタを開ければその材料は日用雑貨や流木など。「木端展」の名の通り、日常で要らなくなった廃材を材料にし、そこから想像できる作品を創造した。廃材も見事なまでに生まれ変わった姿で登場しているが、廃材そのもののカタチを生かして制作されたものが多い。

滑車を利用した船
ユニークなけん玉

木製の手動滑車の一部を船底に見立てた船や、木の特徴を生かしてタコに見立てた作品を中心に置いたのは池田げんゑい。鳥や魚、ロボットなど、従来の形を覆しユニークなけん玉を多く展示したのは長谷川京平。冷酒のボトルを上下に分け、トックリとオチョコに変えたのは七戸洋之助。原形が生かされていて、オチョコの底のフタは取り外しもできる。その他、本多八郎、夢田誠の計5名の楽しい作品が集まった。

本業は、本多はデザイナー、その他4名はイラストレーターだというから驚き。会場にある作品たちは、普段何気ない時間を利用して趣味で制作したもの。だから余計、遊び心溢れる愉快な作品になった。

毎年この時期に木端展を行い、今年で13回目。このスタイルでの展示は今回が最後。来年からは、夢田を皮切りに、池田、本多と毎年一人ずつ個展を行ないながら、そのスペースの脇にこのような作品たちがお目見えする。

積雲画廊 TEL:(03)3478-0993

(伊藤)

7人展

2003年12月22日(月)〜12月28日(日) GALLEY KUBOTA 3階(中央区京橋)

会場風景

出展者同士、作品同士賑わいをみせた会場。場内を作品と共にエネルギッシュな空間に創りあげたのは武蔵野美術大学油絵学科2年生の7人。参加したのは川崎博由、藤浦隆宏、白石顕子、杉原誠、上田暁子、田中秀、若見優貴。

 
田中秀「Pink」「Wish」

テーマは「肖像画」。時間をかけて、各々に思いをめぐらせ、感じるままに筆を走らせてこの展覧会に臨んだ。展示された作品は、好きな街中の断片をキャンバスの中で組み合わせて表現したもの、人物をピンク色の世界に染めたもの、イメージから湧き出た人物を表したもの、思うがままに筆を走らせそこから浮き出た形を自分と照らし合わせ表現したもの、生きてきた軌跡を辿る老人の皺を繊細に表現したものなど。大小の作品を含め約30点余りの油彩・水彩・鉛筆など様々な素材で描かれた個性的な作品を展示した。

学校では共に学び合っている仲間同士だが、「ひとつの空間に寄り集まって作品を発表することで、それぞれの個性を確認し合えた」と、今後の活躍が期待される彼ら自身にとっても刺激的な展覧会となった。

GALLEY KUBOTA 3階 TEL:(03)3563-0005

(伊藤)

井上 玲 展「Gift−天資−」

2003年12月22日(月)〜12月27日(土) ギャラリー山口(中央区京橋)

会場風景

井上玲は、木特有の風合いに着目し、平面から立体まで木目を生かした作品制作を中心に行なっている。「木と向き合って作品制作をしていると、木や偶然に助けられることが多く、それはとても楽しい」と嬉しそうに話す。

近作「私は象であり、鳥であり、朝露であった」は、前側は板、後ろ側は鏡と2枚重ねの構造で、後ろの鏡が板の裏側の姿、自分の顔などを映し、ところどころ型抜かれた板の隙間から覗いている。ひとつの作品でありながら角度によって、変わるがわる多彩な表情を見せるユニークな作品。「自分が楽しんで制作をしたものは、きっとその楽しさを伝えられる」という作家の思いが伝わってくる。

「私は象であり、鳥であり、朝露であった」 「三人娘と花」

また、赤や青、黄色などの鮮やかで個性的な配色と色遣いが目を惹く。これは桃山時代など古来より使用されていた日本独特の美しい染色の色をヒントにした。モダンな作風の中にも伝統的な日本人の色のセンスに着目した新鮮な眼差しがうかがえる。

ギャラリーで個展を開催するのは今回が初めて。創作し始めてから今までの6年間の集大成を発表する場ともなった。そして今度は2004年1月15日(木)〜2月2日(月)まで、新宿にあるカフェ「Standard Deli(問い合わせ先:03-5367-0185)」にて、これもまた初挑戦となる切り絵作品の展示が控えている。

ギャラリー山口 TEL:(03)3564-6167

(伊藤)

「Unnatural−アンナチュラル−」展

2003年12月15日(月)〜12月21日(日) Oギャラリー(中央区銀座8)

会場風景

若手作家、安藤智と高塚由美による2人展。 大阪を拠点に活動している2人だが、今回は東京での発表に挑む。

安藤のテーマは「違和感」。 バランスが整っているものも、それを崩すと違和感が生じる。 会場に並ぶ7点の油絵は、すべて様々な照明器具から放たれた光を形に表した。 照明器具は決まった形をしているが、光は決まった形がない。 そこに「違和感」があるのだと言う。 形の美しさからシャンデリアを描いたのがきっかけで、 そこから放たれる光を意識し、照明器具を中心に描くようになった。

安藤智「あいまいなかたち」 高塚由美「まぶされる」

一方、「マイナスな部分」に興味を持つ高塚は、 エビや鳥の調理される過程をモチーフとして選ぶようになった。 「グロテスクでマイナスな部分も、かっこよさや愛嬌を感じる」と言うその言葉は、 高塚の作品がよく表している。 これまで絵を中心に描いていたが、今回は新たな表現方法を追求するため、 初の試みで写真も発表。油絵2点と共に、 モチーフ用に撮影した写真2点と、作品として撮影した写真3点を展示した。

それぞれの表現方法やモチーフは、共に大学在籍中に見つけたもの。 「目標は表現し続ける事。続ける事で自分の目標に繋がっていく」(安藤)、 「どこまでを完成とするか、それを明確にしていきたい」(高塚)と話す2人は、 現在、京都嵯峨芸術大学短期大学部の研究生として学んでいる。

Oギャラリー TEL:(03)3574-0450

(伊藤)

二村潤 個展 home sweet home

2003年12月9日(火)〜12月20日(土) ギャラリーf分の1(千代田区神田)

会場風景

東京藝術大学大学院在学中より、積極的に個展、グループ展を行ってきた二村潤。公募展にも多数出品し、海外の展覧会に参加したこともある。キャンバスに油彩の作品が多いが、テレピン油に蜜蝋や蛇の目土を混ぜ、油彩とは思えないマットな質感を持つ作品に仕上げている。以前は具象的な表現もあったが、現在は抽象的な表現の作品を中心に創作しているという。

自分の作品は「もの」と「絵」の狭間にあると二村は言うが、画面の中の線や色面によって面にもなり、奥行きのある空間にもなる。その度合いによって「もの」になり「絵」にもなるそうだ。見る人によってもその判断は様々なのだろう。

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一見、穏やかな作風だが、作品を制作している時には一度極限まで落ち込み、何度も色を塗り重ね、足し引きを繰り返すのだという。画面の一部を削り込んだ作品もあり、そこから塗り重ねた数々の色が伺える。そんな数々の葛藤を感じさせず、二村の作品はあくまでも優しく柔らかい。今回は「home sweet home」という個展タイトルにふさわしい15点の作品が並んだ。

ギャラリーf分の1 TEL:(03)3293-8756

(吉村)